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119/131

119-心の声

「カルラさん!なんでこんな奴を助けるのさ!」


「わかって、フォレスタ。竜人皇の情報は一つでも欲しいのよ」


「(聞いた事のある声だ……誰だ⁈)」


エリトが目覚めると。周りは暗くなっていた。結構時間が経ったらしい。頭痛がするが痺れと吐き気は消えている。一度沼の底に沈んだような夢を見ていたが、どうやら生き残ったらしい。


「よう、目が覚めたかエリト」


良く知っている声だ。こいつは……


「イチ……か⁈」


「ひどくやられていたな。毒は抜いてやったぞ感謝しろ……って感謝するタマじゃないよなお前は」


そう言いながら『毒使い』の魔道具を見せて来るイチ。周りを見るとイチの他にワーミ領の元領主のリコ、それに森の民の長の生意気な娘、それに魔女カルラに小間使い、他に多数の土人形やらに囲まれているようだ。


エリトが起き上がろうとすると腕が後ろ手で縛られているのに気付く。段々意識がはっきりしてきた。命は助かったようだが今度はイチたちに捕まったらしい。


「イチか……まさかお前に捕まるとはな。何故助けた⁈」


「助ける気はなかったけどな……」


エリトの問いにイチが返すと、魔女カルラとライミが前に出た。


「元勇者エリト。正直な話、私は貴方を殺してやりたいけど、貴方は今の竜人皇と戦ってるわね⁈取引よ、命が惜しければ竜人皇の情報を全て吐きなさい」


「あーしはライミ。あーしの能力は知っているよね⁈アンタが竜人皇に歯向かったのも行く当てが無いのも知ってるよーん」


「(こいつがライミか!まだガキじゃないか⁈こんな奴に俺達は翻弄されたのか⁈)」


初めて会うライミを見てショックを受けるエリト。瞬間的に周りを伺う。どこかの建物の中の様だ。とても逃げられそうもない。それより自分がお尋ね者になっている事も知られている。命が惜しければ従うしかないか⁈


だが、


「ふん!俺様がイチの仲間に情報を渡すと思うか⁈ごめんだね!どうしても俺様の持っている竜人皇の情報が欲しいのなら、まずはこの縄を解いてちゃんとした待遇を用意するんだな!」


ふてぶてしく拒否するエリト。


ヒュッ


イチが翠亀剣を抜いてエリトの首筋に剣を当てる。


「喋らなかったら死ぬだけだが⁈」


イチがドスをきかせて脅す。だがその物言いにエリトが激昂した。


「うるさい!こうなったのもイチ!お前が全て悪いんだろ!」


「なんだと⁈」


「イチ!お前が元の世界で俺の地位を滅茶苦茶にしなければ……俺様はこんなクソみたいな世界に来なくて済んだんだ!お前が!お前が!」


青筋を立て唾を飛ばしながら自分勝手な怨嗟の叫びをぶつけるエリト。それを聞いて思わずイチもブチ切れた。


「言わせておけば!人を操るわ、いじめを指揮するわ、おまけに俺の幼馴染含めて沢山の女の子を泣かすわ……全部お前の自業自得だろ!全く反省していないじゃないかお前は!おまけにお前、カセーツさんも殺しただろ!」


「うるさい!イチの癖に俺様に説教するな!黙れ!」


反射的にぶん殴りそうになるイチ。だがフォレスタがそっとイチの肩に手を置き、耳元で囁いた。


「交渉なんて無駄だよ、殺そう。ねえ、イチ、ボクねコイツを殺したくて仕方が無いんだ」


鉛のように重く、冷たい目をしながらフォレスタが風切りのナイフを構える。本気の殺意に怯むエリト。それを見てため息をつくイチ。


「最後の可能性に賭けたんだがな……エリト、やはりお前とはわかり合えないわ。考え方や生き方も含めて文化が違う」


そう言うとフォレスタに目配せした。ニヤリと笑い風切りのナイフを構えるフォレスタ。


その時だった。


リコが前に出て……エリトに回復魔法をかけ始めた。


「リコ⁈」


リコは語り始めた。


「エリトさん。私は貴方に思う所はあります。でもこの世界に召喚されて戦わされる事になったのは貴方のせいではありません。元々私たちの世界の問題は私たちがなんとかしないといけないんです」


無言で聞くエリト。リコは回復魔法をかけながら続ける。


「貴方の事情はわかりません。でも何か深い悲しみを負ってこの世界に来たのは私でもわかります。貴方は悪い事をしました。でも私たちの事情で勝手に呼ばれた貴方を野垂れ死にさせるのはかわいそうです」


「私は私の勇者であるイチ様を痛めつける貴方が許せません。でも私がイチ様を想うように、貴方にも貴方の為に泣いてくれる人はきっといると思います。その事を忘れないでどうか……心を入れ替えてくれる日が来ると信じています」


そう言いそっと引くリコ。俯いて何も言えないエリト。

それを見て毒気が抜かれてしまったイチは、


「リコは優しいな。もういい、どこにでも行ってしまえ。命を取らないのはせめてもの情けだ」


「(まあ、エリトの助言のお陰で人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』手に入ったしな)」


心の中でそう呟きながらエリトに背を向け建物から出ようとする。他の皆も続いた。


その時だった。


無言で俯いていたエリトが、意を決して顔を上げながら声を上げた。


「……待て、教えてやる」


その声に振り返るイチたち。


「黒虹彩剣は竜人皇に効く。だが倒せない。倒せるのはお前のオリオン斬りだけだ」


エリトが喋り始めた!








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