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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
156/200

154 カレリーナの憂鬱(カレリーナ視点)

「厳しいわね・・・。」


私は収支報告書を眺めながら、大きくため息をはいた。

最近ため息をついてばかりな気がするわね。

先の遠征では奇跡的に人的被害は少なかったけど、収支は完全なマイナス。

少なかったとはいえ人的被害もあったから、その補填や補償も馬鹿にならない。


そもそもこの町は東西南を繋ぐ交通の要所である立地から、戦争の被害に頻繁にあっていた。

東西戦争や北進戦争のとばっちりで侵略と占領、放棄を繰り返されていた。

いつも攻められるのはこの町だ。

東西戦争なんてその最たるものだ。

この町を通らないと東西には進めないから、その度に侵略されてきた。

周囲の大地は踏み荒らされて、荒地ばかりが目立ち、20年の歳月で草原となってはいても硬くなった大地はそう易々と畑にに放ってくれない。

そもそも交易で成り立っている町であるため、農民はほぼいない。

畑が無いから当然なのだけれど。

その代わり竜の山や魔の森が近いことから冒険者たちのレベルは高く、様々な資源が豊富にある。

この町の出身者のほとんどが冒険者を経験しているといっても過言ではなく、そのため町の兵士の万年人手不足だ。

20年前の戦争で多くの建物が破壊され、人の流入が減ってしまった。

そのため、町を通過するだけのモノにかかる関税を低くなるようにして交易を活発化させたり、町に拠点を置いてもらえるようにしたりした。

しかしここ最近、取引自体は他国で行われ、トリスタはただ通過するだけ、という低税手段を取ってくる商会まで出始めている。

お父様がもっと強気に出られたら違うのでしょうけど・・・。

言っても詮無いわね。


大商会からの圧力、東西の大国からの圧力・・・。

この町が抱える問題は多い。

そもそも町の整備にかける資金ですらギリギリなのだから、圧力に対抗できるだけの力なんて持ちようがない。

この町は大きいがそのほとんどの資金は商会やギルド、冒険者たちの持っている私有資金だ。

町が町の為に使えるお金は限られている。

元々少ない備蓄を切り詰めて何とか実行した遠征が失敗に終わって、町の有力者たちにも厳しく責められる始末だし。

あの鉱山がまだ使えそうなのが分かったのが、唯一の収穫だけど採掘の目処は全く立ってないのよね。

魔物が多いからと廃棄された鉱山だから、周囲の魔物をどうにかしないとままならないし。

兵士を駐屯させるにもそんな余裕はうちにはないし、冒険者を雇うにもお金がかかる。

ソーマ様ならなんとかしてくれそうな気がしてしまうけど、甘えてばかりはいられないわ。

彼は冒険者。

対価を持って報いなければすぐにどこかに行ってしまわれる。

あの時も、それが仕事だから私を颯爽と助けてくれた。

襲われて犯されそうになる私とオークの間に割り込んで救ってくれた私のヒーロー。

私達が苦戦したオークの群れを瞬く間に討伐してくれて、高価なポーションを惜しげも無く使って下さる優しい人。


「はぁー。今何をされてるのかしら。」


私は今日何度目かのため息をこぼしたのだった。


コンコン


「お嬢様。ソーマ様がお越しですが、いかが致しましょうか?」

「ええっ!?ソーマ様!?」

「はい。お嬢様は執務中でしたので、お忙しいようでしたらまた日を改めてでも仰られて・・・。」

「すぐ行きます!応接間にご案内して!あ!私こんな格好だわ!ドレスの方がいいかしら?ねえ、変ではない?」

「お嬢様はいつもお綺麗です。」

「いえ駄目よ!こんなインクで汚れた格好ではソーマ様の前には出られないわ!すぐに着替えます!」


あわわわ!

ソーマ様のことを考えていたら、ソーマ様がいらして下さったわ!

訓練場にはよく来られているみたいだけど、あまりこちらにはいらして下さらないからどうしましょう。

どうしましょう!

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