152 変態貴族と借金親子
「チルちゃん!持って来たでー!」
チルダの待っている工房に戻って、大量に獲ってきたヒイパーの蛇皮を積んだ。
ヒイパー自体は1~2mの蛇だが、50匹を優に超える数の蛇皮となると結構な山である。
ちょっとキモい。
「なっ!?ドーラちゃん!?これっ!?」
「獲ってきたでー!手当り次第に倒しまくったらこんなになってもうてん。いっぱいあって困ることはないかと思ったから全部持ってきたったよ。足りる?」
「う、うんっす。十分すぎるっす。依頼の品以外にも色々作れそうっす。」
「なら良かったわ。ちゃっちゃと片付けてしまおうや。」
「わかったっす!」
ドーラとチルダはそう言って蛇皮の加工に取り掛かった。
蛇皮の加工は鞣しから始まると思うのだが、確か鞣しには何日もかかったはずだ。
明日には納品しないといけないから、普通なら間に合わない。
だが、チルダは素材があれば間に合うと言っていた。
一体どうやるのか?
大量の蛇皮を持って二人は移動していった。
移動舌先にあったのは樽だ。
洗うのかな?
蛇皮を入れて蓋をしてチルダが魔力を込めている。
魔法道具のようだ。
暫く魔力を込めた後、蓋を開けて、何かの薬品を投入してまた魔力を込めている。
鞣しを行う魔法道具らしい。
便利なものもある物だ。
「できたー!」
「え?」
「よっし、じゃあ次は繋げていこか!」
「え?」
「うんっす。」
もう出来たの?
まだ一時間経ってないよ?
え?
流石は異世界クオリティ。
もう何でもいいや。
チルダとドーラが手際よく蛇革を加工している。
あっという間に依頼の品が完成した。
名前:蛇革の枕
種類:寝具、枕
等級:希少級
品質:高品質
説明:
ヒイパーの蛇革で作られた至極の一品。
マニア受け間違い無しの中々の出来。
ヒンヤリした肌触りが病みつきになるだろう。
ヒンヤリした肌触りがいいそうだ。
ちょっと試してみたけど、固くて冷たくて頭が痛くなった。
俺には合わなかった。
他のみんなも合わなかった。
世の中には変な人がいるものだ。
◆
どこぞの変態貴族。
「ぐふふふふ。遂に来たか!ぐふふふふ。これで蛇に囲まれた夢の生活ができるぞ。ぐふぐふぐふふふふ!」
◆
「ふわぁぁあ、頭イテー。チルダ!酒持ってこい!」
奥の部屋から頑固そうな声が聞こえてきた。
というか叫んでいる。
病み上がりの癖に酒を要求しているところがドワーフらしい。
「あ、はーい。今行くっす!」
「ちがーうっ!!チルちゃん酒禁止ー!」
「ええっ!?ダメなの!?」
「毒抜けたばっかりなのに酒なんか飲ませたらあかんよ!」
「そーなんすか!?」
「言ったやんか!」
「ええっ!!」
どうやらこの父娘はどちらも残念な感じらしい。
大丈夫か?
「ガハハハ!!すまん!世話になったな!いやー死ぬかと思ったわい!ガハハハ!」
「笑い事じゃ無いっす!心配したっすからね!何やってるんすかっ!!」
「ガハハハ!すまんすまん。わしにもできると思ったんじゃがなあ。冒険者は難しかったわい。ガハハハ!」
どうやら勢いで素材の収集に向かったらしい。
それで死にかけてたら世話は無い。
寧ろ生き残っていただけ、儲けものというものだ。
「あ、そうじゃ!依頼の品はどうしたんじゃ?」
「ドーラちゃんたちが素材獲ってきてくれて何とかなったっすよ。」
「おう!そうか!助かったわい!ガハハハ!」
「これで今月は何とかなったっす。」
「ん?今月?」
「はいっす。毎月大変なんすよ。」
「聞くのが怖いけど、総額いくらなんだ?」
「分かんないっす。」
「はあ?」
詳しく聞くとちょこちょこと借りたり返したりしていたため、今一体いくら借りてていくら返しているのか把握できていないらしい。
借金の取り立てに来た時にあるだけのお金を払って、今月の利子にしとくと言われるようだ。
毎回返済、借入れの際には魔法契約書が交わされるのだが、合計や利子が今どうなっているかはさっぱり把握していない。
契約書をきちんと交わしているから、あくどいことをされている訳ではないかもしれないが、把握していないのは問題だ。
と思って契約書を持ってきてもらった。
残っている契約書だけで見ると、普通に借金まみれだった。
幸いなのは借り先が、ある程度真っ当なところだということだ。
職人ギルド直営の金貸しで、腕はあるのに開業資金に困ってたりする職人を補助する商会のようだ。
良いところもあるものだと思っていたら、そこからの仕事は格安で受けなければならず、借金が増えれば増えるほど儲けの無い仕事を大量に回されるらしい。
儲けが少ないから返済できない。
返済できないといつまで経ってもまともな仕事が回されない。
ループだな。
ドーラが言うには、普通は最初に少しだけ借りて、普通に返せば2,3年で返済できるらしい。
最初に多く借り過ぎると破綻する。
それでも腕が良くて要領の良い人はそれで成功している人もいるそうだ。
要領の良い職人っていなさそうだな。
もちろんこの父娘は容量のよくない職人だったとさ。
おしまい。




