166 初の盗賊イベント
トリスタの町を出発して3日たち、野営中だ。
爆速馬車アークは軽快に飛ばしており、通常の馬車での1週間以上はかかる道のりを3日足らずで進んでいた。
このペースなら後1日ほどで王国領最初の町に辿り着きそうだった。
「次の町では何か予定はあるのですか?」
「いや特に予定はないね。国境の町だから頑丈な城壁が有名って話だけど、それ以外は特にめぼしいことは聞いてないな。みんなは何か知ってる?」
見回してみてもゼンもイチもサーシャも首を横に振る。
シロは寝ている。
「国境の町やから重騎士が有名やったはずやよ。」
「重騎士?」
「うん。王国の盾、とかなんとか。」
「へー。」
重騎士といえば全身金属鎧で巨大な盾と槍を持って壁役をするようなイメージだ。
東西戦争となると国境を守る町が最前線となるから盾を名乗るのも頷ける話だ。
まあただ、出来ることなら騎士の町よりも魔術師の町とか学園都市とかに行ってみたい。
手持ちの魔術書はトリスタの町で揃えた中級の魔術が最高レベルなのだ。
中級の魔術をどんなにゴリゴリ改造しても所詮は中級のコード。
限界はある。
ブラッドタイガーに魔法が全く効かなかったため、いくつかの魔法も強化はしてみたが、ブラッドタイガーの毛皮を貫通して十分なダメージを与えられる魔法は出来なかった。
もちろん多少のダメージは与えられるため足止めにはなるが、魔法だけで倒し切るのは難しい。
元々ブラッドタイガーの毛は魔法耐性が高いため、魔法で倒せる相手ではないが、出来ないとなるとやってみたくなるのが人の性ではないだろうか。
とにかく、レベルの高い魔法が欲しいと思っている今日この頃なのだ。
魔術書店くらいには行ってみよう。
◇
トリスタの町を出発してから、特に問題もなく(魔法は飛ばされたけど)、街道を進んでいた。
はずだったのだが、どういう訳か今は盗賊に囲まれていた。
ちょうど森を抜ける途中で昼時になったので適当に火を起こしてイチ特性のクリームスープとストレージリングから取り出した焼き立てパンと搾りたてのフルーツジュースに舌鼓を打っていたところに寄ってきた盗賊に囲まれたのだ。
腹を空かせた野生の獣だなと言ったら怒らせてしまった。
本当のことなのに。
「オラオラオラァ!大人しくしやがれ!」
「全員手を挙げて跪けや!」
「大人しくしねぇと殺すぞ、オラァ!アァン!」
「すげー。よく吠えるなー。」
「特に暴れてないのにねー。」
「脳みそに栄養足りてないんだろうな。」
「いややわー。うちこわーい。」
「ドーラちゃん、わざとらしいよ。」
「ですですー。」
「んで、兄ちゃんどうする?殺る?捕まえる?」
「ドーラ、女の子が殺るとか言わないの。半日も進めば町に着くだろうし、捕まえよっか。ちょうど檻も持ってるし。」
「はーい。」
「おいガキども!ゴチャゴチャといつまでもしゃべってんじゃねえゾ・・・ぐぇ」
みんなが気軽に返事をした瞬間、ゼンとイチが消える。
直前まで何か喋っていた盗賊Aが頸椎に一撃をくらって沈んだ。
他の盗賊たちは突然のことに対応できていない。
おそらくは俺たちが子供ばかりだから余裕だと思ったのだろう。
俺以外はまだまだお子様サイズだから舐められても仕方がないが、身体の大きさが強さではないからね。
ゼンとイチが武器すら使わずに素手で盗賊たちをのしていっている中、ドーラはショルダーキャノンを展開し、サーシャは魔動銃で弱い雷撃をお見舞いしていた。
ドーラの装備は、この中では一番様変わりした。
今使っているのはショルダーキャノン&フライビットだ。
待機状態ではバックパック型になり、工具なんかも入れて置ける普通のリュックだが、展開すると左右に2門ずつ合計4門の銃身が伸び出てくる。
どこの変形ロボットだと言いたくなるが、それに加えてフライビットだ。
浮遊の魔法コードと風の魔法を組み込んだ試作品で某アニメで出てきそうなあれを生身に身に付けているのだ。
フライビットが使えるのは弱いエアショットだけで丸太を貫通するくらいの威力しかない。
岩くらい貫通してほしいものだ。
まだまだ改善の余地ありだ。
俺がちょっと振り返っている間に囲んでいた盗賊たちはほとんど全滅した。
「ウゴッ・・・。」
最後の一人が沈んだ。
「兄貴、弱いよー。」
「ですです。」
「ゼン、サーシャ、こんなもんだよ。」
「そうやって。弱いから盗賊しかできんのやから。」
「ふーん。」
「です?」
魔物がいる世界だ。
魔物を狩っていた方が健全なのは間違いない。
まあ実力があればの話だが。
「兄貴、あっちはどうするの?」
「ついでだし、きれいに片付けよう。まだ住処に残党がいるかもしれないから案内してもらおうか。」
「はーい。」
「ドーラとイチとクロはここでこいつら縛っといて。檻は出しておこう。ほい。」
「はいよー。」
「はい。わかりました。」
「ブルルー!」
「ゼンとサーシャとシロはついて来て。俺の【検索】でもまだ追えるけど、見失ったらよろしくね。」
「おー!」
「はいですー!」
「にゃ。」
俺たちを囲っていた盗賊とは別に離れた位置から見張っていた監視者が二人いた。
職業が盗賊なので、間違いなく盗賊だ。
連絡役とかだろう。
囲っていた盗賊たちが倒されるやいなや逃げ出したのだが、気配の消し方が雑で丸分かりだった。
気配を読むのが苦手なドーラですら気づいていたから、相当だ。(どういうこっちゃ!)
今は前方500mくらいの位置を移動している。
移動速度も遅い。
レベル10程度ではこんなものだろうけど、よくこんなレベルで森の中を歩けるよな。
魔物が怖くないのだろうか?
「うにゃぁ。」
「ん?変な臭いがする?臭い?」
「あ、もしかして臭い玉ですか?」
「臭い玉?何それ?」
「魔物除けの薬ですます。今では玉では無いんですけど、昔は玉状の薬玉で砕いて匂い袋に入れて持ち歩いていたらしいですます。今では香水タイプが主流ですますけど、分かりやすいからって臭い玉って呼ぶことがあるですます。」
「へー。」
「流石サーシャ。勉強してるんだね。えらいえらい。」
「えへへです。この辺りにはその原料がよく見られますから、そのせいかもしれないですます。」
「にゃあ。」
「そうらしい。その草が臭いって。」
「あ、それですます。ドクグサ草ですます。毒はないですます。」
「ややこしいな。」
「です。これが普通の魔物は苦手なにおいらしいですます。好きな魔物もいるので他にも混ぜて作るですますよ。」
「そうなんだ。あとで採取しておこうかな。」
「でも魔猫たちだと調合できないですますよ。」
「あ、そうか。やめておこう。」
「ですです。」
そんな雑談をしている間に追っていた盗賊が住処に着いたようだった。




