172 高貴なるドリル
捕まえた盗賊たちを檻に詰めて町へ向かう。
予想以上に多くて大変だったが、無理矢理詰め込んだ。
檻を馬車に繋いで出発だ。
ドーラが突貫工事で車輪を付けただけの檻なので、クロにはゆっくりめで進んでもらう。
中の盗賊たちがどうなろうと知ったことではないが、車輪が外れたら面倒だからだ。
車内はほとんど揺れを感じることが無く快適で、お客の二人も驚いていた。
こだわった甲斐があるというものだ。
道すがら聞いてみたが、やはり部位欠損を治せるポーションは希少品のため、おいそれとは入手は困難だそうだ。
長い戦いになりそうだ。
「兄ちゃん!町が見えてきたで!」
ドーラに促されて街道の先を見ると立派な城壁が遠くに見えた。
「ん?兄貴。何かピリピリしてない?」
「にゃー。」
「そうです?」
野生の勘を持ち合わせたゼンとシロが言う。
望遠鏡で見てみると城門の前に物々しい装備の兵士たちが数百人は並んでいた。
「まるで戦争に行くみたいだな。」
「ええ!?戦争っ!?やばいやん!早う逃げようや!」
「ですます!」
「ああいや例えだよ。たとえ。」
「どういう事ですか?」
「たぶんミリアさんの捜索の為の兵士たちじゃないか?」
「ああ。そうですね!きっとそうです!」
領主の娘が誘拐されたのだからこれくらい大事になるのは当然だろう。
「ソーマ様。それは何ですの?」
「これかい?これは望遠鏡と言って遠くのものを見るためのものだよ。」
「メガネとは違うのですか?」
「メガネよりも遠くを見ることができるんだよ。見てみるかい?」
「はい。・・・あら、サヴァスが見えますわね。」
「サヴァス様が出られておられるのですか?」
「そうみたいね。ネネアも見てみなさいな。」
「・・・わあ、これ凄いですね。サヴァス様がこんなに近くに見えるなんて。あ、旦那様もみえられたようですね。」
「お父様も?ご心配をおかけしてしまいましたわ。」
どうやら顔見知りが従軍されているようだ。
というかお父様ということはここの領主様だよね?
直々に捜索に出るなんて随分とアクティブな領主様だな。
見張りがこちらに気付いたようだ。
偉そうな騎士様が十数の騎兵を引き連れてやって来た。
乗っているのは普通の馬だが、乗っている騎士たちはみんな中々レベルが高い。
最低レベルで27とかレベルの高さが伺える。
最も高いのは先頭の騎士様で36だ。
ミリアの話に出てきたサヴァスって人だ。
騎士団の副団長らしい。
偉そうでは無く偉い騎士様だった。
「貴様ら止まれ!少し聞きたいことがある!」
偉い騎士様が偉そうな態度で叫んでいる。
それが人にものを頼む態度か。
ドーラは大人しくクロを止めて騎士達が近づくのを待つ。
なんて賢い子だ。
俺なら少し反発してしまいそうだ。
騎士たちの前で急ブレーキで止まるとか。
止まりましたけど?とかしてしまいそうだ。
「何かありましたか?」
「いやこの近くで怪しい者を見なかったかと思ったのだが、お前達は?」
「我々はトリスタから来た冒険者です。怪しいといえば後ろに繋いでる盗賊たちですかね。」
「何っ!?」
「あと、ミリアンヌ様とお付きのネネア様を保護してますよ。」
「なんだとっ!?」
「サヴァス、この方々は私の恩人です。丁重にもてなして下さいね。」
「ミ、ミリアンヌ様!?な、な、な・・・!?」
「何をしているのですか?早くお父様に伝えに行って下さい。」
「は、はっ!直ちに!」
相当慌てていたのか副団長なのに自ら伝令に走っていった。
カチャカチャと五月蝿い。
数人がそれに従い、取り残された形になった残りの騎兵たちに護られながら町の方へ馬車を進めるのだった。
「ガッハッハッハッ!助かったぞソーマ君!ミリアを救ってくれて感謝のしようがない!」
「ええそうですね。あの人数を殺さずに捕らえてくるとは皆さん相当な実力者と見えます!ボスを取り逃がしてしまったのは残念ですが、捜索はこちらで手配致します!」
「すみません。ミリアンヌ様の救出で精一杯で。」
「あ、いやいやこれはいらぬ気遣いをさせてしまいました。妹を救って頂いただけで十分なことです!顔を上げてくださいっ!」
「そうだぞ。」
俺は今、城塞都市エルドウェルの領主の館で領主ロカード・エルドウェル・ブライトン伯爵とその長男ハロルド・ブライトン様に歓待を受けている。
ここには俺と膝の上にシロと隣にイチがいるだけだ。
ゼン、サーシャ、ドーラは早速町に繰り出しやがった。
正直俺も町に繰り出したかったが、「頑張ってなリーダー!」と言われて逃げられなかった。
あいつらお小遣い減らしてやる。
「ミリアが拐われたと聞いたときは何かの間違いかと思ったが、なんとか生きて戻ってきてくれてホッとしたぞ。」
「そうですね。命あっての物種ですからね。これもソーマ殿のおかげですね。」
「そう言って頂けて幸いです。」
ミリアは家族に愛されているのがよくわかる。
どちらもミリアの無事を本当に喜んでいるのを感じた。
「あなた。入りますね。」
「おお、来たか。ミリアは休んでおらんで大丈夫なのか?」
「ええ。ミリアちゃんもきちんとご挨拶したいと言ってますわ。」
「失礼致します。」
そう言って入って来たのは伯爵夫人のヘレーネ様とミリアだった。
俺は絶句した。
汚れたドレスからシンプルだが上品で美しいドレスに身を包み、そのマシュマロを強引にねじ込んだかのようなはち切れんばかりの胸元が視覚に大ダメージを与えてくる。
急いで目を逸らすと薄汚れていた黄金の髪はきれいに整えられ、顔の両側でクルクル渦を巻いている。
いわゆる縦ロール、ツインドリルというやつだ。
初めて見た。
何という破壊力。
巨大マシュマロと縦ロールの組み合わせはどちらも主張が激しいが、ミリアの纏う高貴な雰囲気と可愛らしい顔立ちがそれもありかと思わせる。
「ガッハッハッハッ!どうだ!ミリアは可愛いだろう!方々から引く手数多なのだよ!」
「ええ。そうでしょうね。見違えたよ。ドレスも似合ってる。」
「いえそんな・・・///」
「分かってるじゃないか。ソーマ君は見所があるな!ガッハッハッハッ!」
上機嫌な伯爵にガシガシ叩かれて地味に痛い。
何かこんなこと前にもあったな。




