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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
光の国へ編
181/200

179 上級魔術

船内に気を取られている間にブルアリゲーターは水中に身を隠してしまった。


「にゃー。」


シロには気配で位置が分かっているようでゆっくりとだが確実に近づいて来ているようだ。

船足よりも速く。


「どうしましょうか?」

「うーん。戦うにしても水中だしね。」

「僕泳ぐ?」

「ゼンもイチもワニより速くは泳げないでしょ。流石に。」

「そうかなぁ?」

「でも兄ちゃん、うちら以外に何とか出来る人らってこの船におるん?」


ドーラの指摘ももっともでこの船の護衛兵は普通の兵士だ。

鑑定をするまでもなく下級兵だろうことは気配である程度分かる。

高くてもレベル15くらいで、ゴブリン程度であれば問題なく退けられる力量だが、ブルアリゲーターから感じる力はハイオークを超えている。

少なくともレベル30はありそうだ。




名前:ブルアリゲーター

レベル:32

種族:アリゲーター

属性:水

スキル:隠形

説明:ブルアリゲーターの成体。

魔の森の奥地の水辺に生息する肉食獣。

水中のハンターとも呼ばれ、音も無く獲物に近づき捕食する。

肉は淡白で旨い。



やはりあった。

【検索】スキルで追っていったら鑑定結果にまで辿り着いた。

最近ではかなり詳細な情報まで追うことが出来るようになった。

便利だが気を取られ過ぎないように注意しないと、虚空を見上げる変な人になる。


ブルアリゲーターはレベル32だった。

この辺りの草原で見られる魔物は5~18くらいだったから、異常だ。

この川の上流の魔の森から流れてきたのだろう。

厄介な話だ。



「ソーマさん。船長さんをお連れしましたわ。」

「え?」

「この渡し船の船長のワンツです。あの魔物をどうにかして頂けるということで。」

「ええ!?ミリア!?」

「ソーマさんならちょちょいのちょいですわよね!」

「いやあ、我々もどうしようかと苦慮していたところにミリアンヌお嬢様から提案頂いて藁にも縋る思いなのです。」

「いやあの・・・。」

「ブルアリゲーターは小物でも船底に穴を開けてしまう厄介な魔物で、しかもあれだけのサイズとなると騎士団の精鋭を待つことになってしまいかねないのです。到着までにどれだけの被害がでるか・・・。」

「大丈夫ですわ!ソーマさんがあの程度の魔物なら簡単に退治してくださいますわ!」

「おお!これは心強いです!何卒宜しくお願い致します!」

「任せておきなさい!」



なぜか本人置いてきぼりで話がどんどん進んでいきます。

周囲で聞き耳を立てていた人々から歓声と応援と疑心の混じった声と視線を向けられた。

先ほどまで騒いでいた人たちまでこちらに値踏みするような視線を向けている。

ミリアは本気で言っていたのだろうけど、船長さんの若干芝居がかった話し方は自分たちから逸らさせる意図があったのだろうと冷静になると思えてくる。

気が付くと騒いでいた乗客の対応をしていた船員の姿が消え、少し船の速度が上がった気がするから、読み違いではないだろう。

まあ、生き残るためには乗客の相手よりもスピードを上げて逃げ切る方策に力を入れるのは間違ってはいないら、責めるつもりはないが、なんだか釈然としないものがある。

後で謝礼はきっちり払ってもらおう。

なんせこちらには"ミリアンヌお嬢様"がいるからな!



「で、ミリア。」

「はい。なんですの?」

「ていっ!」

「あぅっ!な、何をなさるのですか!?」

「"何をなさる"じゃないよ。勝手に話を進めないでくれよ。」

「ですが、ソーマさんなら何とかして下さるでしょ?今のこの船の中で対応ができるのは(わたくし)たちしか居りませんでしょう?」

「そうかもしれないけど、いきなり連れて来られても困るよ。」

「ソーマさんなら大丈夫ですわ!」

「ミリアんのその自信はどこからくるやろね?」


俺も知りたいよ。



「兄貴!で、どうやって倒すんだ?泳ぐ?」

「わたしは泳げないですます。」

「うちも苦手や。」

「イチ。脱ごうとしなくていいから!」

「はい。」

「水棲の魔物相手に水中戦を挑むのは愚策だよ。素早く動けないしね。」

「ではどうしますか?」

「水中戦に関しては課題として、今回は折角だし、新しい魔法を試したいから俺がやるよ。」



ブライトン伯爵家の書庫で閲覧した上級魔術書の呪文をいつものように無駄を省き、効率がいいように組み換え、別の魔術からコードを組み入れてアップグレードしたのだ。

中々いい感じにできたと思うのだが、如何せん上級魔術の為、おいそれと試し撃ちが出来なかったのだ。

ちょうど川の上で水が豊富だし、周囲が水で囲まれているので試してみようと思う。


俺は【検索】でブルアリゲーターの位置を捕捉しながら呪文の詠唱を行う。

まだ距離があるため、焦る必要はない。

そのため、いつもの戦闘時よりもゆっくりと詠唱を行う。


呪文を唱えると胸に入れていた神青球スフィアを通して光が生まれる。

生まれた光が文字を形作り、コードを描いていく。

光のコードが巨大な円を描いて、上級魔術を世界に映し出す。



「大水龍リヴァイアサン」



俺は静かに発動命令(アクティブコマンド)を発する。

巨大な光のコードが明滅し、周囲から水を吸い上げる。

そして、巨大な水龍が生み出された。



なぜか3体。


「あれ?」



自分の意図していない巨大な三つの水龍リヴァイアサンが迫っていたブルアリゲーターに襲い掛かる。



「ブルラァァァァァァーーー!!!!」



吠えて威嚇するブルアリゲーターに一体のリヴァイアサンが正面から襲い掛かる。

少し遅れて残りの二体が左右から挟み撃ちにして一気にブルアリゲーターの巨体を水中から引きずり出し、空中に投げ出した。



「ブルラァ、ブルラァ、ブラァーーー」



空中に投げ出されたブルアリゲーターを三体のリヴァイアサンが三方から圧し潰す。

大量の川の水から作り出されたリヴァイアサンの大質量が三方から襲い掛かったのだ。

ブルアリゲーターは大きな音を立てて川に落ちてきてその死体を浮かび上がらせた。

ついでにリヴァイアサンを構成していた大量の水も落ちてきた転覆しかけた。

これって川津波とか起きそう。





しーらない。




名前:ブルアリゲーター

種類:アリゲーター

等級:普通

品質:普通

属性:水

説明:ブルアリゲーターの死骸。

肉は淡白で旨いが、内臓が破裂しており、処理が難しくなっている。

鰐皮は高級品として取引される。

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