90-戦士団
しばらくしたらリコたちも目を覚ました。
疲れと、団子の回復効果の副作用のせいかかなり眠そうで、ゲス郎なんて二度寝に入ろうとしている。緊張感ないな!
その姿を見て、
「よほど疲れていたんだね、本当はもう少し寝かせてあげたいんだけど、これから竜人たちと戦うための作戦を話すから起きていてもらえるかな⁈」
カルラが真面目な顔をしながら話しかけてきた。その表情を見て事態を察知した皆は慌てて背筋を伸ばす。
「良いね、じゃあ話すよ。その前に戦うために必要な大前提があるんだけど……」
そう言いながらイチの方を見るカルラ。
「さっき力を見せてもらったけど……念のため確認するね⁈イチくん『重力制御』は使えるよね⁈」
「あ、はい使えます。あまり得意じゃないですけど」
「よし、じゃあ土人形の作りかたはシリウスに学んだ⁈」
この質問は!……と言う事は!
「……はい!教えてもらいました!」
「うっふっふ~♪よし、第一段階はクリア!」
カルラはまたお気楽お姉さんみたいな口調になっていたが、よく見ると少しホッとした顔をしている。手元を見ると拳を握りこんでいた、かなり嬉しそうだ。
それより『重力制御』が使える事はさっき確認されたけど、最初に土人形の作り方を聞いてきたと言う事は……!
「やはりシリウスさんが『重力制御』を無理矢理僕に教えたのは、戦いの幅を増やすためだけじゃなかったんですね!」
「当たり!もちろん戦いの役にも立たせるつもりもあったと思うけど、一番の目的は土人形を作らせるためよ!『重力制御』で作った土人形じゃないと魔力が隅々まで通らないのよ♪普通の手作りの土人形でもイケない事はないんだけど、その場合は動きが重くて戦力としてはね……。血肉が通った生き物みたいな動きにするにはどうしても『重力制御』で作った土人形じゃないといけないのよね♪」
「(やっぱりそうか!シリウスさんはそれであんなに必死で教えてくれたんだ!あんなに覚えるの嫌がってすみませんでしたー!)」
イヤイヤやっていた重力制御の特訓を思い出しながら心の中で土下座するイチ。
その姿を興味深そうに見ながらカルラは続ける。
「じゃあ、二つ目ね。話は通っていると信じているけど……『迎え石』は持ってきている⁈」
「はい!あります!」
そう言いながら『大貨物船』を起動する。イチの頭上に蔦のような植物が絡まった金属製の小さな扉が出現したかと思うと、大きな布袋が放出された。砕いた迎え石を入れた袋だ。
おそるおそる布袋を開き中身を確認するカルラ、そして、
「まだ……こんな質の良い『迎え石』が竜人に奪われる事無く残っていたんだ……良かった……本当に良かった!」
嬉しそうな声を上げた。
「ありがとう、森の民の皆さん、そして先生!……大事に使います!」
涙声で言い、天井を少し仰ぎ見るカルラ、そして改めてイチの方に向き直し、続けた。
「三つ目、これが最後。変な質問をするけど良いかな⁈確認したいんだけど……イチくんはここまで来る間に……光る虫とか……さまよう感じの魂みたいなものとかを見た事ある⁈」
真剣な目をするカルラ。え……魂⁈
その瞬間だった。
脳内に、森の民の戦士たちの墓場で出会った光る虫や、グミルの森の中で案内をしてくれた魂の様な者たちが浮かんだ!
「……あり……ます!はい!あります!」
「やったー!条件は揃った!」
大喜びするカルラ。この流れは!
「土人形を動かすには迎え石が必要なんですよね⁈じゃあもしかして狙いは!」
イチがそう言いかけると、
「そんな事まで知っているんだ!良かった!話が早いわ!うん、アタシの狙いは大量の迎え石を入れた土人形による兵士を作って竜人たちに対抗する事なんだ!土人形を動かすには迎え石に戦士の魂を入れる必要があるんだけど……これだけあれば!」
そうだ、迎え石に誰かの魂の様なものが入っているのかもと言う考えはあった。
でもそれなら気になる事もある。
「前から気になっていたのですけど迎え石ってそう簡単に魂がホイホイ入ってくれるようなものなのですか⁈こちらで狙った魂を掴んで入れるとかの作業が必要だったりはしないのです⁈」
「魂を掴んで迎え石にエイヤッって入れることは出来ないよ。戦う意思がある人の魂に語りかけて自発的に入ってもらう必要はあるかな⁈だから魂が見えたり話したりする人員がいるんだ。アタシは出来るけどもう何人か欲しかったんだよね。イチくんができるならアタシじゃ説得出来ないタイプの魂もイケる!」
え⁈土人形に入る魂は説得したりして入ってもらう必要があるって事なの⁈これは少し苦労しそうだぞ⁈
そんな事を考えながら別の心配も浮かぶ。魂の質だ。
「あの……そんなに戦える魂っているものなのですか⁈なんとなくですけど生前戦士だった人とかじゃないとメチャ強い竜人兵と渡り合えるかどうか怪しいのですけど……それとも、普通の強さだった人の魂でも、死後は凄く強くなってたりするとかあったりします⁈」
モモさんを思い出していた。モモさんはおそらく生前は相撲をやっていただろうから、張り手やけたぐりなど戦う技術も持っていた。一般の人の魂じゃそうはいかないだろう。
そう思っていたらカルラはニヤリと笑った。
「この世界には竜人たちに殺されてさまよう魂になった人たちがいるんだ。『魂の蘇生結晶』で竜人たちの若返りのエネルギーにされてしまった人たちも、さまよう魂となって漂っている。今までに何人くらいの人達がエネルギーにされてしまったと思う⁈」
「もしかして……1000人くらいは殺されてしまっています⁈」
「そんなもんじゃないよ、若返りのエネルギーに必要な人間の魂は多いんだ。この100年で50万人くらい殺された」
「そんなに⁈」
「そうさ、でもほとんどが戦えない一般の人たちだよ。でも100人に1人くらいは強い人はいる。そして100年前の強い戦士たち。そして魔道具にされた人たちの中からも戦う意思のある人はいるはず!」
その時頭の中に呼びかけても返事をしなかった魔道具の中にいたはずのカセーツさんたちの事が思い出された!
「そうか……それでみんな……!と言う事は!」
「そう!上手くいけば……5000人くらいの強者の土人形の戦士団が作れる!竜人たちに勝てるんだ!」
カルラは目を輝かせながら呟いた!




