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留守番中の妹が兄のバ美肉アバターで配信を始めた結果、裏で最強の大人たちが命がけの防衛戦を繰り広げていた件  作者: マコPON


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8/11

第8話 兄の野望【スパチャ解禁】

第8話です! お読みいただきありがとうございます。

前回、お母さんの降臨によって引き起こされた、伝説の「集団幼児退行(バブり)事件」。

そして、スイスで電波が繋がり、自分の検索履歴とメスガキ台本が全世界に公開されたことを知ってしまったお兄ちゃん。

理想のバ美肉デビューの夢を絶たれた彼が、次に取った行動とは……?

リスナーと三闘神による「容赦のない制裁」をお楽しみください!

「……終わった。俺の『バ美肉計画』、完全に終わった」

スイス・アルプス山脈を走る登山鉄道の車内。

雄大な大自然の絶景を背景に、大学生の蒼太(そうた)は、文字通り真っ白な灰のように燃え尽きていた。

スマホの画面には、SNSで拡散されまくっている『バ美肉お兄ちゃんのヤバすぎる検索履歴まとめ』や、『自分専用メスガキASMR台本(全文)』のスクショが踊っている。

そして極めつけは、昨夜の『ママ降臨で2000人が幼児退行した神回』の切り抜き動画だ。

(顔や本名が割れたわけじゃない……。だが、俺が親に泣きついて買ってもらった数十万の機材で作り上げた理想の美少女『姫ヶ崎ロゼ』が、完全に「哀れな変態兄貴のオモチャ」として定着しちまった……!)

おまけに、母親が配信に降臨したということは、最悪の場合、親に「息子が夜な夜な美少女のガワを被って耳舐め配信をやろうとしていたこと」がバレる可能性すらある。

(もうこのアカウントで、真面目に可愛い声を出してデビューすることなんて絶対に無理だ……。実家での肩身も狭すぎる……)

絶望の淵に沈んでいた蒼太。しかし、彼の目にふと、MeTubeのアナリティクス(分析)画面の「ある数字」が飛び込んできた。

【現在のチャンネル登録者数:98,400人】

【総再生時間:収益化条件をクリアしました】

「……え?」

蒼太は、ピクッと眉を動かした。

登録者10万人手前。それはもはや立派な人気配信者の仲間入りであり、MeTubeから栄誉ある『銀の盾』が贈られるライン目前ということだ。しかも、同接数千人を叩き出す熱狂的なファン(モブリスナーと三闘神)がしっかりと定着している。

「これ……『スーパーチャット(投げ銭)』の設定、オンにできるじゃん……」

蒼太の瞳に、ギラリとした暗い欲望の火が灯った。

美少女としてチヤホヤされる夢は死んだ。だが、その代償として、彼のチャンネルは今、凄まじい熱量を持った「金のなる木」に変貌していたのだ。

「……ふふっ。ふははははっ! いいさ、笑わば笑え! 変態バ美肉お兄ちゃんとでも何とでも呼ぶがいい! 可愛いバ美肉デビューは無理でも、この大バズりに便乗してお前らから搾り取った金で、スイスの高級ホテルで一生豪遊してやる!!」

完全に開き直ったクズ兄貴は、スイスの車内から遠隔操作で、自身のチャンネルの『収益化(投げ銭機能)オン』のボタンを、力強くタップしたのだった。

***

日本時間、夜の8時。

『あ、あー。てすと、てすと! 妖精さんたち、きょうもいるー?』

親のいない静かなリビング。陽菜(ひな)はすっかり日課となった「魔法のゲーム」を起動し、無邪気な笑顔でカメラに手を振っていた。

【モブリスナーA】:ロゼ姫キターーーー!!

【モブリスナーB】:今日も可愛いよ!!

【ぽかぽかさん】:お姫様! 今日もお留守番えらかったな!!

【るーるくん】:法廷の疲れが浄化されていきます……。

【ぱそこんさん】:……システム正常。今日も最高だ。

昨日のお母さん降臨(バブり事件)の影響もあり、待機枠の時点ですでに同接は3000人を突破していた。

そして、配信が開始された直後。リスナーたちは、チャット欄の右下に「¥(お金)」のマークが出現していることに気がついた。

【モブリスナーC】:おい! スパチャ(投げ銭)が解禁されてるぞ!!

【モブリスナーD】:うおおおお!! 昨日のお礼だ!! 受け取れ!!

【モブリスナーE】:ママへの養育費だ!! 俺のボーナスを持っていけ!!

チャット欄が、一瞬にして赤、黄色、緑といった「高額スパチャ」のカラフルな帯で埋め尽くされていく。

1000円、5000円、中には上限額の5万円(通称:赤スパ)を迷いなく投げ込むモブまで現れた。

画面がカラフルに光り輝くのを見て、陽菜はパァッと顔を輝かせた。

『わぁぁ……! なにこれ、すごい! 魔法のキラキラがいーっぱい飛んできてる! 妖精さんたち、すごい魔法つかえるんだね! ありがとう!!』

自分が数万円単位の現金を投げつけられているとは露知らず、無邪気に喜んで拍手をする9歳の少女。

そのピュアすぎる反応に、限界リスナーたちはさらに財布の紐を緩め、チャット欄はもはや札束の殴り合いの様相を呈していた。

***

『うおおおおお!! 飛ぶぞ!! 金がじゃんじゃん飛んでくるぞ!! 妹よ、もっと笑え! もっと「キラキラありがとう」って言え!!』

スイスの山奥。

蒼太はスマホの画面に表示される『推定収益額』が、数分で数十万、数百万単位へと跳ね上がっていくのを見て、よだれを垂らしながら狂喜乱舞していた。

『勝った……! 夢は失ったが、俺は億万長者だ!!』

しかし、そんなクズ兄貴の野望を、最強の大人たちが見逃すはずがなかった。

***

日本のセキュリティ企業、サーバー室。

ハッカーの結城零(ぱそこんさん)は、急激に跳ね上がるスパチャのログを監視しながら、氷のように冷たい目をモニターに向けていた。

「……お姫様(陽菜)自身には、収益化の設定をいじる技術も知識もない。……ということは」

ゼロは、MeTubeのサーバーと兄のアカウントへのアクセスログを、裏ルートから強引に解析する。

「……ビンゴだ。数時間前、スイスのIPアドレスから収益化設定がオンに変更されている。……あの兄貴、陽菜ちゃんをダシにして荒稼ぎするつもりか」

お姫様の無邪気な笑顔を、金儲けの道具にする。

三闘神にとって、それは万死に値する重罪だった。

ゼロは即座にキーボードを叩き、チャット欄に「アンケート機能」を利用したシステムメッセージを固定表示させた。

【ぱそこんさん(アンケート)】:『リスナーの諸君に問う。今、裏で兄貴が遠隔操作でスパチャを解禁し、私腹を肥やそうとしている。この資金の使い道として、最も適切なものはどれか?』

 ① スイスにいる兄貴の豪遊資金

 ② お姫様(ロゼちゃん)のケーキ代

 ③ 全額、国際的な子ども支援基金(世界の子どもたち)へ募金

突然出現した謎のアンケートに、スパチャを投げていたモブリスナーたちが一斉に反応した。

【モブリスナーF】:は!? 兄貴が裏で金回収しようとしてるのかよ!!

【モブリスナーG】:許せん!! 絶対に③だろ!!

【モブリスナーH】:②も捨てがたいが、お姫様の純真な心をお金で汚したくない。圧倒的③!!

【ぽかぽかさん】:①に投票した奴は、俺が全員ポカポカにする!! 当然③だ!!

『……あれ? 妖精さんたち、魔法の四角いのが出てるよ? なんだろうこれ。わぁ、③の棒が、ぐんぐん伸びてる!』

陽菜が無邪気に笑う中、アンケートは開始わずか10秒で【③ 全額募金:99.9%】という圧倒的な結果を叩き出した。

【ぱそこんさん】:『民意は示された。るーるくん、法的な見解は?』

【るーるくん】:『未成年者の無自覚な労働力を搾取し、不当な利益を得る行為です。口座の凍結および、慈善団体への全額寄付の手続きは、倫理的にも法的(※三闘神ルール)にも完全に妥当であると判断します』

【ぱそこんさん】:『了解した。……システム書き換え(ハッキング)、実行』

ゼロのエンターキーが、ターンッ! と小気味よい音を立てる。

瞬時に、兄のアカウントの「収益振り込み先口座」の設定が上書きされ、スパチャで得た数百万円の金は、文字通り『世界の子どもたちを救うための募金口座』へと強制的にリルート(自動送金)される設定に変更された。

【モブリスナーI】:ぱそこんさんマジでやりやがったwww

【モブリスナーJ】:史上最も有意義なスパチャww

【るーるくん】:ええ。皆さんの善意は、世界中の困っている子どもたちのために、一円の狂いもなく使われることでしょう。

【ぽかぽかさん】:ガハハ! これで兄貴も少しは罪滅ぼしができたってもんだ!!

『わぁ、魔法のキラキラ、せかいのお友達のところに飛んでいくの? すごいね! 妖精さんたち、とってもやさしい! はなまる!!』

陽菜は、何が起きているのか全く理解していないまま、画面に向かってニコニコと満面の笑みで拍手をした。

3000人のリスナーたちは、自分たちの投げたお金がすべて没収されたにもかかわらず、陽菜の「はなまる」をもらえたことで、大満足の笑顔を浮かべていたのだった。

***

「な……ッ!?」

スイスの高級レストラン。

スパチャの儲けを皮算用して、特上ステーキと高級ワインを注文し、ふんぞり返っていた蒼太のスマホ画面。そこから突然「推定収益:3,200,450円」の数字が消滅し、『収益の全額を国際的な子ども支援基金へ自動送金しました』という非情なメッセージが表示された。

「うそ……だろ……? 俺の、俺の金がァァァァァァァァ!!!」

蒼太の絶叫が、スイスの夜空に響き渡る。

店員が怪訝な顔で持ってきた高級ステーキの代金をとりあえず払うため、蒼太は震える手で『お父さんの家族カード(クレジットカード)』を差し出した。

しかし、端末に表示されたのは『DECLINED(利用停止)』の赤い文字だった。

「……は? 嘘だろ、親父のカードだぞ?」

直後、蒼太のスマホに一件のメッセージが届く。

送り主は、海外出張に出ているはずの父親からだった。

『父さんより:

 少しでもお前の「引きこもり癖」を直そうと、高い金を出してスイスに送り出してやったというのに。SNSを見たら、高級レストランの写真を上げているな? 人の金だと思って豪遊するなど、けしからん! 頭を冷やせ! 家族カードは当分、利用停止にしておく』

「あ……」

すべてを悟り、蒼太は真っ白になった。

両親は、部屋に引きこもって美少女アバターなど作っている息子を心配し、荒療治として「男磨きの世界一周の旅」の資金を出してくれていたのだ。

しかし蒼太は、現地で親の金を使ってステーキを食いながら、遠隔操作で小銭(スパチャ)を稼ごうとしていた。それが父親の逆鱗に触れたのだ。

蒼太は真っ青になりながら、自分の財布をひっくり返した。

中に残っていた「なけなしの現金(スイスフラン)」をかき集め、テーブルの上の小銭まで総動員して、なんとかギリギリでステーキの代金を支払う。

店を追い出されるように出た彼の手元には、もう一円の現金も残っていなかった。

「ふ、ふざけるな……!! あの謎のモデレーターども、俺のチャンネルを乗っ取った挙句、稼いだ金を全部募金しやがった……!! そのせいで親父にはカードを止められるし、全財産スッカラカンじゃねえか!!」

夜の冷たい風が吹くスイスの道端で、蒼太は血走った目でスマホを握りしめた。

このままでは、物価のバカ高いスイスで野垂れ死ぬしかない。今すぐ日本に帰って、陽菜からパソコンを取り上げてやりたい。

……だが、待てよ?

蒼太の脳裏に、悪魔的な閃きが走った。

(今すぐ帰国したくても、そもそも飛行機の予約変更をする手数料すらない。おまけに親父にも大目玉を食らう……。だが、銀盾(登録者10万人)目前のこのチャンネルを、ほとぼりが冷めるまで陽菜に任せておけば、あのヤバいモデレーターたちが勝手に俺のチャンネルをメガトン級に育ててくれるんじゃないか?)

そうだ。今は耐える時だ。

ここで異国の地のサバイバルに耐え抜き、ほとぼりが冷めた頃に日本へ帰還すれば、数万人……いや、数十万人規模の超大型チャンネルがタダで手に入るのだ!

「ふはは……見ていろよ。今は好きにさせてやる。だが最後に笑うのは、創造主であるこの俺だ……!!」

社会的尊厳を失い、異国の地で完全に無一文となった哀れな引きこもり兄貴は、未来の栄光のため、街角の掲示板に貼られた『アルバイト募集(皿洗い)』のチラシを涙を流しながら見つめ、サバイバル生活を決意したのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第8話、いかがでしたでしょうか。

尊厳を失って開き直った引きこもりのお兄ちゃんに対する、リスナーと三闘神からの非情な制裁(アンケート)でした!(笑)

ぱそこんさんとるーるくんの「未成年の労働力の搾取は許さない」という、正論のような理不尽ハッキングからの全額募金コンボ、最高にスカッとしますね。

さらに、親のお金で豪遊しようとしていたことがバレて、お父さんからカードを止められるという見事な自業自得。

なけなしの現金でなんとか支払いを済ませて無一文になったお兄ちゃんですが……なんと、10万人目前に育ちつつあるチャンネルを自分のものにするため、まさかの「スイスでのバイト探し(サバイバル)」を決意しました。彼の逞しさだけは一級品です。

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