195 魔法の杖
第二王子との会談の翌日、あれ?伯爵との会談だったっけ?
まあ翌日だ。
俺たちは町に繰り出すことにした。
既に昨日、俺とミリア以外の面々は町に繰り出して散策しており、今日は昨日行っていない地区に行くことにした。
大きな町だから同系統のお店も何ヵ所もあるから全部を回ることなんて最初から無理なのだが。
昨日は食事処や生活用品店が多い地区に行ったらしく、今日向かうのは兵士や冒険者向けのお店が多い地区だ。
その中で一つの魔法道具屋が目について寄ってみた。
ストリートに面したショーウィンドウに火を象った装飾の付いた杖が飾られているのが見えた。
フレイムロッドと言うらしい。
「お、兄ちゃん!冒険者かい?こいつに目をつけるとはお目が高いね!こいつが最近話題のフレイムロッドだ!この杖は、なんと!魔力を込めればファイヤボールを撃てるすぐれものだ!面倒な呪文を唱えなくてもすぐに使えるのが魅力だ!冒険者なら一つは持っておきたいアイテムだろ!?どうだい!欲しいだろ!?」
押しの強い店員だった。
「撃てんのはファイヤボールだけなん?他にはないん?」
「お!チビっ子も興味あるのかい?これはちょっとばかし高いぞ?」
「うちは子供ちゃうわ!小人族や!」
「おーっと、それは失敬。この辺りにはあまり居ないから分からなかったよ。」
「ふん!まあ、分かればええんよ。で、どうなん?他にもあるん?」
「他にか?他にはウインドロッドってのもあるぞ。こっちはウインドボールが使えるが、フレイムロッドよりも多く魔力を消費しちまうから余り人気は無いんだよな。」
「ふーん。」
「ふーんって、ドーラちゃんいるの?」
「ん?いや。いらんけど。」
「あん?なんだ冷やかしかよ。冷やかしなら帰った帰った。」
「なんや態度悪いで!」
「こっちも暇じゃ無いんでね。」
「ふん!うちの作っぶぅふ、んーーんー!!」
「はい、そこまでー。ドーラ騒ぎ過ぎだよ。」
「んーー!!」
「イチ、連れてってー。」
「はい!」
ドーラはいい顔をしたイチに引きずられていった。
南ー無ー。
「兄ちゃん、あれはいいのかい?」
「ああ。いいんです。いつものことです。それより、コレください。」
「お!買うのかい?あの子はいらないって言ってたが。」
「備えあれば憂いなしって言いますから。備えられる内に色々と準備しておくのは生き残るための鉄則ですよね。」
「兄ちゃん、若ぇのに達観してるな。」
「はは。あ、あとこれとこれも。」
「え・・・?」
「これも欲しいな。」
「い、いや兄ちゃんそんなに買うとすごい金額になるが、いいのかい?フレイムロッドだって金貨1枚じゃあ買えないぜ?」
「大丈夫です。」
「お、おう。あ、そうだ。こんなに買うならコレなんかもどうだい?シールド魔法が使えるバックラーだ。」
「・・・。」
「最近入ってきた代物なんだが、中々な売れ行きでな。次にいつ入るか分からないし、在庫ももうこでで最後だから買うなら今だぞ。」
「あー、いやそれはいいです。持ってますから。」
「おお、そうだったのか。ならこれは要らなかったな。じゃあ用意してくるから、少し待っててくれな。」
「は、はーい。」
と言うことで買いまくった。
研究用だけどね。
というのも魔法を発動できる魔法道具というのは中々お目にかかれないのだ。
カルポにいた時に作ったシールドの魔法道具はそこそこの威力を発揮できるようになったのだが、同じようにエアショットの魔法を発動できるものを作ろうとしたが思った威力が出せなかった。
元々、詠唱魔法のコードと魔法道具のコードは同じコードでは同じ威力が発揮できないことは分かっていた。
だからそれぞれに合わせた改造と調整をしてやる必要があるのだが、特に攻撃魔法を発動させる魔法道具というのが参考となる資料が全然なかったから難航していたのだ。
ファイアボールは下級の魔術だが、魔法道具になっているなら参考になるはずだ。
他にもウインドボールが使えるウインドロッド、ソールウォールが使えるソールロッド、ウォーターボールが使えるウォータロッドもあったから買った。
シールドの魔法道具がこんなところにまで広がっているというのは驚いた。
これはもっと増産体制を整えないと回らなくなるかもな。
ドーラに引っ張られて工房をのぞき込んだり、イチに連れられて見たこともない果物を食べたり、ミリアに引かれて話題のお菓子を食べたり、サーシャが明らかに危険な薬を買いそうになるのを止めたりした。
ゼンまでサーシャに引きずられて大人しかったくらいだ。
その後も色々と見て回り、食料や道具、本などを買い漁り、買い出しをしているみたいになったが、中々充実した一日だった。
というか歩き疲れたから、今日は早く眠れそうだ。
「んー。」
夜、何となく目が覚めてしまった。
今日は歩き疲れたから朝までぐっすりだと思っていたんだけどな。
「ん?」
ああ、これ夢だな。
偶に見るかなり鮮明な夢だ。
寝ていた豪華なベッドも豪華な部屋もそのままだが、一緒の部屋に寝ていたはずのゼンがいないしベッドメイキングされた直後かのようにきれいだ。
こんな鮮明な夢を見るのは珍しいが、無いこともない。
こんな時はゆっくり考え事をするのに最適だ。
夢の中なら何でも思ったものが出てくるしな。
そう思ったそばから紙とペンを出して魔法の開発を始める。
まだまだエルドウェルで手に入れた上級魔術の改造はやることがある。
他属性への変換もやりたいところだ。
火龍召喚とかかっこいいよね。
「うふふふ。そんなことより愉しいことしましょうよ。」




