だが断る
その後、俺達は別室に通されて話し合いを行う事になった。と言っても俺は護衛の為に横に立っているだけだ。
「それでは、どうあっても大人しく領地を返す気はないと?」
メグリ王子がギャクギューに詰め寄る。
「くどい…メグリ、元々この土地は赤ヤオ族の物だったのだ、それを私達が取り戻した、何が悪い?」
テーブルに置いてある紅茶を飲みながら優雅に余裕を持って答えるギャクギュー。
こ、これがカリスマか…
「そ、それは、そうだったんでしょうが、前の領主のギューオン殿は納得してセントラル傘下についたのですよ?」
逆に王子は必死になっている役者が違うと言うことか…さすがは名俳優!
「フッ…その結果が暗殺され我々赤ヤオ族は土地を追われる身となったのだ!もうセントラル人には任せておけん!」
まあ、確かにね。
「リーブス王からも貴方を領主とすること赤ヤオ族の身分は保証すると言う念書を預かっています、で、あれば今のこの状態ととほとんど変わらないのでは?」
反乱を起こした相手に対してと考えると物凄く良い提案だと思う。
「悪くはない…だが、断る!」
行けると思ったメグリ王子は動揺している。
「な、なぜ?」
「メグリ…私は東部に住んでいた頃に製錬所の近くに住んでいた」
「それが何か?」
「フッ…あの辺に住んでいた時は咳込む事が多くてね、咳が止まらなくなり動けなくなる事もあった」
なるほど…確かに空気が悪かったな…
科学技術が発達していない、この世界では環境汚染なんて言葉も、まだ無いからな。
「それと、この話に一体何の関係が?」
「大アリだよ。私は南部に戻ってきてからは一度もその症状が出ていない、恐らくは煙から有害な物質が出ていて、空気を汚していた事が原因だ…」
「それなら区画整理して人が住む所と製錬する場所を分ければ…」
「それは、その場しのぎだ…人間に悪い物が海や土やそれらの上で生きる生き物にも良いはずはないだろう?それらは回り回って私達人間に帰ってくる、水を飲んだり魚を食べたりしない訳には行かないのだからね」
うーん、その通りだね…前の世界では人間がその事に気づいたのは何十年か何百年か掛かったんじゃなかったかな?ちゃんと勉強してなかったから知らんけど…
「そんな!鉱山から取れる鉱石のお陰で町や人は潤い、更にはその為に発達した鉄道等の技術によって人々の生活は豊かに快適になっているではありませんか!」
「ふむ、確かに便利に快適な暮らしにはなっている…その事に夢中になって気づいた時には大事な物を失っている、そうなってからでは遅いのだ!だから私はセントラルから独立する、それが理由だ!」
その後も暫くはメグリ王子が説得を試みるが、ギャクギューは首を縦にはふらない。
そしてギャクギューは立ち上がり、夕陽がさす面談室の窓へと向かうとブラインドから外を見ながら、俺達に背を向けたままで
「帰りたまえ、メグリ…私からセントラルに攻めるつもりは無いが、独立を認めないと言うのなら戦うまでだ」
「そんな…」
リーブスの話通りなら、ギャクギューはメグリの事が好きだったはず…面と向かっては言いづらかったのかも知れない、しかしメグリ王子はショックを隠しきれない様だ。
その時だった。
「ギューオン様!今、トーチ帝国の使者の方が参りました!」
な、何だって?!




