190 撤収!
「ソーマ様。これでこの迷宮は"死んだ"のでしょうか?」
「どうだろうね。」
それが問題だ。
「え?迷宮珠取ったんやから止まるんちゃうの?」
「これを鑑定してみると"迷宮が出来るとその中心に生成されるエネルギー体"ってなってるんだよ。」
「エネルギー体?」
「そう。」
「この迷宮珠があるから迷宮が出来るのではなく、迷宮が出来たからこの迷宮珠が作られた、ってことになる。」
「あ!迷宮が先なんか!え?じゃあこの迷宮は止まらんってこと?無駄骨?」
「む、無駄ニャニャ!!??お金!!??」
「無駄骨ではないと思うよ。少なくとも迷宮の活動は抑えられるだろうね。普段魔物を作ったり罠を作ったりしているエネルギー減を取り除いたことになるから、魔物の数が減るとかメリットはあるはずだよ。ただ、これで迷宮が死ぬかどうかは要観察だろうね。」
「はー。要観察かいな。じゃあ時々来てみんとあかんね。」
「そうだね。乗り掛かった舟、っていうしね。月一くらいで様子見にくる程度で良いだろうけどね。」
「そうですね。」
「そそそそそんニャことより!迷宮珠はお金になるニャか!!?」
「テッサはそればっかりだな。」
「当たり前ニャ!こちとらこれでおまんま食ってるニャ!死活問題ニャ!」
圧がすごい。
「お金にはなると思うよ。ただ、売り先の人がすぐに信じてくれるかどうかは保証できないし、いくらの値が付くかも予想できない。」
それも当然だ。
おそらく迷宮珠を持ち込むのは俺たちが初めてになる。
そんなものを持ち込まれてその真偽をすぐに確認できるはずもないし、鑑定で分かることにも限界がある。
鑑定で分かるのはこれが迷宮珠というもので迷宮で作られるエネルギー体であることくらいだ。
おそらく初めは高位の魔石として引き取られるのがオチだろう。
まあ高位の魔石は数が少ないからかなりの金額にはなるだろうけど、世紀の大発見としてはあまり評価されない気がする。
そんな考察を言ったら、テッサが泣き出した。
「あ、あんなに苦労したのに評価もされない、儲けも安いニャんてあんまりニャー!」
テッサは苦労していない気がする。
壁を破ったのはイチだし、見つけたのは俺だ。
まあでもこれは希少価値が高いものだから、そうそう入手できるものじゃない。
つまりレア。
なのでこれは貰っておきたい。
何かに使えそうな気がするし。
「ニャー。でもお宝は山分けの約束ニャよ。」
「それなんだけどさ、宝箱の中身の内、『玉肌水』以外は全部テッサたちの取り分にしてもいいよ。」
「ニャ!?いいのニャ?」
「ああ。その代わり迷宮珠と『玉肌水』とゴーレムの残骸は貰うから。あ、ゴーレムの魔石だけなら上げてもいいよ。」
「ニャンと!そんなにくれるニャ!?でも、それだとそっちの取り分が少なくないかニャ?迷宮珠は別としてそれ以外はあんまりお金になりそうにないニャ。素材として売れるのは入ってすぐのところにいたアイアンゴーレムくらいニャ。ジャンク?とかは売れるとは思えないニャ。」
「ああ。いいんだよ。ほとんど研究用だから。冒険者をやってるけど、拠点に工房があってね。こういうのが好きなのがいるんだ。」
「兄ちゃんもやけどねー。」
「ドーラちゃん!」
「はいはいー。」
「はは。まあそういう訳だから大丈夫だよ。」
「まあ、攻略のほとんどがお兄さんたちのおかげだったし、文句はないニャ。ボルグもいいニャ?」
「・・・ああ。」
「いくらになるかニャ?ニシシ!」
かなりの量の宝石類が入っていたから金貨数十枚はいくだろう。
大金だな。
悪い顔になっても仕方がないだろう。
テッサたちも宿場町ロンロに泊まるらしいので、一緒に戻った。
俺たちは依頼者に報告を行い、宿に行く。
迷宮の件も粗方の魔物の討伐は行ったこと、迷宮の最奥にて迷宮の魔石のようなものを発見したこと、迷宮は死んだ可能性があることを伝えた。
遺跡が迷宮化したことに驚き、迷宮が死んだかもしれないことに更に驚いていたが、追及される前に疲れているからとさっさと撤収した。
テッサたちはこれから東の王都に向かって、手に入れた宝石類を売りさばくそうだ。
テンション高めで足早に出発していった。
俺たちは更に南下して次はサルウェルという町を目指す。
この辺りでもひと際大きな町で、王国西部を代表する大都市らしい。
まあただの通り道だけどね。
俺たちは大まかな方針を決めてめんどうに巻き込まれる前に迷宮攻略の次の日にはロンロを出発した。
後に、騎士団がごちゃごちゃしたとかしないとか。
しーらない。




