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113-生き残りの誓い

「シリウスさん達に山小屋に閉じこもれ、能力も使うな……って言われて、どうしてたの⁈」


イチが尋ねると、ライミは苦笑いしながら話し出す。


「シリウスさんたちと組む時に『シリウスさんの言う事は絶対だ』って言われていましたから最初は従っていました。でもやる事もなく、何もない山小屋に籠っていると段々寂しくなって……最後には腹が立ってきたのですよ。『なにさ、あーしの情報のお陰で勝ててるクセに⁈』って……今思うとバカでしたけど」


過去のやらかしを思い出してバツの悪そうな顔をするライミ。それを見てイチが尋ねる。


「その年齢じゃ仕方ないよなあ、ちなみにライミはちゃんと我慢して大人しくしていたの⁈」


それを聞いてまた苦笑いするライミ。さらに続けた。


「いや~、やる事無かったので、こっそり竜神たちの通信を盗み聞きしていました。そしてシリウスさん達にはバレないように、重要な情報を他の勇者さん達に流していたんです。その勇者さんたちは戦果を上げるし、あーしは喜ばれる!なんだ、やっぱりあーしがいないとダメじゃない!と思って……」


ライミは少し楽しそうに笑った。だがすぐに顔をしかめる。


「そんなある日、明らかに重要そうな通信が飛び交っていたんです。竜人たちの次の作戦だとか、竜人皇の弱点だとか。でも音が小さくて拾えなかったんです」


「あーしは燃えました、絶対にこの情報を手に入れてやる!シリウスさん達にあーしがどんなに役に立つか見せてやるって!」


「あーしは持てる力を全開にしてその通信を聞き取ろうとしました。感度を倍に、3倍に……」



--------------------------------------------------------------------------------



(――――――竜―皇――――――――命じて――――)



「(掴んだ!よーし!感度を5倍にして……)」



(――軍隊の―――――――――――地点に――――数は―――)



「(まだよ!感度を10倍に!)」



(―――この作戦が上手く―――――この世界の秘密を―――――)



「(あと一息!感度30倍!あーしの全力で!)」



(―――――――――――くくく……)



「(え……⁈)」















「引っかかったなマヌケめ!お前の居所はわかったぞ、このクソズーミが!」











--------------------------------------------------------------------------------


「聞いた事もない恐ろしい声でした。すぐにわかりました竜人皇だって!あーしは罠にかかったんだと気付きました」


ライミは真っ青になっていた。思い出しただけで泣きそうになっている。気持ちはわかる。『大貨物船』の中でジルコンさんと遭遇したあの恐ろしい気配を思い出すと今でも怖くて眠れなくなる。ギラードも恐ろしかったけど次元が違うのだ。

ライミは少し黙り込んで、水を少し飲んで深呼吸した。そして気持ちが落ち着いたのか、また語り始める。


「……その後の事はほとんど覚えていません。シリウスさんに何か危険が迫ったら使うように言われていた小さなスーホに乗って夢中で山を下りました。そして山を下りてから振り返ると、あーしのいた山小屋の辺りが燃えてたんです」


「すぐにシリウスさんに連絡しようと思ったのですけど、やめました。あーしたちの世界のドラマでお巡りさんが誘拐犯の電話を逆探知しているのを見ていたので、この世界でも『通信』を使ったら居所がバレるんじゃないかと思って」


「しばらく隠れながら移動していました。その途中で知ったんです。一部の勇者以外の人達はみんな狩られてしまったって。あーしは途中からニセ情報を掴まされていたんです。そのせいで竜人たちの罠にかけられてみんな死んでしまいました」


「その後は地獄でした、隠れて移動して、誰か勇者の生き残りはいないかって捜し歩きました。そうして森の民の集落でシリウスさんたちやイチさんたち生き残りを見つけたんです。通信出来た時は泣きそうになるくらい嬉しかったです。でもすぐにシリウスさんたちはやられちゃって……」


ライミは俯いてしまった。声が震えている。それを見てフォレスタが優しく声をかける。


「そうか……本当に大変だったんだね。でもこの世界の事をまだよく知らないキミみたいな若い子がよく見つからなかったね⁈」


そう言われたライミは少し笑いながら語り始めた。


「それは、あーし、頑張りました!カメラ機能を使ったり、あーしの気配を残すために囮を使ったり」


「囮⁈」


「身体の一部を変化させて、空中カメラにして飛ばしていたんです。その気配を辿って竜人が追いかけてくるのはわかっていたので」


それで思い出した。

ドラゴニアに行く途中のスーホ車で、チョビの追撃を躱す事ができた事を。あの時たしかにチョビはライミを探していた。あれはもしかして……。


「ドラゴニア行く途中で助けてくれていたんだね、ありがとう」


そう言ってイチは気付いた。ライミの左手の指には爪がない事に。


「あはは……囮には身体の一部を使わなきゃいけなくて……最初は髪の毛を切って使っていたんですけど、足りなくなっちゃって……最後には爪を剥がして使っていました。ちょっと痛かったです……えへへへへ」


苦笑いするライミ。それを見てリコとフォレスタが同時にライミに抱き着いた。


「凄いです……貴女のお陰で私たちは生き残れました!ありがとうございます、ライミさん、貴女は本物の勇者です!」


「辛かったね!頑張ったね!泣いていいんだよ!」


最初は呆然としていたライミは……


「あーしが……あーしが……シリウスさんたちの言う事をちゃんと聞いていれば!みんな死ななかったんです!ごめんなさい!ごめんなさい!でもイチさんだけでも生きていて……嬉しくて……あーし……あーし……必ずみんなの仇取りますから!頑張りますから!」


心のダムが決壊してわんわん泣き出した。カルラも目頭を押さえている。


彼女たちに背中を向けてイチは遠くを見ていた。それを見てゲス郎が横に来る。


「アッシもカルラさんの家で特大の失敗というか、生き恥かきやしたから……気持ちはわかるでゲス」


「でもゲス郎、助けに来てくれたじゃないか。生きていればなんとかなるんだよ。ありがとうな」


「イチ様……竜人皇に勝てるでゲスか⁈」


それを聞いたイチは抱き合ってわんわん泣いているリコとフォレスタとライミをジッと見た後に、


「勝てるかじゃないよ、勝つんだよ」


ドラゴニアの方を睨みつけてそう呟いた。

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