第五話 死体が埋まっている
また次の日も二人は夜の学校前で合流した。
「今日はどこ行くの?」
「お墓」
歩いて向かう途中、ユウは決意した。今日は絶対大人らしいところを見せつける。小学生に転がされてたまるか。
20分ほど歩いて、お寺の裏手にある、墓石の立ち並ぶ墓地に到着した。今二人がいる尾根道の右手には、斜面に沿って段々に墓地が広がっている。その奥に本堂が見えるが、本堂の正面を通る道はここよりずっと下にある。
「思ったより遠かったね」
「ここがいい感じに人通りも少ないからね」
「それにしてもここには何が出るの?」
「さあ、なんとなく不気味だから来ただけ。人魂でも出るんじゃない?」
駄弁りながら墓場を眺めるが何も動くものはない。ただ墓石と卒塔婆が並んでいるだけだ。
不意に二人の背後、狭い尾根道を挟んで反対側の森からガサガサと物音がした。
「なんだろう?」
振り返ると木々の中から黒いシャツの男が汗だくで飛び出してきた。二人が何も言えぬ内に男は駆け出して去っていってしまった。
「なんだったんだろう?」
「森の中になんかあるんじゃない?」
「行ってみよっか」
森の中には、男が飛び出してきた辺りから未舗装の道が延びている。一応は整備されていて、踏み固めた土に木を埋め込んだ階段があり、斜面には転落防止の柵も設けられている。当然、明かりは一つもない。
二人はスマホのライトを頼りに森に入り道を下った。
「さっきの人汗だくですごい焦ってたね」
「森の中になんか隠したんじゃない?もしくは急いでいただけか」
やがて木々の切り開かれた広場に出た。ここも当然舗装などされていないが、空が見え平坦で、看板にも公園とある。公園の反対側まで行くと今度は舗装された坂道があり、道路へと通じている。
「ありゃ森から出ちゃった。なんかあるとするならこの広場かな?」
「あれじゃない?」
レイが指差す先には、地面に突き刺さった園芸用のシャベルと、その周囲とは色の違う掘り返されたばかりのような土があった。
男が何か埋めた?あの焦りぶり、もしかして死体?
「どうする、掘り返す?」
ビクビクしながらユウが提案する。
「もちろん掘り返そう。俺が掘るから周り見てて」
「いや、私が掘るよ。レイが見てて」
ビビってちゃダメだ。大人らしく動かなければ。そう固く決意し、おっかなびっくりシャベルを引き抜いた。
踏み固められた地面じゃない、掘り返されたばかりだからサクサクと刃が入る。掘り進めるほどユウの顔色は悪くなっていった。
これもし死体だったら、掘り返して良いのか?当然警察に通報しなければならない。私は何て説明すれば良い?小学生のフリをしている成人無職です。レイとは数日前に知り合いました。今のところただの不審者だ。どうすれば良い?
やがて固いものに突き当たった。
「なんだこれ、箱?」
「ほんとだ箱、結構小さいね」
周りを掘り返すと煌びやかな装飾の施された小箱が現れた。
「宝箱だこれ」
「開けてみよう」
中にはキラキラとした宝石や指輪などのアクセサリーと、ヒーローフィギュアやグッズが詰め込まれていた。
「子供の宝箱かな?」
「シャベルで目印を残して、明日以降掘り返すつもりだったのかも」
「それじゃ埋め戻さなきゃ」
箱を元あった場所に戻し、土をかけながら二人は話す。シャベルを持つユウだけでなく、レイは素手で手伝った。
「じゃああの黒い男の人はなんだったんだろう」
「単に急いでたとか?」
「そうかも。人騒がせな」
元通りに埋め戻し、シャベルを突き刺す。二人の手は泥だらけだ。
「今日はもう帰って手洗ったほうがいいよ」
「そうだね、そうする。また明日会えるよね?」
「うん、また同じ時間、同じ場所で。いや、明日はちょっと遅く0時過ぎでいい?」
「いいよ」
話しながら二人は元来た未舗装の階段を登った。
友人と遊んだ帰りの十代の女が公園の前を通った。そこは森を切り拓いて作られた広場でろくに遊具もない。女のいる道から坂道を上るだけでなく、山の上から森を下っても来れる。
その広場の隅、二人の子供がうずくまって何やら土をいじっている。こんな時間に?気になって見つめているとやがて二人は立ち上がり、上の道へと向かった。
女が子供たちのいたところに向かうと、掘り返されたのか地面の色が周りと違う。何を埋めていたんだ?
女は刺さったシャベルを手に取ると土を掘り返した。手が汚れるのは仕方がない。やがて固いものに突き当たった。掘り返すと箱だ。開けると中には子供のおもちゃが入っていた。なんだ、そんなことか。いやなんでこんな時間に。
女は急いで埋め戻す。もしかしたらあの二人はお化けかもしれない。自分たちのおもちゃをここに隠したのだ。そんな妄想に取り憑かれて忙しなく土をかける。大方元通りになったところでシャベルを刺し、急いでその場を離れた。




