128 女神と報酬
案内されたのは食堂だった。
「ようこそおいで下さいました。さあ、おかけ下さい。」
まず声をかけてくれたのは、真っ赤なドレスに身を包んだ女神だった。
違った。
カレリーナ様だった。
俺たちはメイドさんたちに促されるまま席についた。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます。」
とりあえず、無難な挨拶をする。
「ふふっ。そんな畏まらなくてもいいですよ。公式な場でもないですし。まずは、紹介させて下さいね。こっちが・・・」
「カレリーナの父、ブラン・トリアストだ。娘を助けてくれて、ありがとう!何でも好きなものを言ってくれ!用意しよう!とりあえず100・・・」
「あなた?その話は後にしてくださる?私にも自己紹介くらいさせてくださいませ。」
「あ、いや、すまん。つい気が急いてしまって。」
「もう。すみませんね。この人、娘のこととなると常識をなくしてしまうのよ。」
「はあ。」
「改めて。私は母のパルメです。よろしくね。」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
「あら。かわいい子達ね。うふふ。」
カレリーナ様のご両親とご対面だ。
つまりはトリスタ市長夫妻ということになる。
市長であるブラン様は言っては何だが、普通の人だ。
中肉中背でカレリーナ様と同じ金髪。
他に特徴は無いが、優しそうな人ではある。
ザ・いい人。って感じだ。
母親のパルメ様を一言で表すなら"爆乳"だ。
今まで出会ったことの無いレベルのバストをお持ちだ。
神はここにいた。
ついつい見てしまった。
笑われてしまったが、イチとドーラとサーシャは自分の胸に手を当てて比べていた。
流石に比べるべくも無い。
世の中にはどうしようもないこともあるのだ。
「む。自己紹介はこのくらいにして食事にしましょ!お願い。」
「うふふ。」
カレリーナ様の合図で、給仕のメイドさん達が動き出し、次々と料理が運び込まれる。
おおぅ。コース料理ですか・・・。
「うまー!!兄ちゃん!これめっちゃ美味しいで!」
「ド、ドーラちゃんっ!落ち着いてっ!!」
「うまうまうまうま。イチも遠慮してないで食べろよ。うまいぞ!」
「もうっ、ゼン兄まで!」
「美味しい、です。」
「少しはサーシャちゃんを見習ってよぉ!」
テーブルマナーなど知らないお子ちゃま達だ。
こうなるのも仕方ない。
「元気があってよいな!子供はこうでなくては。」
「すみません。うちの子たちが騒がしくしてしまって。」
「いやいや。テーブルマナーなど気にせず、好きにやって下され。これはこちらの感謝の印ですからな。」
俺には愛想笑しかできないよ。
食事も終わり、今は食後のティータイムだ。
お子ちゃま達はあまりにも落ち着きがないので庭で歓待を受けていたシロとクロのところに行って貰った。
シロとクロも食堂から見える位置で何やら色々と与えられていたみたいだ。
クロの雄たけびが聞こえてきたから、喜んでいるのだろう。
「ほんとに騒がしくてすみません。」
「いやいや。さっきも言ったが気にすることはない。楽しんで貰えたなら何よりだよ。」
まじいい人である。
「この人ったら、子供が好きだから。町の孤児院にも1人で足を運んだりしていてね。それを娘まで真似しだして。」
「いや、だがな。兵を連れて行くと怖がられるから。」
「それなら、少しは体を鍛えたらどうですか?」
「ぬぬぬ。ま、まあ今はいいじゃないか。」
「また、はぐらかして。」
市長夫妻は仲が非常にいいようだ。
「もう、お父様もお母様も恥ずかしいからやめてよ。ソーマ様の前なのよ!」
「う、うむ。」
「あらあら。怒られてしまったわ。ごめんなさいね。」
「あ、いえ。」
ブラン様はわざとらしく軽く咳をしてから、本題に入った。
「ソーマ殿。此度は娘を救って貰った事、改めて礼を言う。ありがとう。」
「私からもお礼を言わせて貰うわ。ありがとう。」
「いえ、依頼を受けましたし、知らない仲ではないので、全力を尽くしたまでです。」
「いや。娘だけでなく、多くの兵たちも君たちの活躍で救われたと聞いている。北の森は魔物の生息数も多くて危険な土地だ。そこから多くの兵が無事に戻れたことは君の尽力のおかげだと思っているよ。」
随分と評価してもらっている。
確かにそこそこの魔物がいたけど、ブラッドタイガーを除けば、そこまで大したことはしてないと思うんだけど。
「報酬はギルドからも支払われると思うが、君たちには別に私からも報酬を出そうと思っている。とりあえず100万ほどだ。もっと欲しければ言ってくれ。いくらでも出すぞ。」
「お、お父様っ!?」
「あなた!?」
カレリーナ様とパルメ様が焦った声を上げた。
後ろに控えていたアルバートさんも焦り気味だ。
100万貨というと、1貨100円くらいだから、1億円だ。
冒険者に支払うような金額じゃない。
というか出せるのだろうか?
財政的にはあまりよくないって話だったと思うんだけど。
「何だ2人とも。娘の価値だとすればこれでも安いくらいだろう。」
「いえそういうことではなくて・・・。」
「だったら何だと言うのだ?」
ブラン様は心底わからない、という様な表情だ。
娘のこととなると見境が無くなるのだろうか。
「あの。ありがたいお話なのですが、流石にそれは頂き過ぎです。ギルドの依頼は他の方も動いていますし、私だけそんなに頂くわけにはいきません。」
「いやだが、娘を救ってくれた礼なのだから、これくらいは出さんと気がすまんのだが。」
「あなた。そもそもそんなお金、どこから出す気ですか?ちょっとは考えてください。」
「ぐぬ。いやしかし。」
「しかしもかかしもありません。ソーマさん、うちの人がすみません。お礼は差し上げたいのですが、流石に100万はちょっと。」
「いえ。わかります。」
「ほっ。ソーマさんが常識のある方でよかったわ。」
「いやだが、じゃあどうするのだ。」
「そうね。ソーマさん。何か欲しいものはありまして?こちらで用意できるものなら用意いたしますよ。
「えっと、じゃあ、品質の高いスフィアと小さ目のマジックバックがあればと思っているのですが。」
「ん?そんなものでいいのか?」
「はい。いくらか探したのですが町の魔法道具屋では見つけられなかったので。」
「ふむ。町では売っていないものなのか?アルバート。」
「品質の高いスフィアは一部のギルドで高ランク向けに販売されておりますが、流通数は少ないかと。マジックバックの方は小さいものですとそれなりの流通数はあるでしょうが、人気商品ですのですぐに売れてしまうか予約販売で無くなってしまうのでしょう。」
「なるほどな。どちらも流通数が不足気味、ということか。」
「はい。どちらも迷宮から産出されるものですので、特にこの辺りでは入手しづらいアイテムですね。」
そうらしい。
交通の要所であるこの町なら入手できると思っていたのだが、全然売ってないのだ。
お金があっても売ってなければ買えない。
どうしようもなかったわけだ。
「ふむ。ではその2つはこちらで用意しようじゃないか。出来るな?アルバート。」
「はい。問題ありません。」
「ということだが、いいかね?もっと言ってもいいんだぞ?」
「いえ。欲しいものが頂けるだけで十分です。金額ではありませんし。」
「うむ。」
ブラン様もなんとか納得したようだ。
この2つなら金額的にもそう大したことはないだろうし。
むしろ既に持っていそうだしね。
余は満足じゃー。
なんてね。




