169 流されて(ミリアンヌ視点)
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状況についていけず、されるがままに流されていた。
郊外での視察を終えて帰宅している途中で盗賊に襲われた。
護衛を務めていた騎士たちは盗賊たちが使った煙を出す道具のせいで視覚を奪われ、私も抵抗も出来ずに捕まってしまった。
あの盗賊たちは明らかに私を狙っていた。
私は薬を嗅がされて気が付けばボロい部屋の中だった。
そこがどこかも分からない。
暗く汚い小屋のような場所だった。
一緒に攫われた侍女も震えていた。
私も・・・。
下卑た男達の笑い声。
不躾な視線を私に注ぐ。
どこに行っても同じ。
男たちはみんな一緒。
どいつもこいつも下種ばかり。
何のために兵士に混じって訓練をしていたのか。
何のために魔術を学んでいたのか。
何のために力を付けていたのか。
何のために・・・。
気付けば暗い渦に飲み込まれていた。
私が闇に囚われそうになっていた時、外から叫び声が聞こえてきた。
悲鳴。
爆発。
魔物の声。
小屋にも火がついて、私たちは連れ出された。
外は炎の海だった。
炎の中に大きな魔物がいた。
ああ。
死神だわ。
私を迎えにいらしたのね。
私はここよ。
私の心の叫びは男たちの怒声にかき消され、男に引きずられる。
私はどうして男よりも弱いの・・・。
男に引きずられて森の中をさまよう。
崖に辿り着いた。
落ちたら終われるかしら。
お父様にもご迷惑をかけずに済むし。
私の願いが届いたのか、地面から大きな蜘蛛が飛び出してきて、崖に投げ出された。
ああ、やっとなのね。
私は目を閉じて死を受け入れた。
でも私の手を取る人がいた。
さっきまでの男とは違う。
力は強いが痛くはない。
その男は私を抱えて川から上げてくれた。
私のことを心配するように手を差し出して。
胸が当たって驚いてしまい、突き飛ばしてしまったのに私のことを支えてくれた。
私の胸に視線は来ていたのはすぐに分かった。
でも出来たはずなのに胸に触れないように優しく私の肩を支えてくれた。
お礼を言わなければと思い声を出したら、謝礼はいらないと言う。
それどころか何もないところから薪を出し、コートを出し、シチューまで出てきた。
生活魔法だがその発動速度は驚くほどの速さだった。
名の知れた冒険者なのだろうか。
美味しい。
シチューの温かさが体に染みる。
ふと、名前すら名乗っていないことに気付いた。
伯爵家の娘としては礼節を欠いた行いだ。
私は再び声を出す。
「あの・・・。」
「危ないっ!」
「え?」
気が付くと私は押し倒されていた。
押し付けられる男性の体。香り。
一瞬倒錯しかけすぐさまそんな場合ではないことに気付いた。
私の視線の先には巨大な蜘蛛が顎を鳴らして脚を振りぬいていた。
ハッ吐息を飲み、彼の背中を見る。
彼は私を庇い、背中に傷を負っていた。
私はなんて浅はかな・・・。
このままでは共倒れ。
足に怪我をした私がいたら、巻き添えで死んでしまう。
そんなことはさせられない。
「逃げてー!」
私は叫ぶ。
力の限り叫んだ。
彼はチラリとこちらを見て微笑んだ。
「え?」
次の瞬間、巨大な蜘蛛は縦に4分割されて崩れ落ちた。
私は呆然と背中を見ていることしかできなかった。
私は初めての恋をした。




