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129-会談

 それからすぐに各領主や有力者との会談が始まった。


「……そう言う訳でして、どうかわたしたちと一緒に戦ってもらえませんか⁈」


「……このままだと、人類はすり潰されます。ここが勝負の分かれ目です。どうか手伝ってください!」


 リコやフォレスタが必死で説得を続けている。最初の方は焦り気味の話し方だったが、長や社長にアドバイスされて、途中から、気持ちが伝わるような抑え気味の声のトーンに調節して喋っているのがわかる。


「(本当は長や社長が前面に出た方が大人に舐められなくて良いのだろうな。特に長は見た目も強そうだし事実腕っぷしもあるのだけど、気が短いのでケンカ腰になってしまうんだよなあ。社長は落ち着いた雰囲気もあり説得力がある会談をこなせるのだけど逆に勇者としての実績と腕っぷしが足りない。俺も年齢が若いから説得力なさそうだし……参ったなあ)」


 シリウスさんが生きていれば……と暗い気持ちになるイチ。結果的にリコとフォレスタが頑張るしかないのにやきもきする。だが幸か不幸か、この若い女の子二人が必死で竜人と戦っている姿が一部の領主に響いたらしく、想像以上に親身になってくれる人もいた(勿論舐めて来る人もいたけど、その場面では長が後ろで圧をかけてくれた)


「(それにしても……ライミの仕掛けていたアンテナが想像以上に多くて驚いたな)」


 会談したい相手の殆どと通信する事ができた。どうしてこんなに⁈と思っていたら、どうやらシリウスさん達が作った勇者ネットワークのお陰らしい。そのお陰で沢山の人間の有力者たちと話ができたし、社長や森の民の長、そしてカルラさんの手助けもあって会談自体はかなり好感触だった。特にカルラさん情報の『嘘偽りのない竜人の狙いや泣き所』については全員がかなり興味を持って聞いてくれた。


 だが……


「話の内容はわかった。何とかしたい気持ちはあるが、すまないが協力はできない」


「ただでさえウチの領は目をつけられている。動けない。申し訳ない」


「リコくん。君のお父さんとはよく話をしたから何とかしてあげたいのだが……すまない」


 残念ながら、ほとんど良い返事は貰えなかった。


 協力を約束してくれたのは3領。様子見が31領。断ってきたのが12領。力の大きな領は全て断ってきた。しかも協力を申し出てくれた3領は竜人への上納金の滞納でおそらく来年には取り潰しが確定している弱小領で、半分ヤケなのか、一発逆転に賭けているのか、皆、妙に鼻息が荒かった。そのうちの一人は長以上に気の短そうな老領主で『あのクソ竜人どもを挽肉にしてやれる日が来るとはな!この日を待っていた!なんなら今すぐワシ自ら武器を持って馳せ参じるぞ!ガハハ!』と豪快に笑っていた。嬉しかった……がワーミ領並みの弱小領らしく、後で長が『息子の方と話をしたかったのだが……あの爺さん危ういんだよなあ……』とこっそりぼやいていた。


 こうして各領の有力者との会談が終わった。ライミが両手を打ち一度通信を全て切る。そしてまた両手を突き上げ、今度は身内だけのミーティングをするために再び通信を始めた。


「結局協力してくれるのは3領とリコのワーミ領、そして森の民の集落だけかー。ボクの顔の力使っても通信じゃ魅力が伝わらないみたいで役に立てなかったよ。ごめんね」


 そう言いながら気まずそうな顔をするフォレスタ。


「いえ、お姉さまのおかげで随分助かりました。3領だけでもありがたいです!全滅も覚悟していました」


 リコは少し明るい顔で話している。元々弱小のワーミ領、想定内だったみたいだ。


「すまんなフォレスタ。期待していた俺の旧知の連中も動いては貰えなかった。まあわかるがな。俺が逆の立場でも良くて保留だ。そう簡単に賭けには出られない」


「ですが、様子見が31領と言うのは大きいです。こちらが竜人皇相手にやれる所を見せたら大きく動く可能性がありますからね。ライミさん、戦場の結果はこまめに各領の人たちに伝えて下さい」


「はい、わかりましたー!ばっちり通信しますー!」


 長と社長の言葉にライミさんが力強く返す。正直まだまだ絶望的な状況なのに、ライミの声は明るい。正直ライミのその明るさは助かるな……そんな事を考えていたら、


「あーし、ずっと独りぼっちだったから……本当は怖いけど、みんなの役に立てるのが嬉しくて。それに各領の有力者に繋げたシリウスさんの勇者ネットワーク、作ったのはシリウスさんですけど、ちゃんと繋いで橋渡ししてくれたのは、亡くなった各領のドラフト勇者様たちなんです。みんなが作ってくれたこの縁、大事に使います!あーしのできる事がんばります!」


 ライミが目を見開き笑いながら話してきた。彼女の眼には力があった、やる気に満ちている。そうだったな。今はシンプルに考えて、出来る事をやろう。


 そんな事を考えていた時に、社長が呟いた。


「それにしても……大きな領の一部の人達は、明らかに直近でドラゴニアで起こった事を知っていましたね。こちらの出す最近の情報に驚いていませんでしたから」


「やっぱり⁈ボクもそんな気がした!……って事はアイツら普段から竜人たちに色々教えてもらえているって事なの⁈じゃあ大きな領の人たちはほぼ敵側じゃない!」


塩対応してきた一部の大領主たちの事を思い出し憤慨するフォレスタ。すると、


「そうとばかりは言えないわ。ここだけの話だけど、大きな領では、竜人たちが使う『高価な宝玉を消費して行う短い通信』ができる人材をこっそり抱えている疑いがあるのよ。竜人にバレないようにね。それで大事な伝令とかを行って、危機を回避しているという噂を聞いた事があるわ」


「俺も聞いた事あるな。実はかなり前の話になるんだが、別の領の大金持ちが突然俺の所に現れて『勇者たちが元いた世界には凄い通信技術がある。なんとかそれを森の民の技術で再現できないか?竜人たちには内緒で頼む』と持ち掛けられたことがある。物凄い報酬だったから受けたかったんだが、設計図見てもなにがなんだかさっぱりわからなかったから断ったがな。結構前の話だから、もしかしたら秘密裏に作れてしまった奴もどこかにいるかも知れん」


 何かカルラさんと長が口々に聞き捨てならない話をしているぞ⁈と驚いていると、社長が教えてくれた。


「幕末、ペリーが黒船で現れた時、日本中が大騒ぎしました。ですが、幕府の上層部はオランダ経由で事前に来訪の話は聞いていたのです。現場だけが知らなかったのですよね。まあ昔からお上はそんなものです」


「そして幕末の各地の有力者たちも上を見限っていて、各自で才能ある人間に投資していました。私も元の世界では才能ある若者を育てていましたよ。まあ大抵、成長すると転職してしまうのですが、稀に凄い恩返しをしてくれる子もいましたね」


 そう言いながらどこか遠くを見る社長。なんか色々あったらしい。そんなイチの困惑した表情を見て社長は続けた。


「この世界で過ごして思ったのですが、竜人たちに虐げられているようで、この世界の人間も案外たくましいですよ。バレないように爪を研いでいる人間は必ずいます。彼らを味方にすれば勝機はあります。だからギリギリまで諦めてはいけません。勝てるかも⁈と思わせれば、彼らは動きます。あとね、私の目から見てもイチくんからは『何かを持っている』人間の空気を感じます。自信を持ってください」


「ははは、社長にそう言われるとなんとかなりそうな気がするから不思議ですね。ありがとうございます、ギリギリまで頑張ってみます。案外どこか身近に逆転の目があるかもしれませんからね!」


 社長の言葉に笑いながら答える。そうだな、諦めてなるものか!そう思い拳を握りしめ自分を鼓舞する。よーし!やるぞー!


 そう思いながら部屋を飛び出した。




***




 そんなイチに遠くから冷めた視線を送る者がいた。エリトである。エリトは自らの身体の一部である刀身を液状化させた。すると刀身から紅、黄色、緑色の宝石が付いた三連の指輪が顔を出す。シリウスさんの魔道具だ。


「コイツだけは誰にも渡すつもりはなかったが、俺様の言う事に従えば貸してやっても良かったんだぜ。まあ、イチの実力で使いこなせるかはわからないがな」


 イチはチルルと何かを話しているようだ。そして大笑いした後に土人形の群れに向かって歩いて行くのが見えた。それを見て思わずため息が出るエリト。


「もう少し現実を見ろ、バカ」


そう言いながらエリトはふわりと浮くと、戦場跡の平野に向かって飛んで行った。

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