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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
光の国へ編
177/200

175 魔剣

「はぁー。」

「兄貴、どうしたんだ?」

「ああ、それがな。」


町から戻ってきたみんなに伯爵との話をした。


「えー!サファイアパピヨンっておらんのか。困ったな。」

「いやそっち!?」

「え、だってミリアんのことはしょうが無いやん。うちらじゃどうしょうもないし。」

「お仲間が増えるってことですよね?」

「お仲間って・・・。まあ悩んでも仕方が無いのはその通りだけどさあ。」


みんなに話して少し楽になった。

持つべきものは友だね。

なんの解決にもなってないけど。





翌日、俺達の姿は多数の兵士に囲まれた訓練場にあった。

唐突である。


それは遡ること数時間前。



「覚悟は良いな!」

「いや回想くらいさせてよ!」

「ええい!ごちゃごちゃと抜かすな!どこの馬の骨かも分からん貴様にミリアンヌ様のことは任せておけん!剣の錆にしてくれるわ!行くぞ!」

「話を聞けー!」

「うおおおおー!」


サヴァスの剣が迫る。

レベル36の身体能力に物を言わせた剛剣が襲いかかる。

ブォッともの凄い音を立てて剣閃が降り注ぐ。


「うわっ!おっと!よっ!すぃー!」

「ええいっ!ちょこまかと!さっさと切られろ!」

「誰が切られるか!」


「ソーマ様!頑張ってください!」

「兄貴!いけー!」

「いくですー!」

「やったれー!ボコボコやー!」

「あなたー!しっかりー!あなたって言ってしまいましたわ。きゃ!」



みんなの声援が呑気過ぎる!

何気にミリアも混ざってるし!

まだ結婚するなんて言ってないよ!

誰のせいでこんな事になってると思ってるんだ!

ミリアの結婚話をどこからか聞きつけてきたサヴァスに無理矢理に決闘を受けさせられた。



サヴァスの鋭い突きが襲いかかる。

はやいっ!


「出た!サヴァス様の五月雨突きだ!」

「サヴァス様のあれを捌くなんてあの男は誰なんだ?」

「お!次は稲妻切りか!?サヴァス様は本気だな!」


兵士たちの熱のこもった解説が聞こえる。

というかさっきからカチャカチャと気が散るなぁ。


「相変わらずサヴァス様はあの鎧なんだな。あれ五月蝿いんだよな。」

「そうそう。でもよくあんなの着てあれだけ動けるよなあ。」

「あ、それは思ってた。あのパワーは尊敬に値するよな。」

「そうだな。人望は無いけどな。」

「なー。」


兵士たちの噂を聞きながら、サヴァスの鎧を見てみると確かにカチャカチャと音がする。

気が散るが、無視できない程でもない。

正直、小細工でしか無い。

寧ろ動きを阻害しそうなものだが、人それぞれだしな。

よっと。


「ぐぬぬぬ。貴様!さっさと切られないか!それでも男か!」

「いやだって。」

「ええい!死ねー!」

「もうやだー。」


この人これでも子爵様の嫡男らしい。

そんな人を公衆の面前で倒してしまったら、後からどんな難癖を付けられるか分からない。

時間制限を設けてなかったのが悔やまれる。

ガンガンと剣を合わせて接戦を演じるのもしんどい。

カチャカチャとイラッとするし。

今はなんとか引き分けに持ち込めないかと持久戦を仕掛けているのだが、全然勢いが衰えない。

むー。


「おのれぇ。さっさと倒れろ!オレの邪魔ばかりしおって!クソっクソっクソがっ!」

「ぐっ!」


剣圧が更に上がり、剣速も上がった。

最初よりも鋭く速い五月雨突きが飛んでくる。

たまらず大きく後ろに跳ぶ。


「逃すかあっ!!」


サヴァスの追撃が激しさを増す。

サヴァスの剣が薄っすらと魔力を帯びているのが見える。

あれは



名前:バーサクソード

種類:魔剣

等級:希少

品質:普通

属性:精神

説明:

使用者の闘争心を刺激し、掻き立てる魔を宿す剣。

闘争心が高まれば高まるほどに使用者を強化する。

反面、冷静な判断力が低下する。



うわー!

魔剣だ!

初めて見たー!

ホントにあったんだ!

でも初めての魔剣が呪われてるってやだなぁ。


密かにテンションを上げている間にもどんどん攻勢が激しくなる。

こんなに殺意を向けられるようなことしたかな?



「おのれおのれおのれー!!ミリアは渡さんー!!あのおっぱいはオレのものだ!!」

「こいつ何言っちゃってんの!?本音ダダ漏れなんですけど。」

「喰らえー!!キェェェェーー!!!」



完全に魔剣の魔力に取り憑かれている。

自分の妄想を曝け出すとか恥ずかし過ぎるな。

意識を取り戻した後が怖そうな魔剣だな。

使いたくねぇ。



「貴様らさえ!ハッ!貴様さえいなければぁ!!ハァッ!!」

「俺が何したって言うんだよ!」

「オレが助ける計画だったのニィ!キェィ!!オレがコノ時をドレだけェ!!」


なんか勝手にゲロし出したぞ。

計画?

酷い妄想だな。


「どうせ杜撰な計画だったんだろう!」

「ナンだと!?オレの計画は完ペキだァ!ミリアを完ペキに素晴らしく助け出してイレバァ!オレにホレたミリアはオレの誘いを断らナイィ!!」

「助け出したからって都合よく惚れさせられるか!」

「そんなモノ薬でなんとでもナルわ!クソがっ!アタレェェ!!」

「当たるかバーカ!ベロベロー!」


ブチィィ


「コロース!!」


「うーわ。また速くなった。どこまで上がるんだ?」


見え透いた挑発に乗ってどんどん激しさを増すサヴァスの剣とよく回る口。


「お前なんかに助けられるか!」

「ウルサイ!オレにはカンタンにデキるわ!」

「どこに捕まってるかも分からないだろう!」

「オレの指示通りダッタわ!」

「お前が誘拐を指示したのか!」

「オレが指示しなけレバ誘拐など成功スルか!」



うーわ。

黒幕さんでした。

自爆もいいところだな。



「サヴァス!貴様!自分が何を言っておるのか分かっとるのか!!!!」

「ウルサイダマレダマレダマレー!!!ミリアはオレのモノダー!!!」



トチ狂ったサヴァスは周囲を囲っていた兵士の中にいたミリアに向って突進していった。

とはいえその周囲には多くの兵士やイチ達もいる。

バーサクソードの影響で強化されているといっても神級称号で強化されている俺達には届いていない。



「ま、そこまで行かせはしないけど、な!」

「グァ!!?」



我を忘れて後ろを見せたサヴァスを上から叩き潰す。

金属製の鎧で全身を包んでいるため、急所への攻撃がほとんど出来ない。

そのため、以前から練習していた衝撃を貫通させる"遠当て"をお見舞いした。

闘気術の応用だ。

普段、身体能力の強化に利用している闘気だが、イメージでその質を変化させることが出来るため、強化以外にも応用できると考えてゼンと一緒に日々試行錯誤している。

その試行錯誤しているひとつが"遠当て"だ。

他にも"気弾"とか、"発勁"とか、"気刀"とか試している。

今の所はあまり成果ないけど。

遠当ても研究中なので、今回は闘気を強めに篭めて放った。

ちょっと疲れる。

サヴァスが後ろを見せて隙だらけだったのと、金属製の鎧が上手く衝撃を伝えてくれたのが幸いして一撃で沈めることができた。

上出来だな。

あ、魔剣は回収しておこう。

危ないからね。

猫ババしたりはしないよ!

ちょっと調べてみるだけだよ。

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