189 迷宮珠
「兄ちゃんこの子どうするん?連れてくん?」
「連れてくしかないだろ。ここに置いていく訳にもいかないだろうし。」
「そうですね。じゃあ何て呼びましょうか?」
「そやね!名前を決めんとな!」
「Cliffシリーズと言うのであればクリフで良いのでは?」
「いやそれはちょっとかわいそう。うーん。」
どうするか。
「髪きれいですねー。」
「顔だけ見たらどっちか分からんし。男って言っても通るんちゃう?」
「中性的というのでしょうか?」
「ちょっと神々しい気がしますねー。」
「そうかなー?」
うちの女の子たちがアンドロイドを囲んで姦しく話している。
神々しい・・・。
天使?
「それじゃ君の名前は"セラ"だ。」
「はい、マスターソーマ。個体名セラを名乗ります。」
「兄ちゃんにしてはまあまあちゃう?」
「ありがと。」
セラは天使セラフィムから取った。
なんとなく天使というフレーズが気になったから付けたのだが、中々悪くないネーミングではないだろうか。
安易すぎ?
知らぬ!
セラを仲間に加えた後、手分けして保管庫の中を探索してみたが、最初に目についたカプセルと操作盤以外には特に目ぼしいものは見つからなかった。
ここが迷宮だというのなら迷宮核とかが何処かにあると思っていたのだが、無いらしい。
迷宮と言えば核とかコアとかがあるイメージだったのだがこの世界の迷宮は違うらしい。
検索でも出て来なかったから確実だ。
・・・確実か?
核、コアじゃない?
「ソーマさん、ぼーっとしてどうかしましたの?」
「ああ。迷宮って核みたいなものがあって、それが無くなったら停止するものだと思ってたんだけど違うのかな?って考えてたんだ。」
「え?」
俺が考えていたことを伝えたら世界が止まった。
俺、変なこと言ったかな?
「お兄さんそれ本当なのニャ?」
「ん?」
「流石ソーマさんですわ!世界中の研究者たちが解明できていない迷宮を停止する方法をご存知ですのね!」
あれ?
そう言えばこの世界の迷宮の消し方なんて聞いたことないな。
てっきり思い込んでいたけど、日本の小説の読み過ぎか。
「いやごめん。そういう小説を読んだことがあるだけで、迷宮が同じかは分からないんだ。」
「なーんだニャ。そうなのかニャ。世紀の大発見かと思ったニャ。」
「兄ちゃん紛らわしいこと言わんといてやー。」
「ですが、ソーマさんの推測も間違いと決まった訳ではありませんわ。だって、まだ誰も解明できていないのですもの。」
「確かにそうです!やっぱりソーマ様はすごいです!」
「いやいっちゃん、何がすごいんよ、それ。」
ドーラが呆れた声をイチにかけるがものは試しに色々探してみることにした。
壁の中とかかな?
「何があるんでしょうね?」
「核、コアでは無いことは確かだね。」
「ほなら、箱とか、球とかは?」
「・・・無いね。」
「じゃあ、石、金、他にはオーブとか、キューブとか・・・。」
色々と試して検索してみたがどれもハズレだった。
やっぱり無いらしい。
迷宮に来たら探してみよう思っていたのだが、無いなら仕方が無いね。
「あ、さっきのポーションに書かれていた玉はどうですか?」
「・・・。あ・・・!!」
ヒットした。
正解は迷宮珠だった。
位置はジャンクパワーゴーレムがいた部屋の奥の方だ。
入り口とは対角に位置する場所の壁の向こうに反応がある。
「本当にこの先ニャ?」
「む。ソーマ様を疑うんですか?」
「いっちゃん怖いで。落ち着いてや。」
「むぅ。」
これには苦笑するしかない。
出入り口が無いんじゃ、テッサの疑問も最もだけどね。
みんなで手分けして探したけど、扉も仕掛けも見つけられなかった。
反応は確かにあるのに・・・。
「では突き破りましょう!」
そう言ってイチがハンマーを取り出して構えた。
「ニャニャ!?そんな無茶ニャ!迷宮の壁を突き破るなんて無茶ニャ!」
テッサは驚いているが、ものは試しだ。
やってみよう。
「がんばれー!」
「イチ!やれー!」
「行くですー!」
「やったれー!」
「がんばって下さいね!」
「まじかニャ・・・。」
「・・・。」
「にゃー。」
みんなの声援を受けてイチがハンマーを構える。
ガンッ
思いっきり振り抜いたイチのハンマーは迷宮の壁にメリ込み、壁を少しへこませた。
「おおー!すごいニャ!これなら壊れるかもしれないニャ!」
テッサは驚いているが、イチはまだ全開では攻撃していない。
ただ振り抜いただけだ。
今度は壁から少し離れて構え、溜める。
溜める。
溜める。
闘気を十分に練り上げ、研ぎ澄ませていく。
「何してるニャ?」
常人には分からないだろうが、凄まじいほどの闘気を溜めている。
これをくらえば俺でも耐えられない。
ミリアに持たせている特性の盾を俺が使っても防ぎきれずに粉砕されてしまうだろう。
闘気に関しては一番習熟しているのはイチだ。
覚醒も早かったしな。
というか溜め過ぎでは?
過剰なくらいに溜めに溜めた闘気を開放。
イチ専用の特製ハンマーに大半の闘気を込めて壁に叩き付ける。
ドゴゴーーン!!!!!!!
凄まじい轟音が鳴り響く。
迷宮の壁は金属製だったが、その奥には岩があったらしく砂煙が上がっていて視界が悪くなってしまう。
ガラガラと崩れる音がする。
砂煙が落ち着いたら、大きな穴が開いていた。
そして誇らしそうにこちらを見ているいい笑顔のイチがいた。
横を見ると唖然としたテッサとボルグの顔があった。
無言無表情のボルグでも驚愕の威力のようだ。
まあ可愛らしいイチが迷宮の壁に穴を開けていたら驚くのも無理はないことだけど。
イチが開けた穴の先は小さな洞窟となっていた。
ボス部屋とは違って、ただの石の洞窟だ。
その中央に小さな丸い玉がぽつんとあった。
あれが迷宮珠だ。
名前:迷宮珠Lv1
種類:迷宮珠
等級:希少
品質:高
属性:なし
説明:多量の魔素と瘴気が凝縮された迷宮の根幹となるLv1の珠。
迷宮が出来るとその中心に生成されるエネルギー体。
迷宮珠単体では迷宮が行っている空間形成、物体生成、生物生成は行えない。
「これが迷宮の心臓なん?」
「へー。きれー。」
「真っ赤ですます!」
驚きと感動の入り混じった表情でみんな口々に感想を言っている。
中でもテッサのテンションが高い。
「すごいお宝だニャーー!!!世紀の大発見ーー!!これで一気に大金持ちニャーー!!!ニャーーー!!!」
「・・・ああ。」
テッサ達は金持ちになりたかったらしい。
まあ迷宮に心臓があって、迷宮を討伐できるとなれば、迷宮の管理に苦しんでいる所なんかでは喜ばれる発見だろう。
町から離れたところにある迷宮の管理は大変だって聞いたことがある気がするし。
そうなるとこの発見にはかなりの額のマネーが動くことだろう。
信じてくれれば、だが。
とりあえず、迷宮珠を回収してみる。
その他にもボス部屋にあったものと保管庫にあったカプセルとか操作盤も根こそぎストレージリングに回収してやった。
「ニシシッシシッシ。」
「・・・フフッ。」
その間もほくそ笑んでいる二人が少し怖かった。




