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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
光の国へ編
180/200

178 負けた気分

ミリアの案内に従って、エルドウェル南の街道を進む。

フラムウェル王国内は川が多く、全ての街道に橋が架けられているわけではなく、寧ろない場所の方が多い。

その場合は、船で馬車ごと運ぶ渡し船がこの国では主流なのだそうだ。

渡し船は定期的に出ているが客が多い場合は順番待ちで日を跨いでしまうこともあるらしい。

だが、俺たちにはブライトン伯爵家の紹介状がある。

これがあればほとんどの場合に優先的に乗船できる。

待っている人には申し訳ないが使えるものは使う主義だ。

ありがたく使わせてもらう。

まあ馬車アークは事前にストレージリングに格納しているので手荷物程度なのだが。

そんな船の上でドーラが落ち込んでいる。



「ドーラちゃん。どうしたの?そんなに落ち込んで。」

「いっちゃん。うちは今猛烈に負けた気分なんよ。そっとしといてや。」

「え、あ、うん、わかった。」


「ソーマ様。ドーラちゃん、どうしたのでしょうか?」

「変形馬車アークには船舶機能が無いだろ?」

「え、はい。そうですね。馬車ですし。」

「だから負けた気分みたいだ。」

「えええ。船ですよ?」

「ああ。船だよ。でも理屈じゃないんだよ。」

「はあ。」



イチはあまりよく分かってはいなさそうな表情だが、変形馬車アークでどこまでも行けると思い込んでいたドーラは水上は考慮できていなかったらしい。

こういう思考の漏れとか穴があると負けた気分になってしまうのは技術屋の性だ。

考えた結果で出来ないのではなく、考えが及ばなかったのが悔しいのだ。

そういうものなのだ。



「そういえばミリア。」

「はい。何でしょうか?」

「国内は定期的に騎士団が哨戒しているって話だったけど、川ってどうなんだ?」

「川の水中を隈なく調べている訳では無いので完全ではありませんけど、魔物を見かけたら通報するようには体制が整っておりますので基本的には安全ですわよ。」

「騎士団は水中戦もいけるのか。すごいな。」

「基本的には水中から引き上げて討伐することが多いようですけど。」

「引き上げるってどうやって?」

「そこまでは存じておりませんわ。申し訳ありません。このお詫びは体で・・・///」

「い、要らないからっ!!」

「そこまで拒絶されると傷ついてしまいますわ。」

「あ、ごめん。そんなつもりはなくて。」

「これはお詫びが必要ですわね。」

「ええ!?」

「もちろん体で・・・///」

「えええっ!?」

「ああ、そういえば。魔の森の近くだと時々奥から強い魔物が流れてくることがありますわね。」

「ええええっ!?」

「にゃーー!!」

「ええええっ!!?」



ミリアの呟きでフラグが立ったのかは分からないがシロが警告の鳴き声を上げた。

まだ遠いがこちらに近づいてきている魔物がいるらしい。

しかも水中だ。


今渡っているのは川幅が1kmもある大河だ。

今はちょうど川の中央付近。

船足はオールと竿を人力で動かしているため、非常に遅い。

川幅が広く流れが穏やかなため普段は問題ないが、非常時の逃げ足が悪い。

何で魔法を使わないんだ!

船を動かせる程の魔力のある人がいないかららしいが、魔法道具の一つでも開発したらいいのに!

これは儲け話になるかな?



そんなふうに思考が横道に逸れている間に魔物がどんどん近づいて来ている。



「ん?デカくね?」

「兄貴!めっちゃ大きいよ!何あれ!?」



ザッパーン!!


大きな水飛沫を上げて姿を現したのは巨大なワニだった。

でけー。



「ア、ア、ア、アーーーーー!!!!」


アーって何だろう?


「ブ、ブルアリゲーターだーーーーーー!!!!」


アー!と叫んでいた旅人風の人が魔物の名前を教えてくれた。

俺がボケっとしている間に船内が阿鼻叫喚の渦に飲み込まれた。



「お、お、おっいっ!!どうにかしろ!!」

「はやっ速く逃げろー!!」

「キャーーキャー!」

「キャハハ!」

「おい!お前ら護衛だろ!」

「何とかしろ!」



大混乱である。

船員に詰めかかる者、護衛として乗船している兵士に食ってかかる者、なんだかよく分からないけど楽しいことだと思って走り回る子供。

まさにカオス。


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