144 白ゴーレム軍団
一晩明けて次なる試練に挑戦だ。
広間の奥にそびえる扉。
ゼンが言うにはカギはかかっていなかったらしい。
まさかのもう開けていた。
少しは思慮深さというものを覚えてほしい。
こんなことでは大人の男にはなれないぞ!
頑張れゼン!
ガチャ
さっそく扉を開けてみる。
え?思慮深さ?
大丈夫だ。
高速思考スキルでぐるぐる考えた結果さっさと開けてしまう結論に達したのだ。
行動が同じでも考えた結果であれば、それは思慮深いのだ。
きっとそうだ。
高速思考スキルは別に頭がよくなるわけではないのだ。
だから大した結論は出ないのだ。
なんたって俺の頭だからな!
えっへん。
という事で進もう。
扉の先は今度はしっかりした建造物の通路だった。
石組みの通路は道幅も高さも10m四方あり、大人数でも余裕を持って進めるくらいの広さだった。
戦闘することを考えると狭いが進む分には問題ない。
そこからまた少し進むと大きな広間に出た。
「おおー!なんかすごいところに出た!」
「そうですね!ゼンくん!」
「ソーマ様、ここってなんでしょうか?」
「兄ちゃん、なんか座席みたいなのあるで?」
「にゃー!」
そう。
周囲が5mくらいの壁に囲まれ、その上に座席が並んでいる。
円形の壁に囲まれたここは明らかに闘技場だ。
コロッセオとも言う。
「闘技場・・・?という事は今度は何かと戦うのでしょうか?」
「そうかもね。」
「戦闘?僕がんばるよ!」
「うんうん!わたしも頑張りますです!」
「にゃー。」
シロがほどほどにな、なんて大人な対応をしている内に、反対側の扉がガコンガコンと開かれた。
「なんか出てきたで!」
「白いのがいっぱいだ!」
「真っ白ですます!」
「なんだかかわいいですね。」
「雪だるま?鏡餅?」
出てきたのはおそらくゴーレムだ。
石とか金属ではなく、三段の雪だるまのような形状に手足が生えた人形だった。
材質はよく分からないが表面がほどほどにつるりとしている。
遠目からでは硬いのか柔らかいのか分からない。
碁石のように硬そうにも見えるし、マシュマロのように柔らかそうにも見える。
なんとも不思議なゴーレムだ。
それが隊列を組んで扉から入ってくる。
ザッザッザッ!!
「うわぁ。すごいいっぱいだ。」
「いっぱいですー。」
「どんだけいんねん!」
ゴーレムのサイズは同じで、見た目もほとんど変わらない。
大きさは50cmくらいだろうか。
隊列の中にちらほらと色違いのスカーフを巻いている個体がいる。
リーダーか何かだろう。
真ん中の後方に他の個体よりもふた回りほど大きな個体がいる。
その頭には王冠のようにスイッチが鎮座していた。
アレを押せってか?
「数は100くらいでしょうか?」
「こっちの倍はいるね。」
「どんな攻撃をしてくるか分からない。慎重に行こう。」
「はい!」
俺は有り余る魔力を使ってすべての味方に攻撃力、防御力、速度強化の魔法を掛ける。
「よし。行くぞ!」
俺の掛け声と共にゼンが高速で突撃を敢行する。
シロとクロもゼンとは異なるルートに分かれて突撃した。
少し遅れて、イチもゼンの後ろに続いた。
あっという間に肉薄したゼン達に隊列を組んで対応する白ゴーレムたち。
白ゴーレムの短い腕がいきなり1m程にまで伸びてパンチを繰り出す。
どこのゴムだ。
「うわっ!」
すんでのところで避けたゼンは態勢を崩してしまう。
それを見逃す白ゴーレムではなく、態勢を崩したゼンに殺到してきた。
「ゼンくん!」
タタンッ!
サーシャの二丁練成銃が火を噴き、ゼンに殺到しようとしていた白ゴーレムに突き刺さる。
直撃した白ゴーレムは銃弾で弾き飛ばされ、背後にいた白ゴーレムを巻き込んでいった。
その隙にゼンはすぐさま態勢立て直し、再度の突撃。
だが、サーシャの銃弾に弾き飛ばされた白ゴーレムは無傷で戻ってきて、ゼンの突撃を受け止めた。
ゼンの双剣が身体にめり込んでいるが斬れている様子はない。
右サイドではシロが切り込んでいたが、魔力剣を展開しているにもかかわらず、白ゴーレムにダメージを与えられていなかった。
魔力剣が当たれば弾き飛ばすことは出来ているが、斬ることはできていない。
他にも陽炎の炎を浴びせたり、炎弾を飛ばしたりしているが、衝撃で吹き飛ばすことは出来ても燃やすことは出来ない。
ゼンの後ろに付けていたイチがゼンに気を取られている白ゴーレムに必殺の一撃をお見舞いする。
「はあぁぁぁあ!!」
ゴロゴロドッカーン!!!!
ものすごい音と土煙を上げて雷の闘気を込めたハンマーを振り下ろすイチ。
ゴロゴロバチバチ稲光を引いた強烈な一撃が白ゴーレムに直撃した。
「どうだっ!?」
石畳みにめり込んだ白ゴーレムは挟まって身動きが取れなくなったようだが、ジタバタと暴れている様子から大したダメージは与えられていないらしい。
一体どうなっているんだ。
「クロやんっ!!」
シロの反対側に突撃していたクロが大きく吹き飛ばされていた。
クロの巨体を吹き飛ばしたのは他のと同じ白ゴーレムだ。
しかも1匹。
「クロ!無事かっ!?」
「ブルルルー!!」
すぐに起き上がった様子を見ると大したダメージはなさそうだが、クロの巨体を吹き飛ばせるパワーは侮れない。
しかもイチの必殺の一撃でもダメージを与えることが出来ない。
剣や魔法も効き目が悪い。
「兄ちゃんどうするん?ゼンくんたち全く歯が立ってないで。」
「ですです。練成銃も魔法銃も全然効いてないないみたいですます。」
「ああ。イチのあの一撃でも無事みたいだしな。」
「魔力剣も効かないとなると手詰まりやん。うちの秘密兵器でも使う?」
「いや、、魔力剣が効かないんだから、あれも効かないだろ。」
「じゃあどうするですか?」
「あ!またクロやん吹き飛ばされた!」
「ゼンくんー!大丈夫ー!!?」
クロが再び吹き飛ばされ、ゼンも攻撃を避けきれずに吹き飛ばされた。
だが、どちらも大したダメージは受けていないようだ。
二人が吹き飛ばされる瞬間、白ゴーレムの手が光ったような気がする。
うーん。
ダメージが与えられない。
ダメージを受けずに吹き飛ばされる。
「つまり倒す必要はないのか。」
「どういうことや?」
「もしかしたら倒す方法もあるかもしれないけど、今の俺たちじゃあのゴーレムは倒せない。でもこの戦闘の目的はあのボスと思われるゴーレムの頭のスイッチを押すことだと思う。」
「あの青いスイッチか!」
「ですです!」
「どうにかして白ゴーレム軍団を躱して、ボス白ゴーレムのスイッチを押すんだ。」
「で、どうやってやるん?」
「どうにかして、だ!」
「ないんかいっ!」
目標が定まったので試行錯誤だ。
破壊はできないが衝撃は与えられるので、大きな爆発で吹っ飛ばして一気にボスに近づいてみる。
俺やシロを始めとした爆発系の攻撃が出来る者で一斉に弾幕をお見舞いした。
俺とシロは火魔法とスキルで爆発を発生させた。
他の魔猫たちも思い思いのスキルで弾幕をはる。
撃って撃って撃ちまくり、クロとゼンが一気にボスに接近した。
弾幕によって視界が悪くなった中に突撃したクロが魔法角を振り回し、更に道を切り開く。
「ブルルルルーー!!」
簡単に吹き飛ばされていく白ゴーレム。
仲間に当たってピンボールのように跳ね返る白ゴーレム。
そしてまた戻ってくる白ゴーレム。
「あ、兄貴!全然減らないんだけどー!」
ゼンもクロの背中で応戦するが跳ね回る白ゴーレムたちの動きは速く、吹き飛ばしてもすぐに復帰してくる。
まるで起き上がり小法師のように戻ってくる。
そういえば、起き上がり小法師は猫のおもちゃに最適だよね。
つつくと延々と動くから、ちょんちょんと触っては遊ぶんだよな。
そんなふうに思考が脱線してきたところで、クロとゼンが吹っ飛ばされて戻ってきた。
白ゴーレムたちは崩れた隊列を再びきちっと直して対峙する。
また最初からだ。




