12、不良と
「必勝……か」
団地がクマを見ながら呟くと、その隣に居たいぐさも体を乗り出して覗き込んできた。
「なんかこれ持ってたら、大河のヤツらにも嬢嶋のやつらにもチョー勝てそうだな?!団地!」
「………あぁ」
団地はしばらく木彫りのクマを見た後、それをポケットにしまいこんだ。
確かに、これには妙な力がありそうな気がする。
そんな事を思う自分に、団地は内心苦笑した。
「あの子さ、笑えたんだねー。チョーびっくりだよ」
「そうだな」
確かに団地も、あの少女の最後の笑顔には驚いた。
それまで、あの子供はずっと無表情だった。
表情が動く事があっても、それは微かなものだった。
故に、団地もいぐさもあの後はしばらく動けなかった。
「また会いたいねー、あの子に」
そう、いぐさが少女の走り去って行った方向を見ながら、しみじみと言った。
「無理だろ」
団地は思いのほか躊躇う事なく出てきたその言葉に、自分で自分に少しばかり驚いていた。
しかし、口に出して改めて理解した。
そうだ、あの子供と会う事は二度とない。
住む世界が違い過ぎる。
「そーかなぁ」
「そうだ」
不満そうな声を上げるいぐさに、団地は自分自身に言い聞かせるように言った。
二度と会う事はない。
その通りだ。
しかし、団地の中にはモヤモヤした何かを燻ぶらせたような気持ちが焼け残っていた。
「あー!名前だけでも聞いとけばよかった!」
「……そうだな」
そう頷くと団地は、自分にまとわりつく奇妙な気持ちの隙間を振り払うようにバイクにまたがった。




