127 お呼び
トリスタに戻って来てから、早くも一週間が経とうとしていた。
戻って来た当初は町中も浮足立っており、遠征は失敗したやら、被害がどうこうやら、資源の目処はたったのかなど、話題に尽きなかった。
今もまだ人々の話題に登るのは、これから町はどうなって行くかなどの井戸端議論だった。
とはいえ日が経つにつれてその熱も段々と治まり、一部を除いて騒ぎ立てるものは見られなくなっていった。
どこにでも騒ぎを大きくしようとする輩はいるものだ。
騒ぎが大きくなればなる程、武器や備蓄食料など売れるものは多い。
そういうアコギなことをしようとするものから、取り締まるべきなんだろうな。
関係ないけど。
コンコン
「あのー。お客様にお客様です。」
せせらぎ亭の部屋で寛いでいたら宿の使用人の女の子が訪ねてきた。
どうやら俺達に客らしい。
部屋は散らかってはいないが、応接室のようなちゃんとした設備が備わった部屋ではないので、どこか部屋を借りれないか聞いてみよう。
「どこか部屋を借りれないかな?ここだと流石に失礼かなと思うんだけど。」
「あ、それは別に構わないと言っておられましたよ。わざわざ移動してもらうお手間を取らせたら申し訳ないからって。」
「そうなの?まあでも、礼儀だし、借りれないかな?」
「はあ。それなら商人さん達に貸している応接間があるのでそちらを使ってください。今は使われてないはずなので。」
「じゃあ、そこに案内しておいてもらえる?」
「はい。分かりました。応接間は表玄関の近くになります。」
「分かった。ありがとう。すぐ行くよ。」
使用人の女の子に言付けを頼み、俺も準備する。
準備と言っても身なりを整えるだけだけど。
「誰やったん?」
「分かんないけど、応接間に案内してもらってるから、ちょっと行ってくるよ。」
「わたしも行きます!」
「じゃあイチも来て。そのままでいいから。」
「え!?わたしこのままでいいのですか?」
イチの普段着は白と淡いピンクで纏められた女の子らしいワンピースだ。
十分可愛いから問題ない。
「うちは?」
「ドーラはイチみたいな服に着替えたらいいよ。」
ドーラの普段着はオーバーオールにTシャツとかなりラフな格好だ。
普段から工作作業をよくするため、作業しやすい格好になっている。
人に会うのにはちょっとラフ過ぎる。
「じゃあさーちゃんと留守番してるー。」
「ああ。」
と言うことでイチを連れて応接間に向かう。
応接間にはいつぞやの執事さん。
カレリーナ様のお屋敷、つまりトリスタ市長のお屋敷の執事さんだった。
「突然押し掛けてしまい申し訳ありません。その上、移動までして頂きまして。」
「いえいえ。こちらこそ、わざわざ訪ねて頂いてありがとうございます。本日はどういったご用件で?」
始めは世間話からと言うのが上流階級や商人の間では礼儀とされているとか聞いたことがあるが、俺はどちらでも無いし、付き合っているとボロがでるので無作法だがさっさと本題に話を進める。
気にしなければ分からないくらいに微かに目を細めつつも、老練の執事さんは然程気にした風もなく話を進めた。
「ホッホッ、まずは自己紹介をさせて下さい。以前お話しを致しましたが、トリアスト様のお屋敷で執事をしておりますアルバートと申します。以後お見知りおきのほど。」
「これはご丁寧に。」
「先日はお嬢様をお救い頂き、誠にありがとう御座いました。遠征部隊の被害が抑えられたのもソーマ様のお陰だとか。重ねてありがとう御座いました。つきましては、ソーマ様ならびにお供の方もご一緒に屋敷の方で饗させて頂きたいと旦那様から言付かっております。」
「トリアスト市長から、ですか?」
「はい。旦那様はお嬢様のことを大変大事にされております。そのお嬢様をお救い頂いた方にどうしても感謝の言葉を贈りたいとも申しておりました。」
カレリーナ様の父親であるトリアスト市長からの召還命令、かな?
もしくはただ単に言葉通りの内容かもしれないけど。
なんにせよ、カレリーナ様にお近づきになれるなら行かない手はないよね。
「分かりました。お伺いさせて頂きます。」
「おお。良かったです。」
シロやクロも連れて行ってよいと言うことなので、みんなで行くことにした。
大丈夫かな?
◇◇◇
後日、みんなと一緒にトリアスト様のお屋敷を訪ねた。
「うわー。」
「きれー。」
「細かー。」
「・・・です。」
「みんな変な所に触らないでよ。壊したら大変だからね。」
「にゃー。」
「ブルルルー。」
今居るのは庭に面した応接室だ。
窓の外にはシロとクロが日光浴よろしく寝ていた。
くつろぎ過ぎだ。
ドーラを筆頭にみんなは部屋の中を物色中だ。
英雄館の要領で細かく見ているが、ここには仕掛けなんてない。
頼むから壊すなよ。
部屋にはメイドさんが案内してくれた。
本物のメイドさんに会ったのは初めてだ。
たぶん素材も良いのだろうが、メイドさん補正で非常に好ましい。
すばらーであった。
そんなバカなことを考えている間にお呼びがかかる。
応接室で歓迎される訳ではないらしい。
どう見ても高そうな物に囲まれて、正直気が気ではなかったので助かった。
美術品とかの価値はいまいち分からないんだよな。




