168 流されて
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「ちくしょうがっ!!どいつもこいつも俺の邪魔をしやがってぇっ!!おらっ!!さっさと来いっ!!!」
「ああっ!!い、痛いですわっ!」
「知るか金づるが!テメエの痛みなんぞ知ったことかっ!!つべこべ言わずについて来ればいいんだよっ!!!」
「きゃあっ!」
「もう少しで橋があるはずだ。そこを落とせばあの化け物も追っては来れないだろう。ハァハァ。」
クッソ。
何だってんだ。
貴族の娘を誘拐するだけの仕事のはずなのに、何で化け猫や土蜘蛛に襲われなけりゃならねぇんだよっ!
聞いてねえよっ!
そもそもだ。
あのガキどもは何なんだ。
ただの旅人って話だったから狩りを許可したってのに全滅って何だよ。
無能共が余計なことしやがって。
クソがっ!
「あれだ!」
◆
「見つけた!」
盗賊のボスが橋を見つけたのと俺が盗賊たちを捕捉したのはほとんど同時だった。
「チィィ!もう来やがったか。オラッ来いっ!」
盗賊のボスが捕虜の女性を強引に引っ張る。
「げっ。まずいっ!」
「シャャーーーー!!!!」
俺が声を上げると同時に地面から土蜘蛛が飛び出してきて、盗賊と女性に襲い掛かった。
この辺りの地面には至る所に土蜘蛛が潜んでいるみたいで、運悪く土蜘蛛がいた地面を踏み抜いたみたいだ。
「ギャアアアーー!!!」
「きゃあああぁ!!!」
土蜘蛛は潜んでいた地面を飛び出し、盗賊の足に食らいついた。
崖の近くを橋に向かって移動していたため、盗賊のボスは土蜘蛛に足に食らいつかれたまま崖から飛び出してしまった。
手を強引にひかれていた女性諸共に。
俺は咄嗟に崖に飛び込み自由落下よりも速く崖を駆け降りる。
運の悪いことにあまり高くなかったため、捕虜となっていた女性を掴んだのと同時に急流に飲まれてしまった。
なんとか女性を話さずに済んだが、川の流れが速すぎる。
ていうか岩だー!!
急流に逆らって岩を回避。
そしてまた回避。
またまた回避。
岩の次は流れてきた流木だ。
流木は触れた瞬間にストレージリングに放り込む。
もう慣れたものだ。
めっちゃ流されるなぁ。
◇
なんとか女性を抱えたまま岸に上がった。
まじで死ぬかと思った。
「けっふけっふ・・・。」
「ふう。」
抱えていた女性の方も少し水を飲んでしまったようだが、意識もあるようだ。
流れが急だったためどれだけ流されてしまったのかはよく分からない。
まあ俺からは位置が把握できるから問題はないけど、空を見上げるともうすぐ日が暮れる。
というかもうあたりは薄暗く、気温も下がってきている。
この辺りは北方に位置しているため、気温が低い。
特に夜ともなるとかなり冷え込んでしまう。
濡れたままでは普通に体を壊してしまう。
夜の森を普通の女性に歩かせる訳にもいかないし、しょうがない。
辺りを【検索】して、近くに洞窟を見つけた。
「大丈夫ですか?まずは少し移動しましょう。濡れたままでは風を引いてしまう。」
「・・・はい。」
「歩けますか?」
「はい。大丈夫で、いっ!」
「おっと。」
ぽよん。
よろめいた女性を咄嗟に受け止めると初めての衝撃に一瞬頭が沸騰しかけた。
俺は悪くない。
わ、わざとじゃないんだからね!
「ひゃわっ!」
「おっとっと。」
咄嗟のことで驚いた女性は俺をどんと押して離れたが、足の痛みで逆に倒れそうなる。
突き放されたが倒れるのを見ていることもできないので、今度は慎重に身体を支えることに成功した。
したのだがよく見るとこの女性は驚くほどの眼球破壊兵器を持っていた。
肩を支えているだけで分かる雄大な生命の神秘。
それが水で濡れて張り付いたドレスでより強調されている。
ワンダホー!
精神が崩壊しかかったが何とか取り繕い洞窟へと移動できた。
ミッションコンプリート!!!
俺は今猛烈に顔が赤いことだろう。
チェリーボーイにはこの刺激は強すぎるよー!
「あの・・・。」
「はい!」
必要以上に元気な声を出してしまった。
意識しているのがバレバレである。
しっかりしろー!
俺の鋼の精神よー!!
俺は鉄、俺は鉄、俺は輝。
輝ってなんだよー!?
はっ!
なんて罠だ。
眼球だけでなく精神まで破壊するつもりか!
おーう。
全面降伏だー!
俺が脳内でバカ騒ぎをしている中で女性はおずおずと切り出してきた。
「危ないところを助けて頂いて感謝いたしますわ。うちに帰った折にはしっかりと謝礼はお支払いいたします。」
「あ、いや。謝礼はいいですよ。またまたですし。って、濡れたままでしたねっ!」
「え?」
しまった。
気が動転していて火も起こしていないし、濡れた服のまま放置していたら、体を壊すってさっき考えていたばかりだ。
早く暖を取らないと風邪を引いてしまう。
ストレージリングから乾燥した薪を取り出して魔法で火を点ける。
「え?」
自分も濡れたままだったことにようやく気付き、生活魔法の乾燥で水分を飛ばす。
女性が着ていたのは元は高級なドレスだったのだろうが、ところどころが破れてセクシーなことになっていた。
外套もないのでは寒いので大きめのコートを出して渡した。
「え?どこから?」
小さな声で疑問が上がったが、流石に答えてはいられないので、聞こえなかったことにしてストレージリングから暖かいシチューを取り出す。
冷えた体にはこれが一番なのだ。
イチに感謝である。
うまー。




