151 多頭バイパー
魔の森と呼ばれる領域は二つ存在している。
東の森と西の森だ。
この二つの森は離れた位置に存在している広大な森で、この森の間に小国家群が広がっている。
トローラ王国なんかがそうだ。
そして、この二つの森の距離が最も近いのがトリスタ近郊なのだ。
トリスタは二つの魔の森に近く、北には竜の巣である天竜山脈が広がり、地竜の深谷の先端部もこの近くだ。
複数の魔の領域が隣接し、ぶつかり合っている隙間の空白地帯にトリスタの町と東西に延びる街道があるのだ。
トリスタは危険と隣り合わせであると同時に様々な魔の領域産の素材が手に入る町だ。
そのため素材を取ってくる冒険者の数も質も高い。
反面、流れ者が多く、流出者も多く、長く居つく人材も金も中々ないという町だ。
そのあたりが財政難に繋がっているのかもしれない。
よく分からないけど。
今回用がある場所はトリスタの南東にある東の魔の森の入り口だ。
東の魔の森でも浅い領域に生息する魔物の素材を入手するのが目的だ。
「ドーラ、必要な魔物素材って何なんだ?」
「東の魔の森の近くにある大きな岩のあたりから森に入って行ったところにいる二首の蛇の皮がいるって言うとったで。」
「蛇!?大きい!?」
「いや、小さいって話や。大きくてもホーンラビットくらいやっていう話やで。」
「なんだー。」
「ゼンは大きいのと戦いたかったのか?」
「うん!大きい方が強そうだろ?」
「ゼンは強いやつと戦いたいのか。」
「うん!もっと強くなるんだ!」
「ゼンはえらいな。」
「へへへ。」
「あ、そや。その蛇なんやけど、毒持ちらしいから噛まれんようにな。」
「ああ。あの親父さん、その毒にやられたのか。」
「たぶんやけど。」
「毒持ちで、二首の蛇ってなんかヒュドラみたいだな。」
「ヒュドラ?なんやのそれ?」
「この世界にいるかは分からないけど、複数の首を持った巨大な蛇の怪物だよ。即死毒を持ってて、その首は切り落してもすぐに再生してしまうんだってさ。」
「すげー!かっこいい!勝てるかな?」
「そんなん嫌やー。勘弁やー。そもそも蛇ってうにょうにょしててキモいし。そんなことより早よ行こうやー。」
「おー!」
「ゼンは元気だな。まあ行くか。」
「にゃー。」
「ブルルルー!」
クロの爆走に他の旅人たちから白い目で見られつつも辿り着いた東の森で岩を見つけ、森に進んでいく。
入ってすぐは普通の森かと思っていたが、進むにつれて段々と周囲が薄暗くなり、瘴気が濃くなってきた。
まだまだ入り口近くなので薄いが、奥地に行くと散らさないと正気を失うこともあるらしい。
瘴気については分かっていることは少なく、人体に悪いという事くらいしか分かっていない。
この辺りならまだ問題ないが、奥に進むなら対策は持っておかないといけない事柄だ。
まあ下級の光魔術で散らせるから問題ないんだけど。
「にゃー!」
「ブルルルー!」
けものズが獲物を発見したらしい。
ゼンもドーラも自分の得物を抜き臨戦態勢を整える。
俺もいつでも魔法を放てるように準備しておく。
注意深く進むと二首の蛇が現れた。
「あれか?」
「二首の蛇やな。たぶんあれやね。」
「ずいぶん簡単に見つかったなぁ。」
「情報通りやねぇ。」
「兄貴、まだなんかいるよ。」
「ん?」
ゼンに注意を促されて周囲を探ると目の前に現れた蛇以外にも気配を感じる。
放っておいたら囲まれそうだ。
名前:ヒイパー
レベル:21
種族:バイパー種
属性:土
スキル:毒牙
説明:多頭バイパーの幼体。二首。
成長すると頭の数が増えて名前が変化する出世蛇。
出世前に共食いをする。
そのため、よく群れる。
"よく群れる"らしい。
囲んでいるのも同じ種か。
ヒイパーで検索したら、周囲に64匹ヒットした。
想像したらキモい。
焼き払いたい。
「周囲に60匹以上いるぞ。」
「ひえぇぇぇ!いややー!」
「俺もヤダ。」
「よーし!やるぞー!」
「ゼン、突っ込むなよ。囲まれると流石にやばいぞ。」
「うん!」
「焼き払いたいけど。」
「素材!」
「分かってるよ。素材がいるから斬るか潰すかだな。めんどいけどやるぞ。」
「うん!」
「ブルルルー!」
みんなに各種強化魔法を掛けて囲まれる前に殲滅する作戦だ。
いや唯のパワープレイでした。
「いっくぞー!」
「にゃー!」
ゼンとシロが高速で移動して双剣で次々と切り裂いていく。
二人は感知能力も高いので討ち漏らしもないだろう。
クロも魔力角を振り回し、蹴散らす。
若干噛みつかれているように見えるが、強靭な皮膚と強化魔法のおかげで全く届いていないみたいだ。
ヒイパーの毒は腐蝕性はないらしい。
ドーラは離れたところから魔法銃で風の弾丸を飛ばしている。
かまいたちを起こす魔法が込められた銃だ。
新たに開発したもので実弾を飛ばす練成銃と魔法を飛ばす魔法銃を使い分けているみたいだ。
なんかかっこいい。
魔法銃は事前に弾丸を用意しておく必要があるため、残弾に気を付けないといけないが、範囲攻撃がしやすく、属性を変えるもの簡単なので使い勝手は中々だ。
練成銃の弾丸も練成できる弾丸にバリエーションを持たせられれば、もっと汎用性が上がるだろう。
散弾とか出来ないかな?
今度考えてみよう。
二首の蛇をウインドカッターで切り裂いているとヒイパーとは違う種類の蛇が混じりだした。
名前:ヒドパー
レベル:26
種族:バイパー種
属性:土
スキル:毒牙
説明:多頭バイパーの幼体。三つ首。
成長すると頭の数が増えて名前が変化する出世蛇。
出世前に共食いをする。
そのため、よく群れる。
明らかに上位種だ。
というか名前がヒドラに近づいてきている、、、気がする?
ギャグか。
この森の奥にはまじでヒドラがいるのかもしれない。
よく今まで話題にならなかったな。
俺が知らないだけか?
今度冒険者ギルドで聞いてみないとな。
後でやることが増えるなぁ。
スマホのメモが欲しいぜ。
作れないかな?
また増えた。
うぇー。
周辺にいたヒイパーとヒドパーの群れを狩り尽くした。
「兄貴。物足りないよー。」
「ゼン。仕方ないよ。レベル20程度だし、森の浅い領域だからね。逆に危険な魔物がこんな浅いところにいたら問題だよ。」
「そうやそうや。狩りに来たんやないんやから、我慢してやー。じゃ、後は兄ちゃんよろしくー。」
「へいへい。・・・エナジーウィップ!からのストレージに収納!」
事切れていた蛇を回収して、ストレージリングの機能で分解・解体する。
あっという間に大量の蛇皮の入手が完了した。
ん?
「終わったー!帰ろー!」
「おー!」
元気な二人に引きずられながら、時間も無いのでクロに乗って急いで戻る。
1匹だけヒドラーとか言う如何にもな名前の素材が混じっていたが、俺は見て見ぬふりをすることにした。
これにより何かのフラグが折れようが、逆に立とうが知ったこっちゃない。
見間違いに違いないのだ。
うんうん。




