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95/131

95-宣言

「カ……カルラさん……お待たせしました~……」


そう言いながらイチがカルラの部屋に上がってきた。本日の分の地下での労働と修行を終えた後なので背は曲がって脚はふらふら、ほとんど千鳥足である。


「お、来たね、イチくん♪待ってたよ~。さあさあ!その椅子に座って♪」


「つ……疲れたァ~」


そう言いながらカルラの勧める椅子に倒れこむかのように座るイチ。座った瞬間に血が脹脛に集中していく感じがして、まるで根っこが生えたみたいに椅子から立ち上がれなくなる。同時に瞼が重くなり、


「(用事が無かったらこのまま眠ってしまいそうだ!でも用事を聞く前に眠る訳にはいかないので要件を済ませてしまわねば……)」


そう思いながら声を上げるイチ。


「それでカルラさん……要件はなんです⁈可能ならすぐにでも寝たいのですが……」


「うん♪ちょっとイチくんとイイ事したいと思ってね~♪」


「え⁈イイ事って⁈」


イチがそう聞き返した瞬間だった。


ずしっ


「えっ⁈」


いきなりカルラさんが脚を広げて座っているイチの太ももの上に跨って座ってきた!俗に言う対面座位の体勢だ!


「わ⁈わわわわわわわわ⁈」


「大丈夫よォ~力を抜 い て♪」


いやいやいやいや、何が大丈夫なのだ⁈この体制で大丈夫な事なんて何一つないぞ⁈リコたちにこんな所見られたら……!急な展開とリコの怒った顔が浮かんだのとカルラさんの肌の柔らかさで一気に目が覚めるイチ。


「はいは~い♪お 手 手 を出して~♪」


そう言いながらイチの両手を上げさせると、カルラさんはイチの指に己の白魚のように美しい指をねっとりと絡ませてきた。うわっ!恋人つなぎだ!


「わ!わ!わ!わわわわわわ⁈何ですかいきなり⁈」


そう言いながらも、疲れと……あと、気持ちよさで身体が全く動かないイチ。おまけに桃の様ないい香りがしてきて頭がぼーっとしてきた。


「んっふっふ~♪首筋見せてね~♪」


カルラさんはそう言うと首筋に口づけをしてきた、くすぐったい。

ああ、もうどうなっても良い、そんな気持ちになってきたその時、


すううううううううう。


何か体内の精が吸われた感じがした。軽い脱力感と同時に脳内に水分を注入されたような感覚が訪れ、人体の構造図のようなものが流れてきた。


「(な……なんだこれは⁈骨⁈内臓⁈にしてはカラフルと言うか、変わった色をしているような……⁈)」


イチが混乱していると。


「この辺で良いかな⁈はい!お疲れさま~♪」


そう言いながらカルラさんはイチの膝から離れ立ち上がった。


「(あ、もうちょい乗っていて欲しかったな……いや、そうじゃなくて!)」


「カルラさん!今のは何ですか⁈」


ピンク色の感情に支配されそうになりながらも、慌てて意識を戻してカルラさんに質問するイチ。すると、


「頭の中に人体の構造図みたいなの入ってきたでしょ⁈それアタシからのプレゼント♪その知識があれば回復魔法を使った時に、身体のどこがダメージ受けているのとか、どこに回復を集中させればよいのか?とかが分かるようになるからね。イチくん、回復魔法そんなに得意じゃないでしょ⁈役に立つよ~♪」


「え⁈」


そう言われて試しに自分の身体に回復魔法をかけてみようと、自分の胸に手を当ててみるイチ。すると、自分の身体の内部構造みたいなものが脳内に浮かび、内臓や骨が色分けされているのがわかった。濃度は違うけど緑色と黄色と赤色、大まかにそれら三色に分かれており、脹脛と内臓は特に深い赤色だった。


「赤い所がダメージがデカい所だよ。そこに回復魔法を集中的にかけてごらん⁈」


「あ、はい」


言われた通り脹脛と内臓に回復魔法をかけてみる。すると、両方とも 赤→黄→緑 と色が変わりそれに合わせて身体がどんどん羽根のように軽くなるのがわかった!そして内臓が回復したのに合わせて、


ぐ~


腹の虫が鳴きだす。急激にお腹が空いてきた!


「疲れすぎるとお腹も空かないからね。今食べれば回復量は段違いだよ⁈イチくんはアタッカーだけど強めの回復要員が増えれば、他の回復担当の子が……え~と、リコちゃんだよね⁈彼女の負担が減らせるよ⁈」


「あ……ありがとうございます!これは本当に助かります!……でも」


さっき跨られて肌を合わせた瞬間に分かってしまった。


「カルラさん……内臓ボロボロですね」


「あっはっは~そりゃバレるよねえ♪まあ114歳だしねえ⁈でも平気平気♪まだまだ元気だよ~♪」


ケタケタ笑うカルラさん。でもなんとなくわかった、この口調の時のカルラさんは本音で喋っていない。


「この世界の事はわからないのですけど、自分の世界のファンタジーの物語には長い時を生きる長命種というものが出てくるので……カルラさんもそういう類の人間だと思っていました。でも貴女は……」


「アタシは普通の人間だよ。ただ『魂の蘇生結晶(レイヤール)』の研究をしていてそのエネルギーを間近で浴び続けていたから歳を取りにくくなっているだけさ。でも確実に体内は歳をとっていくんだよ。だからどこかでエネルギーを摂らないといけない」


「もしかしてカルラさんも……『魂の蘇生結晶(レイヤール)』で他人の魂からエネルギーを……」


「アタシはそれをした事は一度も無いよ。他人の命を奪ってまで長生きしたいとは思わないサ。アタシは若い子と肌を合わせればエネルギーを得られるからね」


それを言った後カルラさんは悪戯っぽくニヤ~と笑いながら、


「まあ、さっきイチくんからもエネルギーを少し貰ったよ♪知識の代金としてだから見逃してね♪ちなみに男女の営みをやると凄い量のエネルギーが得られるんだよ~♪もし良かったらア タ シ と一戦どう~♪」


ケタケタ笑うカルラさん。しかし、イチは笑わない。


「カルラさんは人間の魂を使って竜人を若返らせているから『魂の魔女』という悪名を引き受けている、と言ってましたよね」


「うん、そうだよ~♪」


「それだけじゃないですよね⁈なんとなくですけど……オリオンの魂を……先生の意志を継ぐ者だと言う決意表明のつもりでその肩書を名乗っている気がするんですけど」


「考えすぎだよ~イチくんってば♪」


軽く茶化すカルラさん。でもイチは笑わない。それを見てため息をつくカルラさん。


「なんでわかっちゃうのかなあ……君、それを口にする事は賢い生き方じゃないんだよ……」


「何かを背負っている人間は……なんとなくわかります」


「あーあ、イチくんもこっち側の人間になっちゃったか……ばかだねえ、本当にばかだねえ……でも好きだよ」


そう言いながら、カルラさんはイチの顔に己の顔を近づける。

吐息がかかる、心臓の音まで聞こえそうだ。

そのまま真っ直ぐに、透き通るような瑠璃色の瞳でイチを10秒ほど見つめ、


「この世界にきた勇者って事は、何か望みがあるんだよね⁈イチくんは何を望むの⁈」


そう呟いた。


「それは……」


イチは、ここに来るまでのいきさつを話した。姉の子供を生き返らせたい。そのためには『魂の蘇生結晶(レイヤール)』が必要だと言う事や、ただ、この世界にも守らねばならない人たちができたため、その人たちも助けたいという事も。その腹の中に溜めていた気持ちを全部伝えた。


カルラさんは全部を聞いた後、ゆっくりと目を閉じて少し考え事をしていた。

そして、口を強く閉じ、何かを決断した顔をしながらイチを指さし、


「うん、決めたわ!イチくん!」


「は……はい」


「貴方をアタシの31番目のパートナーにするわ!良いわね!」


いきなり力強く宣言してきた!



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