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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
光の国へ編
176/200

174 ミリアの決意

それから暫く伯爵のミリア自慢が開催された。

ミリアは顔を赤くしていた。

いや伯爵だけで無く、夫人とハロルド様も加わって拍車が掛かってしまった。

小さい頃は天使のように笑う子だったとか、誕生日に前から欲しかった剣をプレゼントされたとか、厳しい訓練終わりに笑顔でタオルをくれたとか、作法を覚えるのが早くて教師が褒め称えたとか、領主の補佐のような事まで出来るほど聡明だとか、方々から引く手数多だとか。

まあ確かにこれだけ容姿に優れ、聡明であれば嫁に欲しいと声が掛かるのも頷ける話だ。

下世話な話だが、あの胸を見たら男なら放っておかないだろう。

そういう輩が群がりそうで辟易しそうだ。

見ないようにしよう。

というか神々し過ぎて直視できない。



「でも今回の一件は響いてくることになるだろうね。」

「ウム・・・。」

「・・・。」


ん?娘が戻ってきてくれて嬉しい、で終わりではないのだろうか?

突然雰囲気が暗くなってついていけていない。


「いや、ソーマ君に聞かせる話では無いな。今のは忘れてくれ。」

「はあ。」

「お父様、そのことでご相談がありますの。」

「ん?どうしたんだいミリア。」

「今回の一件で、(わたくし)の貴族子女としての価値は無に帰しました。」

「ウム・・・いやしかし、何もされてはおらんのだろう?」

「はい。ですが、他の貴族家の方々にはそのような些事は関係ありません。そのことはお父様もよくご存知ですよね。」

「ウム・・・。」

「ソーマ様はご存知無いかもしれませんが、貴族子女としては生娘である事がステータスなのです。実際に何も無かったとしても誰かのお手付きとなった可能性があるというだけで蹴落とされる世界なのです。」



誘拐されて夜を明かした時点で何かがあったと見做されてしまうのだ。

そうなるとその娘は中古として扱われ、あまりいい扱いは受けない。

そもそも嫁の貰い手が付かなくなるのがよくある話で、そうなると一生を独り身で過ごすか、何処ぞの貴族の妾になるか。

日陰暮らしが決まってしまうのだそうだ。

世知辛い世の中だが、貴族は純血を何より重んじる傾向がある。

特にこの国は歴史が古く血を大切にしているから、その傾向が強いらしい。



「無価値となった(わたくし)にはもう既に伯爵家の娘として出来ることがありません。」

「ミリア。そんな事はないぞ。お前は良くやっているし、お前ならばきっと嫁に欲しいと言ってくる貴族家もある。」

「いいえ。たとえそのような奇特な貴族家があったとしても、不要な波風を立てることはありません。」

「いやだがな。」

「なので(わたくし)、伯爵令嬢を辞めますわ!」





(わたくし)、伯爵令嬢を辞めますわ!」

「いやミリア!何を言っとるんだ!?」

「そ、そうよミリアちゃん!あなた何を言っているのかわかっているの!?」

「聞こえていないのかと思いましたので。」

「そういうことでは無くてだな!」

「ミリア。一体どういう事だい?ミリアのことだから何か考えがあっての事なのだろう?」

「はいお兄様。ソーマ様への謝礼についてですが、金銭や書庫の閲覧だけでは不足だと思うのです。」

「ん?」


いきなり自分の名前が出てきて困惑する。


「自分言うのも難ですが、(わたくし)は伯爵家の娘としてしっかりやって来ましたわ。他家との繋がりを作ったり、領内の安定にも努めて参りましたわ。」

「そんなことまでやってたんだ。すごいな。」

「ありがとうございますわ、ソーマ様///」

「ミリアがしっかりやって来たことは分かっておるが、それとソーマ君への礼と関係あるのか?」

「ありますとも!その伯爵家の娘を救出した英雄とも言うべきソーマ様への礼がそれっぽっちでは他家に示しが付きませんわ!ええ、きっとそうですわ!」

「ふむ。そう言われてみるとワシのかわいいミリアの救世主に対する礼としては不足過ぎるな。」

「まあ確かに。」

「はい!なので(わたくし)をお礼に差し上げますわ!」




(わたくし)をお礼に差し上げますわ!」

「二度も言わんで良い!」

「ソーマ様!(わたくし)を貰って下さいませ!」

「ええっ!?」

「ミリア!?何を言い出すのだ!?」

(わたくし)の英雄に差し上げるお礼にこれ以上のものはあり得ませんわ!」

「ミリアちゃん!?ね?落ち着いて?」

「お母様、(わたくし)落ち着いていますわ。落ち着いて考えた結果、ソーマ様へのお礼には(わたくし)がお嫁さんになるしかないのです!」

「いやいやいやいやミリアさん!?それ落ち着けてないからね!?いくら何でもどこの馬の骨かも分からない冒険者への礼が伯爵令嬢なんておかしいから!?そもそも自分をそんな物みたいに扱うのはよくないよ。」

「まあ!(わたくし)のことを気遣って下さるのですね!嬉しいですわ!」

「いやそうだけど、そこでは無くてね?ミリアさんと結婚とか無理ですから!」

「何だと貴様!ワシのかわいいミリアのどこが不足だと言うのだ!?ミリアは完璧だろうが!!ああん!?」

「なぜ突然キレてるの!?自分の娘が冒険者と結婚してもいいの!?」

(わたくし)はソーマ様のお嫁さんになりたいのですわ!」

「いやだから無理ですって!」

「まだ言うか貴様ー!」

「お父様は黙ってて下さい!」

「み、ミリアぁぁぁ。」

「どうどう。父上もミリアも一旦落ち着こう。ね?」

「はい・・・。」

「う、ウム・・・。」



ハロルド様の声で落ち着きを取り戻したようだ。

良かった。



(わたくし)、本気ですの。本気でソーマ様のことをお慕いしていますの。」

「・・・。他に好きな人がいるのです。ですから・・・。」

「そうですの。イチさんですの?」

「いえ。」

「では(わたくし)は3番目になりますわね。」

「はい・・・ん?」

「でも愛に順番なんて関係ありませんものね?問題ありませんわ。」

「いやいやいやいや、待ってください!3番目とかどういう」

「え?」

「他に好きな人がいるから付き合えないって言ってるんです。」

「え?わ、(わたくし)のことが嫌い、です、の?」

「いやいやいや嫌いじゃないですよ!」

「まあ!(パァ!)」

「では好きってことですわね!?(わたくし)も好きですわー!!」ダキッ

「いやあの待って、、、(震えてる?)」


ミリアが潤んだ瞳で見上げてくる。



「うっ。」

「ミリアちゃんが自分から男に抱きつくなんて、本気なのね・・・!」

「み、ミリアぁぁ・・・。」

「ミリアは男性が苦手なのですよ。」

「え!?そんなふうには見えませんでしたけど。」

「恐怖症と言う程ではないが、男性の視線が気になるようで、どうにも男性の好意をまともに受け取れないようなのです。もっと自信を持ってもよいと思うのだが。」

「ハロルド、そういう事ではありませんよ。まったく。これだから男性はいけませんわ。ミリアちゃんは聡い分男性の視線に込められた邪な下心を敏感に感じ取ってしまうのですよ。だから積極的になれなかったのよ。」

「み、ミリア。そうだったのか。」

「そんなことは良いのです。(わたくし)は決めたのです。ソーマ様に全てを捧げると。」

「いや全てって!?ミリアさん!?そう早まらないで!」

「早まってなどおりませんわ。それより(わたくし)のことはミリアと呼んでくださいまし。いつまでも敬称付きでは寂しいですわ。」

「ミリアが既に愛称で呼ぶことを許しておるとは・・・。ぐぬぬ、致し方あるまい!」

「致し方あるよ!?」

「貴様ミリアのどこが不満だ!」

「いや不満とかでは無くて!うわわわわ!」




人前では気を付けていたのに、焦って愛称で呼んでしまっていた。

娘が冒険者なんかに嫁に行くと言っているのに止めようとしているこちらに食って掛かる親ってどうなんだ!?

この場はハロルドさんが強制的にお開きとしたが、どうしたものか。



「わたしがソーマ様のお嫁さん・・・。えへへ///」

「にゃああ。」

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