167 残党狩りと奇襲
盗賊の残党が辿り着いたそこにはボロボロの小屋があった。
見た目はボロボロだが、穴が開いていたりということもなく、盗賊たちが整備したことが伺える。
厄介なことに小屋の中には盗賊の他に攫われたと思われる人が確認できた。
「厄介だな。」
「そう?数は15人だからさっきよりも少ないよ。」
「にゃあ。」
「においが違う?どういう事?」
「ゼンの言う通り人数はあってるよ。ただし、その内の2人は盗賊ではなく攫われた捕虜だろうね。誘拐か人売りかは分からないけど。」
「捕虜・・・。」
「です・・・。」
「兄貴、どうするんだ?迂闊に攻められないってことだろ?」
「・・・。よし。焼こう!」
「です!?」
「あ、兄貴っ!?焼くって!?」
「そのままだ。シロに焼いてもらおう!」
「え!?」
「にゃ?」
「幸いにもさっきの戦闘ではシロは出番が無かったし、監視していた盗賊からも死角になっていて見えなかっただろうから、野生の魔物が襲ってきたってことにすればいい。家を焼けば出て来ざるを得ないだろうしな。」
「おおー!兄貴天才ー!」
「ですー!」
「はっはっはっー!あ、でも出て来なかったらまずいからゼンとサーシャは裏手で待機しててね。」
「うん!」
「です!」
適当な作戦会議を終えて動き出す。
二人が小屋の裏手に回ったのを確認してから、シロを送り出す。
スカーフを取ったシロは見た目では野生の魔物とほとんど違いはない。
多少毛並みの艶がいいとか、汚れがないとか、身体が大きいとかあるが、ほとんど違いはない。
シロが陽炎の炎で包まれ、業火を纏って現れる。
森の中で突然こんなのが現れたら驚くだろうなぁ。
と第三者視点からぼーっと考える。
「ニギャーーー!!!!」
「おおう。ノリノリだ。」
シロがノリノリで炎弾をばら撒いている。
至る所に燃え広がり、辺りはあっという間に火の海だ。
え、大丈夫かこれ?
はい、大丈夫です。
辺りを包んでいるほとんどがシロの陽炎が作り出した幻影だ。
森に延焼しない位置の草木だけを本物の炎弾で燃やし、燃え広げている様子は幻影で作り出し、惑わせる。
それがファントムキャットの真骨頂だ。
「ニギャーーー!!!!」
「うわぁぁぁぁぁーーーー!!!」
見張りが逃げた。
「ニギャーーー!!!!」
シロが叩き潰した。
爪は立てていないから死んではいないだろうが、体長1.6m、体重500kgの巨体に叩き潰されたら骨の一本くらいいってそうだ。
「ニギャーーー!!!!」
迫力がある。
シロの雄叫びと見張りの叫び声にようやく気付いた小屋の中の盗賊たちも慌てふためきだした。
小屋から次々に飛び出してくる盗賊たち。
手には武器を持って構えてはいるが、及び腰だった。
奥からボスらしき他の盗賊よりも身なりのいい人間が出てきた。
このボスだけ回りよりもレベルが高い。
なんとレベル17だ。
すごい。
弱。
いや一般的にはレベル17あれば、一人前の冒険者レベルだ。
もしかしたら騎士に取り立ててもらえる可能性だってある。
重い罪科が無ければだが。
まあだけどねぇ。
シロに比べたらねぇ。
ちなみにシロの今のレベルは38だ。
同率でゼン、次が俺で37だ。
グループ内最高レベルがシロなのだ。
手加減が大変だ。
「ニギャーーー!!!!」
「チィィ!こんなところに何でこんな化け物が出やがるんだ!クソッ!おい!逃げるぞ!人質つれて来いっ!!」
「へっ、へいっ!!」
「ニギャーーー!!!!」
その間にも前に出ていた盗賊たちがシロの前足で叩き潰されていった。
一応は武器を持ってはいたが、戦う気概は持ち合わせておらず、四方八方に逃げ惑っている。
シロを気にするあまり、燃え盛る炎に突っ込んで火だるまになってしまうやつも出ている。
盗賊たちは散り散りに逃げ始めた。
「来いっ!」
「あっ。な、何ですのっ!?」
「いいから黙ってついて来い!」
「い、痛いですわっっ!」
「うるせぇ!」
盗賊のボスが手下と共に小屋から女性を引っ張り出して来た。
他に手下が潜んでいることも無さそうだった。
さっさと全員をのして救出といこう。
「!!」
「シャー!!!」
「うわぁぁぁぁぁーーーー!!!今度は何だぁぁー!!??」
地面から飛び出してきた黒い何かに盗賊が吹き飛ばされた。
「な、何だ!?」
「シャャーーーー!!!!」
「く、土蜘蛛だぁぁ!??このクソ忙しい時にぃ!!おらこっちだ!!」
地面から飛び出してきたのは土の中に潜んで獲物を捕食する土蜘蛛だ。
強力な脚と牙を持った厄介な魔物だ。
名前:土蜘蛛
レベル:19
種族:蜘蛛
属性:土
スキル:跳躍
説明:土蜘蛛の成体。
湿った土の中を好むが、硬い岩すらも砕いて地中を進むことが出来る。
非常に凶暴だが、地中を移動するため隠密性も高いハンター。
肉食で血が好き。
突然の土蜘蛛の乱入で突入のタイミングを逸してしまったが、放っておくと全員が土蜘蛛に捕食されてしまうので迷ってもいられない。
まずは捕虜を救出して、土蜘蛛を倒して、盗賊を捕らえる!
ゼンに合図を出す。
ゼンが小屋の裏手から飛び出して、捕虜を連れ出した盗賊を叩き伏せる。
「ぐあっ!」
「ん!?何だぁ!?」
ボスの意識がゼンの方に向いた隙をついて一気に接近して捕虜の救出に動く。
「何だてめぇらっ!!」
気付かれたが構わずに突撃だ。
「キシャァァァァーーーーー!!!!」
「ちぃっ!」
あと少しで盗賊のボスという所で土蜘蛛が横槍を入れてきた。
俺に向けて蜘蛛の糸を飛ばしてくる。
寸でのところで回避したが、捕虜からは離れてしまった。
次々と土蜘蛛が糸を飛ばしてくる。
「今は構っているヒマはないのにっ!」
「ジャャァァーー!!!!」
咄嗟に振るった魔力剣で土蜘蛛の脚を斬り飛ばした。
俺が土蜘蛛に気を取られている隙に捕虜を連れた盗賊は視界から消えていた。
気配はまだ捉えているので、急いで追いかける。
視界の端で脚を斬り飛ばされた土蜘蛛がシロの爪で叩き潰されていた。
奇襲はされた側でした。




