153 職人親子の買収・・・人聞きが悪い!
終わってる場合じゃないな。
「なあドーラ。放っといたらまたこんな事になりそうじゃないか?そもそも返しながらまた借りるってもは問題外だぞ。」
「う。そらそうやけど、うちらが借金返しても意味ないやろ?」
「まあ。」
俺たちなら手持ちもある程度潤っているし、稼ぐ手段はいくらでもあるから、肩代わりすることは可能だろうが、それでは根本的な解決にはならない。
いつまでも世話をする訳にもいかないし。
「どうにかならんかな?猫村の指南役とかで雇うとか。腕はしっかりしとるんよ。特に細工の腕はピカイチでな。」
「細工師か。」
「違うぞ。わしは大工になりたい!」
「お、お父さんっ!?」
「わしはもっと大きなモンを造りたいんじゃ!細々した道具じゃのうてもっとどでかいモンをじゃ!」
「どでかいって例えばどんな?」
「そりゃおめぇどでかいモンじゃ!」
「特に無いんやね。」
「そんな事はねえぞ。」
「だって無いんやろ?」
「だからなんだっつーんだよ!」
「無いものねだりせずに働けや!」
「何だと!?」
「何やの!?」
「まあまあまあまあ。」
「ああんっ!!?」
仲いいなぁ。
「どでかいかは分からないけど、馬車とかはどう?」
「馬車だぁ?・・・。普通の馬車じゃあねえだろうなあ?」
「もちろん。色々考えている事はあるんだけど、ドーラだけじゃ手が足りないと思ってて。」
「ああ。あれかいな。まだまだ課題が山積みよ。そもそもタイヤの素材からしてどうしたらええか分からんし。」
「ほう。中々面白そうじゃねえか。見せてみろや。」
ドーラが書きかけていた新型馬車の設計図を出す。
「ほうほうほうほう!!これが振動を抑えるのか、で、駆動がここにも・・・、で、・・・いやここは魔術か・・・、。」
「そうそう、でな、ここがこうなって・・・。」
「ならこうしたらどうじゃ?そんで・・・。」
「おお!それええやん!じゃあこっちは・・・!」
「こうしたらどうっすか?」
「ええやんええやん!こっちは・・・。」
「俺も傍目からはこんな感じに見えてたのか。いや流石に俺はこんなでは・・・。」
「こんな感じだよ?」
「ゼン・・・。マジ?」
「うん、マジ。」
うわー。気を付けよう。
「盛り上がってるところ悪いけど、いいかな?」
「お!おう!にいちゃん面白いじゃねぇか!なんだこの馬車は!これだよこれ!わしが求めとったのは!ロマンじゃ!」
「すごいです!すごいアイデアです!画期的です!馬車だけじゃなくて、こっちのポンプとか蒸留装置も!魔力が無くても使えるなんて画期的です!奇跡です!」
おおう。
雑学とロマンを詰め込んだだけだったのだが、ここまでストレートに褒められると照れるな。
「ドーラ、この二人の腕と人柄は問題ないよな?」
「うん!アホやけど腕はええし、裏表もないで。」
「よし。二人を信用して仕事を任せたいんだ。受けてくれたら、借金を全額肩代わりするよ。」
「仕事だあ?この馬車か!?」
「借金!?本当っすか!?」
「借金返済は本当だ。仕事は、馬車の製作以外にも色々と製作して欲しいのと新人の育成かな。」
「おお!この馬車が作れるんならやってやってもいいぞ!」
「借金!返済!ありがとうございますっす!死ぬ気で働くっす!何でもやるっす!ポンプも作ってみたいっす!」
二人とも自分の欲望に従順だ。
本音がだだ漏れ、というか隠す気が全く無い。
隠し事の多い俺からすると眩しい限りだ。
早速、英雄館からサクセスルーム<弐>を経由して猫村に案内して工作猫たちと顔合わせした。
初めは驚いていたが、猫村で作っていたものを見たらすぐに打ち解けていた。
作り手同士、通じるものがあるのだろう。
オジイには馬車の製作、チルダにはポンプの製作と設計図を頼んだ。
ポンプや蒸留装置は設計図と現物をカレリーナにあげようと考えている。
この町の財政難を救うための寄付とまああれだ。
ポイント稼ぎも兼ねてる。
魔力が必要無いこの二つは売れると思うのだ。
物自体が売れなくても、設計図と見本を領主や商会にでも売れれば、それなりに足しになるだろう。
正直俺たちでは流通手段が無いため、売りたくても売れないし。
店でも持ったらいいのかもしれないが、無いものは仕方ない。
ん?
作ったらいいのか?
ちょうどドワーフ父娘の工房の入口は店舗に出来そうな感じだったし。
店、か・・・。
俺は工房内のガラクタの山を眺めながら少しだけ妄想を膨らませるのだった。




