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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
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163 変形馬車アーク

カレリーナに次に会う時にどんな顔をすればいいのかと悩むが、ポーション探しの旅の準備は進めている。

食料を市場をはしごして買い込み、サクセスルーム<弐>の倉庫に貯めたり、ストレージリングに放り込んでいく。

道具屋の売り上げは順調に伸びている。

ここでもシールドの魔法道具が売り上げを伸ばしている。

トローラ王国の方で売り出したものとほとんど品質は変わっていない下級品だが、シールドの魔法が使えない非魔術師でもシールドを張れるため、冒険者の多いトリスタの町でもあっという間に噂が広がった。

大きめのクランからの大型受注もあってウハウハだ。


クランというのは複数の冒険者パーティの集まりのことだ。

冒険者ギルドには冒険者個人のランクとパーティランクとクランランクという3つのランクシステムがある。

パーティランクは冒険者ランクとほぼ同じで、所属する冒険者のランクの高いものがパーティランクになる。

ただし、事故防止の為、依頼を受けられるのはパーティ内の冒険者ランクの低い者に合わせることになる。

Eランクの冒険者がBランクパーティに所属してもBランクの依頼は受けられないシステムだ。

一方、クランは所属する冒険者のランク毎の人数によってポイントを付けてランクを決める。

高ランクの冒険者がいてもある程度の人数が揃っていないとクランとしては高ランクにはならない。

大規模な討伐依頼や探索依頼の場合、後方支援なども重要になってくるため、予め人数の揃っているクランを対象にした依頼というも偶にあるのだ。

依頼料が高額なので滅多にないのだが、それが受けられるとかなりの報酬が期待できるのだ。

そのため、高ランククランになると人数も資金も豊富だから大量発注ができるということなるのだ。



シールドの魔法道具の他にも魔畜器ver2もちらほらと出ており売り上げに貢献している。

以外にもオセロとチェスの売れ行きが好調で急ピッチで増産に乗り出している。猫たちが。

特に特許制度があるわけでもないので、オセロなんかだと簡単に模造することが出来る為、町中の昼時には路上で遊んでいるおっさんたちの姿も見られる程になった。

みんな娯楽に飢えていたようだ。

この世界では娯楽といえば酒を飲むか、広場で歌ったり演奏したりしている芸人なんかがあるくらいだ。

小さな子供用のおもちゃすらその辺の石ころを積み木替わりに使ったりするくらいらしく、本格的なおもちゃというものがあまりない。

日々の生活すらギリギリという実用品を求めるだけで精一杯な人が大半だから仕方がない部分はあるが、もう少し人生を楽しむツールがあってもいいのではと思う。

という事でおもちゃの種類を増やしてみた。

紙が貴重品なのでトランプは高級品として追加、チェスの駒にも高級品と簡素な安価品を追加した。

サッカーボール、ゴムボール、野球のバットとボール、おもちゃの車、飛行機のおもちゃ、竹とんぼ、ベーゴマ、竹馬、ブーメラン、太鼓・・・。

思いつくままに製作部隊に伝えていった。

この内のどれだけが実現できるかは分からないが、魔物素材とか不思議素材もある世界だ。

工夫次第でなんでも作れるに違いない。

どうせ俺には作れないから言いたいい放題だ。

後は任せた、と捨て台詞を残して馬車を造っているオジイのところに足を運ぶ俺だった。







「おーい、馬車が完成したって聞いたんだが。」

「お!いいところに来おったなー!ちょうど呼びに行かそうと思っとったところじゃ!」

「じゃあちょうどよかったかな。で、馬車はこれか?」

「おう!」

「会心の出来やで!兄ちゃん!」


オジイとドーラがドンと胸を叩いて立派な馬車を指す。


「その名も変形馬車アークや!」

「おお。すごい立派な馬車だな。どこぞの貴族でも乗ってそうだ。ちょっと傷付けていい?」

「なんでやねん!」

「こんな立派な馬車に乗って優雅に旅してる冒険者がどこにいるか!」

「ええやん!冒険者が優雅に旅しても!」

「イメージってもんがあるだろ!こんなんで険しい山の中に入って行くやつがあるか!」

「見た目と性能は関係あらへんで!」

「そうだぞ!見た目は貧弱だが、性能はその辺の要塞にも引けは取らんぞ!」

「貧弱ってどういうことや!」

「要塞ってなんだ!?ていうか変形馬車ってなんだ!?」


何を言っているんだこいつらは。


「よう聞いてくれた!見よ!このギミックを!」


ドーラが無い胸を張り馬車のギミックを動かす。

そもそも馬車にギミックって何だよ。


ドーラが馬車の御者台から魔力を込めるとミスリルの導線を伝って馬車の屋根が動いた。

いや屋根だけではない。

馬車全体を囲むようにシールドが浮遊し、旋回している。

開いた屋根と車体の裏からアームが飛び出してきて魔動銃とドリルを展開している。

更に屋根の上からは大口径の魔動銃の砲門が伸び、車輪の外側にスパイク付きの外輪が飛び出してきた。

エンジンがないだけでどう見ても馬車ではなく戦車だ。

下手したらエンジンすら積んでいそうだ。


「おいコレ・・・。」

「ガハハハ!どうじゃ!すごいじゃろ!この大口径の魔動砲(マジックキャノン)!にいちゃんに改良してもらった魔動銃(マジックガン)のコードを転用して大口径にしたんじゃ!これならドラゴンにだって勝てるわい!」

「フハハハ!すごやろ!このアームの加工が難しかったんやで。アームが隠れていることが分からんように細かな細工を入れたり、滑らかに動くようにしっかり研磨したりな!そんでな!やっぱりドリルや!このフォルム!回転!うはー!」


俺が絶句している間も次々と馬車の異常な機能の説明がされている。

俺がリクエストしたのは、箱馬車であることと乗り心地と8人乗り以上であることだけだ。

間違っても戦車を作れとか、要塞を作れとは言っていない。

確かに箱馬車だし、サスペンションと浮遊の魔法道具が組み込んであるし、10人以上が乗り込める大型車だけども。


「よっしゃ!試運転じゃ!」

「そうや!試運転や!兄ちゃん頼むで!」

「お、おう。」


俺は二人の勢いに押されるがまま、変形馬車アークをストレージリングに格納して試運転に向かうのだった。

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