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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
光の国へ編
173/200

171 合流

翌朝、グループマップでみんなの位置を調べる。


「あっちか。」


あちらはどうやら馬車まで戻って夜を明かしたようだ。

バラバラでいる方が危ないからな。

俺にはマップがあるから迷う心配はないしな。


「う、うんん・・・。」

「起きたかな?」

「ふぁい・・・?」


寝起きでまだぼんやりしているらしく疑問符付きだ。

長い髪が手入れも出来ずにいたせいでくすみ、所々跳ねたりしてしまっているが、ストレートロングの金髪が美しい。

寝起きで着崩れたコートから見える溢れんばかりの胸の破壊力たるやイチの全力の一撃に匹敵する。

つまり俺は瀕死です。



俺が再起動を果たしている間にミリアの方も状況に気付いたようにハッとして崩れたコートを直す。

完全に見ていたことはバレているだろう。

なんたって顔が熱い。

クールだ俺よ。

ひーひーふー。


心を落ち着けて、何事も無かったように声をかける。

声が引きつらないことを祈る。


「お、おはよう。眠れたかい?」


どもってしまった。

ダメダメである。


「はい。気が付いたら寝てしまいましたわ。申し訳ありません。」

「謝ることないよ。疲れていただろうしね。それより朝ご飯だ。こんな所だし、軽くね。」


挽回としてストレージリングからサンドイッチを出して手渡す。

もちろんイチ特製だ。


おずおずと受け取り、小さな口で少しずつつ(ついば)むように食べる。

貴族のお姫様に手で食べるサンドイッチは敷居が高かったかもしれないな。

今も顔を赤くしている。

申し訳ないことをしたな。



朝食をとってから移動を開始した。

今いるのは谷間の川岸だ。

周りは崖に囲まれ、川の水が増水したら水の底に沈んでしまうだろう場所だった。

空は快晴で増水の心配はないが、登れそうな場所がない。

グループマップで確認した方向に街道があるはずで、そちらに向かって移動しているのだが、まともに歩ける場所がどんどん無くなってきた。

貴族のお姫様にはかなり辛い道程だ。

昨日痛めていた足は魔法で治してあるが、また同じように痛めかねない。

少しでも登りやすい場所をと思っていたが、どんどん切り立ってきている。


「ミリアさん。ここを登ろうと思うのだけど、難しいよね。」

「・・・。」


一応聞いてみたが、暗い顔をされてしまった。

ほとんど切り立った崖を指して言えば仕方が無い。

角度にしたら70度くらい。

クライマーなら余裕だが、貴族のお姫様には絶壁と変わらないだろう。


「頑張りますわ!」


決意を込めた声でやる気を見せてくれたが、不安は隠しきれず、息が荒い。


「いや、聞いてみただけだから。そんな決死の覚悟で挑むようなことではないからね?」

「ですが、ここを登らなければ先へは進めないのでしょう?ならばブライトン家の娘として、これくらいの試練など軽く乗り越えてみせますわ!」


ミリアは猪突猛進のきらいがあるようだ。

そんな家の名誉をかけて挑むようなことではないと思う。

ちょっと気が引けるけど、こういう時はサッとやるのが正しい判断だ。


「ミリアさん、少しの間我慢しててね。」

「え?」


よしっ。

気合を入れ直し、ミリアを抱きかかえる。

ちょうどお姫様抱っこの状態だ。

薄いドレスにコートしか身に着けていないミリアの豊満過ぎるマシュマロがはち切れんばかりに強調され、意識を奪いに来る。

俺は無我の境地で一気に崖を駆け上がる。

見ては駄目だ!考えても駄目だ!俺は貝になるんだ!


「ええっ・・・///」


既にレベルが38にもなり、ステータスにブーストがかかっている俺にとって、この程度の崖は手を使わなくても簡単に登れる。

俺が急に動いたことでミリアは首に腕を回して密着してきた。

完全にゾーンに入りながら、軽く崖を登る。


「着いたよ。」

「はぃ///」


呆然とした表情のミリアが小さく返事をする。

顔も赤くして驚いた表情を浮かべている。

俺は貝だ。


「ごめんね。突然、崖を登ったりしたら怖かったよね。」

「ぃ、ぃえ。大丈夫ですわ///」

「そう?あ、下ろすね。」

「ぃゃ、あ、いえ、はい。お願いしますわ。」


ミリアの柔らかいマシュマロが離れた。

俺は貝になれなかった。

だが満足だ。

生きているって素晴らしい。

アホですまん。





そんなドキドキイベントを乗り越えて森を歩く。


ガサガサ!


草が揺れる音がした。


「っ!何ですかっ!?」


声を潜めてミリアが問いかける。


「お迎えが来たみたいだね。」


俺は普通に答えた。

気配で何が向かって来ているかはすぐに分かった。


ガササっと草むらから白い影が飛び出す。


「キャアア!」


驚いたミリアが俺に抱きつき、左腕がマシュマロに包まれる。

頭がチカチカする。

俺は貝、俺は貝・・・。


「シ、シロ。お迎えご苦労さん。」

「にゃー。」


飛び出してきた巨体の白猫。

もう猫というより白いトラだ。

ホワイトタイガーのような虎模様は無く真っ白だが、サイズ的には虎か熊だ。


俺に抱きつき固まっているミリアに従魔であることを伝えると驚かれたが、すんなりと受け入れられた。

開放された左腕が若干寂しさを訴えたが無視してシロに跨がる。

ミリアは俺の前で横座りに乗せて支える。

シロに乗るにはコツがいるため、後ろに二人乗りすることはできない。

ざんね、残念ではないぞ。







「お嬢様ぁっ!!」

「あ、ネネア!無事だったのね!」

「お嬢様ぁぁあああぁぁぁ!!!!」

「ちょ、ちょっとネネア。落ち着いて!」

「お嬢様ぁぁあああぁぁぁ!!!!」


みんなと合流するとミリアと一緒に捕まっていたお付きの人も無事だったようだが、ミリアに抱きつき泣き崩れている。


「あの人ずっとあの調子だったんです。」

「え?」

「お嬢様、お嬢様って心配のし過ぎで倒れるんじゃないかと思いました。」

「そうだったのか。」

「サーシャちゃんがいい仕事してくれました。」

「ん?」

「やってやったです!」

「何やったの!?ねえ!?無茶してない!?」

「大丈夫ですます!無味無臭後遺症なしの睡眠薬ですます!」

「ちょっと!!?ほんとに大丈夫!?」

「竜も眠らせると専らの噂ですます!」

「りゅ、竜!?それはスゴイ!ってアホかー!」

「兄ちゃんええツッコミや!ひと晩考えただけはあるな!」

「はいです!」

「あ、ああ。冗談か。びっくりしたよ。竜用の薬を人に飲ませてたらやばいよな。」

「当たり前ですます。効くのは精々ハイオークくらいですます。」

「やっぱり魔物用なの!?」

「用量用法を正しく使えば問題ないですます。」

「そうかもしれないけど驚かさないでよ。」

「人生は驚きと発見だとドーラちゃんが言ってました!」

「こらドーラ!サーシャに変なことを教えるな!」

「やー!堪忍してー!」

「待てこらー!!」



最近はいつも誰かしらが一緒で静かな夜と言うのが無かったからか、いつも以上に騒がしく感じた。

この騒がしさもいいものだね。


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