165 東への旅立ち
新章開幕。
と言ってもあまり変わらないかもしれないですが。
少し展開が変わるのでお楽しみ頂ければと思います。
出発の朝。
「行ってしまわれるのですね・・・。」
悲しそうな顔で見送りに出てくれたカレリーナにどんな顔をすればいいのか混乱中の俺だ。
まるで今生の別れの様な見送りだが、ちょくちょく帰って来るつもりだから、そう日をあけずに会えるのだが・・・。
ただ、ここまで真剣に見送りをしてくれているカレリーナに水を差すようで非常にいたたまれない。
胃がキリキリする。
「なあイチ。」
「ゼン兄は黙ってて。」
「え、いやでも。」
「いいから!」
「お、おう。」
イチの気遣いが心を抉る。
ここは強い心でもって!
「えっと、カレリーナ。」
「はい。私は何時までもお帰りを待ってますわ。」
ぎゅっと手を握られ、潤んだ瞳で見つめられ、頭が真っ白になる。
「ああ。絶対帰って来るから!」
「はい!」
「あーあ。」
後ろの方でドーラが呆れを隠そうともしない声でため息をついた。
だってしょうがないじゃないか。
かわいいんだもの。
そんなひと悶着があったものの俺たち5人と2匹は一路進路を東へ取って馬車の旅へと出発したのだった。
◇
「ソーマ様。東ということは東の大国 光の国フラムウェル王国に向かうのですか?」
「そうだ。」
交差点の町トリスタは東西の大国に挟まれた位置に存在していた。
その大国の一つが東の大国 光の国フラムウェル王国だ。
フラムウェル王国はこの大陸で最も古くから存在している国家だ。
その起源は5000年前の英雄サクセス・G・アクロキャストが始祖といわれている。
そう、俺のストレージリングの中に眠っている骨その人だ。
時代が変わる時に国名は何度か変わってきたが、5000年もの長きに渡って『光の国』という冠は変わらず受け継がれてきた。
国の形態も大きく変わらず、王権を貫いている。
歴史ある大国というので有りがちな腐敗や独裁といった設定は聞いたことがない。
聞いたことが無いだけで、実際にはあったのかもしれないが、それによって国が倒れたり、内戦になったりといった大規模な事変は少なくとも発生したことが無い。
テンプレが守れない奇異な国、という事だ。
そんな奇異な国フラムウェル王国だが、人種差別はほとんどない。
個人レベルではあるかもしれないが、少なくとも公にはない。
内戦も対外的な戦争も近年は起きていない。
そのため、人が多く、国内の交通量も多いという事だ。
つまり、目立つ。
非常に目立つ。
「フハハハ!快調快調!フハハハ!」
「ブルルルルーーー!!」
ドーラの変なテンションにつられてクロのテンションまでアゲアゲだ。
爆速で街道を突き進む。
時々すれ違う旅人たちが魔物の襲撃かと驚いて魔法が飛んでくることもあった。
今では街道を少し離れた位置を爆走している。
爆走には変わりない。
止める気はないらしい。
「はあ。」
「止めてきましょうか?」
「いや。言っても無駄だろう。もうあきらめた。それより何の話だったっけ。」
「最近は戦争が起きていないってことでしたね。」
「ああそうそう。」
このフラムウェル王国だが、国内での戦争は全くないが、国外との戦争は度々起きている。
数十年前のトリスタ近郊で発生した東西戦争は大きなものだったと聞いた。
南部の小国とは小規模な衝突は、戦争という程には発展していないだけで、今でも起きている。
ただ、過去の戦争では、戦争が起きても数週間~数ヶ月、長くても1,2年で戦争は終結している。
それもフラムウェル王国が負けることなくだ。
奇襲攻撃以外の真っ向勝負ではフラムウェル王国は引き分けることはあれど、負けたことが無い。
それは中央に存在している『光玉騎士団』の精強さと王族にのみ受け継がれているという大魔法によるものだと言われている。
詳しいことは分からないが、強化魔法の一種らしく、その光を受けた光玉騎士団は無類の強さを発揮するとか。
「無類の強さかー。かっこいいなー。」
「ですねー。」
「俺も聞いた話だからよくは知らないけどね。」
「町でお店をお手伝いしてるときにお客さんから聞きましたよ。何でもスタンピードをその騎士団さんが食い止めたとか。」
「おおー!すげー!スタンピード!」
「えー!スタンピードですー!?怖いですー!」
「サーシャ、大丈夫だよ!全部やっつければ怖くない!」
「そうですね!片っ端から殺るですます!」
「おいっ!」
サーシャの思考がどんどんゼン寄りになってきている。
悪い傾向だ。
女の子はもっとお淑やかにだな。
「サーシャちゃん、そんな言葉使ったらダメだよ。」
「え、です。」
お、イチ。流石だ。
「ちゃんと狩り尽くさないと周りの迷惑になるでしょ?」
「そうですます。ちゃんと狩り尽くすですます!」
「うん!」
なんか違う。
大分違う。
期待していたのと違うよー。
誰か助けてー。




