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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
162/200

160 回復中

「ドーラ。調子はどうだ?」

「あ!兄ちゃん!いい感じやで。」


店の店員として奴隷を買ってからはやひと月が経った。

初めは生気のない目をしていた者たちにも十分な休息と食事を取らせることでずんずん回復していった。

奴隷商館では最低限の食事が与えられるのみでそれ以外はずっと檻の中だったという事で身体がかなり弱っていた。

特に最年長のトスカーナは長く奴隷商館に留まっていたらしく、腕や足が痩せ細っており、ひと際ひどい状態だったのだが・・・。


「あ!ご主人様いいところに!ちょっと見とくれよ。中々よく出来てると思うんだけど。」


噂をすれば出来たばかりの服を持ってトスカーナがやってきた。


「シンプルだけど中々かわいく出来たと思うのさ。早くあの子たちに着せてやりたいね。どうだい?」

「ああ。いい感じだよ。ここには折り目を入れて、こっちはもう少し短い方がバランスがいいかな。」

「あいよ。任せときな!」


今では奴隷たちの中の誰よりも元気である。

おまけにある程度読み書き計算ができるから他のみんなへの先生にもなっている。

今は裁縫中だ。

なぜ売れ残っていたのか疑問だ。


「トスカ、セレスの様子はどう?」

「ああ。そうさね、大分打ち解けてきたとは思うけどね。まだ物音にビクついたり、時々顔が熱くなるとかで不安定だね。いい子なんだけどね。」


ずんずんと豪快に作業スペースに戻っていくトスカーナの背中を見送る。

肝っ玉母さんみたいだ。


セレスは顔に火傷痕を負っていた人族の女の子だ。

顔全体に酷い火傷を負っていて化膿などは無かったが、ひどく怯えていた。

話は通じるし、指示したことは素直にするのだが、自主性が失われている。

前の主人のところでよっぽどの酷い扱いを受けたのだろう。

今ではサーシャの特性ポーションで顔の火傷痕はきれいさっぱり完治している。

火傷が治ったセレスは端正な顔立ちで、はっきり言って美人だった。

目鼻立ちもすっきりしていて、ぷっくりと膨らんだ唇はセクシーさを引き出している。

笑うとえくぼができて、とてもチャーミングだったのだが、全くと言っていい程に笑わない。

非常にもったいない。



「制服の方は順調みたいだけど、セレスの方はまだ様子見かな。」

「そうやね・・・。商品の方は順調に揃って来とるで。」

「義手の方はどうだ?」

「そっちも出来とるで。森に試しに出てるところや。そろそろ帰ってくる頃やないかな。」

「そうか。よかったよ。」

「兄ちゃんも変わってるよな。手足が無い奴隷をわざわざ買ってきて義手なんて作るとか。普通はそんなことせえへんで。」

「そうか?中身重視で選んだからね。手足の欠損くらいどうとでもなるよ。まだ無理だけど部位欠損の回復魔法かポーションは見つける予定だし。」

「そうやね。絶対やね。」

「ああ。」


サーシャの翼は治してやりたいからな。

あれは義翼という訳にはいかないから。



「ご主人様!いらして居られたのですね!」

「あ、ああ。おかえり。」

「「はい!戻りました!えへへ!」」


森に義手の試験運用に出ていたハズゥとカズゥが戻ってきた。

俺を見つけるや否や尻尾を全開で振りながら駆け寄ってきた。

二人ともハイエナの獣人でハズゥは右腕、カズゥは左腕と左足を魔物によって食い千切られて失ってしまっていた。

治療も満足ではなく、包帯で隠していたが少し化膿していて放っておくと感染症にかかって近いうちに死んでいただろう。

こちらもサーシャの特性ポーションとドーラとチルダの作った義手義足のおかげで走り回れるまでに回復していた。

走り回って魔物も狩っているが・・・。

ハイエナってこんな人懐っこい感じのキャラだったのか?



「おーい。ちゃんと獲物も運べよー。」

「あ!隊長!」

「は、はい!すぐ行きますー!!」



なぜかゼンが隊長と呼ばれている。

奴隷の先輩という意味なら「先輩」では?隊長?


新しく加わった者たちもまとめて地竜の深谷に連れて行って称号[無敵無双]と[竜殺し]の取得とパワーレベリングを実施済だ。

誤算だったのは、この二人も無敵無双を取得したことだ。

地竜の深谷に生息しているピコドラゴンのレベルは10程度。

ハズゥとカズゥのレベルは15と14だったため、[無敵無双]の取得は不可能だと思っていた。

なので[竜殺し]だけのつもりで竜の試練(ピコドラゴン狩り)をやったのだ。

レベルは10を超えていても部位欠損による能力低下分で、ピコドラゴンの能力を下回ったのだろうか。

ピコドラゴンはレベルの割に弱いのだが、真の能力とかがあるのだろうか?

ピコドラゴンの能力を下回るって相当だと思うのだが・・・。

それとも条件が違った?

よく分からないが、とにかく称号を得られたのは嬉しい誤算だ。

ステータス2倍はかなりのアドバンテージになる。

これだけで上級冒険者と同等の力を得られるからだ。

危険な力とも言えるが、今の所は仲間内にしか教える気は無いから良しとしよう。



という事で、めでたく全員が無敵になった。

一番苦労したのはナマケモノの獣人のジオだ。

なにせ動きが遅い。

1回振り回したら、しばらく静止してしまう。

そのためかなりの時間がかかってしまった。

動きが速くなる薬とか無いだろうか?

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