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118/131

118-復讐

ズカ領の方向へと必死に逃げるエリトと黒百合の乗ったスーホ車が駆けて行く。あれからどのくらい経っただろうか。追撃の気配はない。


「追撃が……ないな。俺様なんざもう歯牙にもかけないってワケか。正直腹が立つが、今回ばかりは助かったな。黒百合、少し休むぞ」


そう言ってスーホ車を止めさせるエリト。腰の小物入れから水飴と救急セルを出す。全身の傷口はもう乾いていたが、とりあえず水飴を砕いて傷口を洗い、救急セルから肉まんスライムを出して全身の傷を塞いだ。

そして小物入れから水飴をもう一つ取り出すと、今度は噛み砕いて喉の渇きを潤した。


「傷はこんなものか。携帯食が無いのは痛いな。どこかで食料を確保しなくては」


「あちきがなにか探してくるでありんす。でも申し訳ないでありんすね。あちきは回復魔法は使えないので怪我の回復の手助けはできないでありんす」


眉を下げ申し訳なさそうな声を出す黒百合。


「気にするな。俺様も攻撃系の能力はおしなべて高いが、回復含めて守備系はダメだ。たぶんこれは適性なんだろうな」


そう思いながらイチの事を思い出す。


「(そういえばアイツは攻撃系能力はダメだが守備系や回復系スキルはすぐに身につけてやがったな。もし俺様が鉾でイチが盾の役目を果たす戦い方ができれば、竜人皇とも戦えるんじゃないか⁈)」


そう考えてすぐにかぶりを振る。


「(いや、まっぴらごめんだ。アイツと組むなら死んだ方がマシだ)」


自分が騙すつもりでイチに共闘を持ちかけた事をすっかり忘れて勝手な事を考えるエリト。

そんな時に黒百合が目の前の草むらをジッと見ている事に気付いた。


「どうした、黒百合?」


すると黒百合は草むらに向かって呼びかけた。


「チョビ、出て来るでありんす」


「へへへ、姐さんにはすぐにバレてしまいますね」


そう言いながら草を掻き分けてチョビが現れた。一瞬焦ったが、気を取り直して話しかけるエリト。


「チョビか。何の用だ⁈」


それを聞いて口をとがらせるチョビ。


「何の用だはないでしょう⁈ライミ捜索を命じたのはエリト様じゃないですか。見つけましたよ。この街道を真っ直ぐ行った先の古戦場跡の砦にライミは隠れてますぜ」


「そ、そうか。よくやった」


そう言いながらエリトは頭を動かしていた。ライミの『通信』が手に入れば、実はこの世界に密かにいる、竜人に反抗的な実力者と連絡を取って、匿ってもらう事ができるかもしれないじゃないか。


「(こちらに逃げて来たのは正解だったな)」


思わずニヤけるエリト。

そんなエリトを見て何かを感じとったのだろう、チョビが質問してきた、


「エリト様、何かあったんで⁈そもそもこちらには何の用で来られたんです⁈」


「いや、大したことじゃない。気にするな」


慌てて誤魔化しながらチョビの首元を見るエリト。チョビの首には黒百合の分身の蛇の模様が浮かんだままだ。コイツはまだ俺様の言う事には逆らえない。


「(チョビはまだ俺様が竜人たちのお尋ね者になった事は知らないらしいな。ならコイツを手駒にすればなんとか逃げ切る事はできそうだ。希望が見えてきた、まだ再起の目はある)」


そんな事を考えていたら、


ぐうううう


腹が鳴った。もう空腹の限界だ。そんな時に気付いた。チョビが紙袋を二つ持っている事に。


「おい、チョビ。それはなんだ⁈」


「あ、弁当でサ」


「二袋あるな、一つ寄越せ。」


「へえ、構いませんが……どちらにしやす⁈」


「どちらでも良い!貰うぞ!」


そう言ってチョビから紙袋をひったくる。紙袋を開き、かぶりついた。


「もぐもぐ……中身はカルコスだったか。美味いな、良い肉を使っているじゃないか。気が利くなチョビ」


そう言ってチョビの顔を見ると……邪悪な笑顔を浮かべていた。




「オレは何もしていない。()()()()()()()()()




ハッとなったと同時に舌が痺れ始め、思わずカルコスを吐き出すエリト。見るとエリトの引ったくったカルコスの紙袋には『×』のマークがついていた!


「その紙袋の『×』マークの意味は知っているよな⁈ドラゴニアのカルコス屋台名物の勇者狩りの毒入りカルコスだ。ちなみにこちらは『☆』マーク。こちらは無毒だったのにな!」


「……くっ……黒百合!……殺れ!」


エリトが命じるとチョビの首の蛇の模様が真っ赤に発光し、チョビの首から下をドロドロに溶かし始めた。


「は……ははははは!やっと復讐できたぜ!アンの仇だ、ざまあみろ!」


チョビはそう高笑いした後に首だけになり、最期は蛇と化した黒百合の分身に飲み込まれた。その間に黒百合の本体は素早くエリトの背中を叩いて胃の中の物を全て吐き出させると、小物入れから水飴を出して砕き、水で口をゆすがせた。


「お前様!まだ……まだ、死んではダメでありんす!」


エリトはのたうち回りながら、


「ち……畜生……まだ死ねるか……!」


そう呟き、意識を失った。

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