140 一本橋クリア
ハッ!
ひどい夢を見た。
目の前を茶色い何かに埋め尽くされて押し潰される夢だ。
あたりを見回すとトリスタの町の英雄館の前だった。
みんなも一緒に横たわって意識を失っている。
デジャヴだった。
「うーん・・・。あれ?」
「ふわぁぁあ。ん?ここどこや?あれ?」
「ふみゅぅ。です?」
「にゃー。」
「ブルルル・・・?」
あれ?一人足りない?
「あっ!ゼン!」
ゼンをストレージリングに回収したままだったことを思い出した。
そしてあの悪夢も現実だった・・・、くそぅ。
「ゼン!無事かー?」
「わわっ!・・・。」
おっと?
ストレージリングから出したゼンはまだ縄に捕まったままだった。
そしてゼンは意識を失った。
縄が消えた。
「こうなってしまうんですね。」
「ああ。マジマジと見たのは初めてだな。」
「対策できる気はしいひんのやけど。」
「俺もだよ。とりあえず起こそうか。」
「ゼンくん!起きるですますよ!」
「んーん?あれ?ここどこ?縄が?」
「ゼンも起きたし、整理しようか。」
「はい。」
「なんであんな縄だらけになったんやろ?ゼン君が捕まったんは対策不足ってことでもまあ納得できんこともないけど、最後のあれは無茶苦茶やで。」
「そうですね。あの量は流石に魔法無しで防ぐのは難しいと思います。」
「じゃあ、どうするです?」
「最後のあれはペナルティと考えられるんじゃないか?」
「ペナルティ?ゼン兄が失敗したから?」
「イチ、俺に厳しくない?」
「普通ですよ?」
「・・・。」
「ま、まあゼンだけの失敗じゃないけど、そういう事だよ。橋を渡るのに失敗したら連帯責任なんじゃないかな。」
「連帯責任でアレはないでぇ。しかもここからやり直しってえげつないで。」
「まあでもあの入り口の外に放り出されるよりはマシだろう。町だし。」
「確かにそうですね。でもあそこに行くには転移しかないですし、また明日ですね。」
「そうだな。仕掛けがあれだけとは思えないし、長期戦を視野に入れないといけないかもな。」
「コツコツ分析しながら攻略やね。」
「ですです。」
「次こそは頑張るよ!」
「ああ。そうだな。じゃあ今日は残り時間は自由で!」
「やったー!」
「兄ちゃんお小遣いちょうだい!」
「駄目だ!」
「けちー!」
という訳でまた次回だ。
◇
「今日こそは、ですね!」
再びの一本橋に挑戦だ。
「今日はどうするんですか?」
「うち等も狙撃で援護しよか?」
「撃つです?」
「たぶんこれを考えた英雄は物理的な狙撃での援護を想定しているんだと思う。」
「そうですね。縄だから殺傷力もないし、弓矢でも落とせるでしょうし。」
「なら手数を増やして撃ち落とすん?」
「いや銃だと連射力と制圧力が低くて難しいよ。基本的に点での攻撃だし。」
「ならどないするん?」
「前回の検証でエナジーウィップは体に接触させていれば使えることが分かってるだろ?」
「そうですね。最後のは弾ききれませんでしたけど。」
「ああ。エナジーウィップも銃よりはマシだけど、線での攻撃だから制圧力が低い。ここで必要なのは面の攻撃手段だ。」
「ふむふむ。なら?」
「だからこうだ!・・・マジックシールド改!」
俺が呪文を唱えると俺の周囲にシールドが張られる。
普段使っているシールドは盾状のものを浮かべているだけだが、今回のは全方位仕様だ。
唯一、地面の中だけは対象外だが、地面とは隙間なく張られる。
地面の中にも張るとなると動けなくなるので改良が難しいのだ。
また、もう一つ普段のシールドとは異なるところがある。
「あれ?何で消えないのです?」
「こいつは全方位シールドをエナジーウィップで体と接続してあります。」
「ああー。そういうことかいな。単純やな。」
「単純だけど効果的ですね!流石はソーマ様です!」
「これならどんなに沢山の縄が飛んできても何の問題もない。という事で行ってきます。」
「はい!行ってらっしゃいませ!」
みんなに見送られながら、底無しの穴に架かった橋に足を踏み出す。
すぐさま黒い影が飛んでくるが全方位シールドに阻まれて穴に落ちていく。
縄がガンガン飛んでくるがシールドにぶつかるとパシッと音を立てて、ファサっと落ちていくのを繰り返している。
わっはっはっはー!
無敵である。
前回、ゼンが捕まった縄の嵐、もとい縄の壁も全方位シールドではじき返す。
壁のように埋め尽くされた縄だったが、厚みはそれほど無かったらしく、すぐに突き抜けた。
一瞬視界を塞がれるのが嫌な感じだが、なんとか突破できた。
ずんずん進み残り1m。
あと少しだ。
こういう時に予期せぬことが起きるものだ。
防げないような大岩が降ってくるとか、巨大な縄にシールド毎巻きつかれるとか、下から襲われるとか。
「おっと。」
「ソーマ様!」
「兄貴!」
考えていたそばから地面の中から縄が出てきた。
目の前から縄の壁が迫ってきたタイミングに合わせて地面から隠されていた縄が這い出てきたのだ。
想定していなかったらやばかった。
すんでのところで飛んで回避する。
縄の壁を力尽くで突破。
先ほどよりも分厚い縄の壁もシールドで弾き飛ばす。
「うらぁ!」
最後の跳躍で一気に橋を踏破、台座の上の青いスイッチを叩いた。
スイッチを押すまで次々と飛んできた縄がピタリと止み、残っていた縄たちも魔力の光を残して消え去った。
「クリアしたのか?」
「ソーマ様!大丈夫ですか!?」
「ああ!こっちは問題ない!扉は空いたか!?」
「兄貴!空いたよー!」
見ると先の扉を開いたゼンがこちらに手を振っていた。
どうやらスイッチが罠でしたとかは無いみたいだ。
中々に面倒な仕掛けだったが、これで先に進めそうだ。




