148 スキル【グループ化】
壁画の間の先に待っていたのは、何の変哲もない部屋だった。
部屋には小さな机とその上に1冊の本があり、奥に扉があるだけだった。
「これって何の部屋やろね?」
ドーラの疑問に答えられる人は誰もいない。
何せただの部屋だから。
「とりあえず、本を読んでみようか。」
本の表紙には何も書かれていないシンプルなものだった。
めくってみる。
『パンパカパーン!おめでとう!君たちは見事試練をクリアしました!
長く苦しい試練を潜り抜けた君たちには豪華賞品とこの部屋の使用権を進呈しよう!うまく活用してくれたまえ!
じゃあねー。
サクセス・G・アクロキャストより』
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えらく軽いな、英雄さん。
ノートに色々と残していたから、もっと思慮深いイメージだったんだけど、なんか嫌だ。
いやまあここに辿り着くまでにあった文字からもそうじゃないかとは思っていたけど、なんか嫌だ。
「ソーマ様。なんて書いてあったのですか?」
「あ、ああ。試練はクリアだってさ。あとここにあるものを賞品としてくれるって書いてある。」
「おおー!クリアだー!」
「ですですー!」
「なんやようわからんけど、クリアできてよかったな。」
「おめでとうございます!」
「ニャー!」
色々と面倒な仕掛けが施されていたけど、みんながいたからクリアできたようなものだ。
全員で掴み取ったクリアだな。
そんな感じでひとしきり喜んだ後は、残りの部屋を探索だ。
探索をみんなに任せて、俺は本の続きを読んでみる。
この本はどうやらここの説明書のようなものみたいだ。
この奥にもいくつかの部屋があって、そこには素材が残されていたり、転移魔法が設置されている部屋もあるみたいだ。
転移先はトリスタの英雄館の地下室だ。
今いる場所はちょうどトリスタの町の地下に当たる場所らしく、北の湖の入り口からトリスタまで繋がっているいるみたいだ。
このサクセスルーム<弐>には色々な仕掛けが施されていて、地下だけど空間魔法で現実の地下からは切り離されている状態らしい。
どうやらトリスタの町は太い龍脈の上にあるらしく、龍脈の恩恵を十分に受ける為にトリスタの地下に繋いだ、ということだ。
他にも転移魔法陣の作成方法が書かれていた。
サクセスルーム<壱>にあったような設置型の転移魔法だ。
龍脈に接続することが必要なタイプで、設置してから接続に少し時間がかかってしまうのがデメリットだ。
龍脈の強さによってかかる時間は変わるようだが、どんなところでも一日程度で接続が完了するようだ。
対となる魔法陣を描けば、龍脈から魔力を供給するため、魔力を込めたりは必要ない。
一度使うとインターバルが必要だが、太い龍脈の近くなら5分程度のようなので、十分なチートだ。
交易が捗るな。
問題は魔法陣を描くためには特殊な素材が必要で、材料に天竜の鱗とサファイアパピヨンの鱗粉が必要だ。
どちらも持っていないし、天竜はいいとしてサファイアパピヨンの鱗粉というのがドーラもサーシャも知らない素材ということだ。
町で工房の手伝い依頼をしている二人が知らないとなるとあまり使われない素材なのだろう。
このサクセスルーム<弐>にもないみたいだ。
天竜の鱗は北の山の奥の方にでも行けば、落ちているだろう。
地竜の鱗も落ちてたし。
そういえば、地竜の鱗も死蔵したままだな。
加工が出来なくて拾っても使えなかったんだ。
誰か詳しい人いないかドーラに聞いてみよう。
他にもあの白ゴーレム、正式名称は「白だんゴーレム」というらしいが、その仕組みや素材や作り方や、縄のトラップについて、サクセスルーム<弐>を作るのに苦労したことなどがつらつらと書いてあった。
読むのが辛くなってきたころに唐突にそれは現れた。
-- エクストラスキル【グループ化】を取得
「は?【グループ化】?」
唐突に知らされたスキル取得の知らせ。
開いた本のページには魔法陣が描かれており、本を開いた瞬間、おそらく手が触れた瞬間にスキルを習得してしまった。
「どういうことだ?」
本を読み進めると、サクセスルーム<弐>の目玉賞品がこのスキルらしい。
サクセスノートには確か"儀式場"と書いてあったのだが、場を作るのが面倒になって本にしたらしい。
英雄の手抜きだ。
さっきのページにあった魔法陣はスキルを保存するもので相応の魔力を込めれば、スキルを抜き取ることが出来るらしい。
試しに少し込めてみたが、50mプールに普通のホースで水を入れるみたいな途方もない感覚があった。
魔法陣はひとまず置いておいて、【グループ化】だ。
本にはグループメンバーを強化したり、旅人の道標での転移時に手を繋がなくてもよかったり、ストレージリングのアイテムドロップの対象になったり(忘れてた)できるらしい。
完全にアイテム用のスキルだ。
スキルって作れるのか?
どうやって?
謎だ。
謎が深いが有用なのでありがたく使わせて頂きましょう。
あれ?
どうやって使うんだ?
念じてみる。
何も起きない。
あれれ?
使い方は本には書いていない。
肝心なところが抜けている。
むむむ。
「ソーマ様、どうしたのですか?」
「新しいスキルを取得したんだけど、使い方が分からなくてさ。」
「分からない時は鑑定してみては?」
「それだ!」
イチに指摘された通り、自分のステータスを鑑定してみたら、エクストラスキルの欄に【グループ化】が増えており、それが展開できた。
このスキルは鑑定できることが前提らしい。
使えなかったらどうする気だ!
使えるからいいけど。
「イチは天才だ!愛してる!」
「ふぇっ!?」
早速、【グループ化】を試してみる。
ほうほうほう。
【グループ化】スキルは、元々は英雄のユニークスキルだったもののようだ。
解説としては、「グループのリーダーになれるスキル」だそうだ。
できることは、
・メンバーを登録することができる。
・メンバーの居場所を把握できる。
・メンバーを強化できる。
・メンバーを引率できる。
・メンバーから収集できる。
だそうだ。
まずは、みんなを登録してみよう。
えっと、どうするんだ?
とりあえず、触ってみよう。
イチの頭に手を乗せてみる。
「ひゃいっ!」
<<グループに登録しますか?>>
おお。なんか出た。
とりあえず登録っと。
居場所の把握は、俺を基準とした大まかな位置がレーダーマップで分かるみたいだ。
強化はよく分からない。
メンバーを増やせば変わるのかな?
「ん?」
「はう。」
「お?」
「にゃー。」
「ブルルルー。」
「ニャ。」
「ニャ。」
「ニャ。」
「ニャ。」
・
・
・
「ニャッ!?」
「ニャニャッ!?アギャ!」
とりあえず、みんな登録してみた。
うん。
明らかに強化されている。
メンバー数が増えていく毎に自分の力が上がっていったのが分かった。
あと、おそらくメンバーの強さも関係がある。
ゼンたちを登録した時と、魔猫たちを登録した時とでは力の上がり方が若干違っていた。
おそらくだが、メンバーの数とレベルが強化値に影響しているのだろう。
最後に登録した魔猫のコロはいきなり力が上がったことで驚いて飛び跳ねていた。
力を見誤って、天井に頭をぶつけて痛そうだった。
ご利用は計画的に、だな。
残りの引率と収集は旅人の道標とストレージリングの機能との連動だろう。
何にせよ、特に居場所の把握ができるようになったのは大きい。
俺しか使えない状態ではあるが、はぐれても合流が容易になるし、連携も取りやすくなる。
正にリーダーの為のスキルといえるだろう。
サクセスルーム<弐>は得るモノの多い試練だった。
スキル、情報、このサクセスルーム<弐>自体も有用だし、トリスタの町にある英雄館も使えるようだ。
英雄館のトラップたちはグループメンバーは無効になっているらしい。
その仕組みも解析してみたいものだ。
そういえば、ここの手前で聞こえた声は何だったんだろう。
何かがいたような形跡は残って無かったようなのだが・・・。
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「これで念願の・・・ができるぞ。ウキャキャキャキャ!」
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