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112/131

112-ライミの過去

「あーしは日系ブラジル人なんですけど、日本語が全然喋れなかったんです」


ライミはそう語り出した。


「日本語が喋れないから友達もいなくて……ほとんど引きこもりだったんです。でも優しいお父さんとお母さんがいたので寂しくありませんでした」


幸せそうに語るライミ、だが急に顔が曇る。


「そんなある日、お父さんが大けがをして入院。仕事も切られて、母さんもパートを減らされちゃったんです。……お父さんの治療費に入院のお世話、お母さんは日本語はなんとか喋れるけど字が読めない、それで一気に家からお金が無くなっちゃって……それでもなんとか頑張ろうとしていた矢先にお母さんも過労で倒れちゃって……一気に家の事がピンチになったんです」


「毎日家の中が荒れていくのがわかりました。あーし、子供だけど『何とかしなくちゃ。引きこもってなんていられない!』と考えて、思い切って外に出たんです。そうしたら人さらいにあって……なんとか逃げだせたのですけど、そこは日本人すらほとんどいない知らない町で、日本語すらまともに喋れないあーしじゃ助けを求める事もできなくて、どうしよう⁈と泣いていたら『なんとかしたいか⁈』と言う声が聞こえて、よくわからないけど『なんとかしたいです!』と答えたらこの世界に召喚されたんです」


ライミは亡くなったわけじゃなくて、生きたまま、自分と似たような条件で召喚されたわけか。ただこんな子供まで召喚するとは……この召喚システムおかしいんじゃないか⁈

そんな事を考えていたらライミは続けた。


「この世界に召喚された時は……それはもうショックでした。でも気付いたんです。この世界では全ての人の言葉がわかる。そしてあーしの祝福は『通信』だったのでどんなに離れた人たちとも話ができたり、別々の人との遠距離通話を手助けできたりできるのですよね。それでお金が稼げるんじゃないかって」


ライミは少し嬉しそうな顔をした。


「お金を稼いで、この世界の価値のある物を持って帰ればお父さんとお母さんの助けになるって思って。竜人皇を倒すとかは他の勇者に任せて、あーしは手助けだけすれば十分稼げるって思って。強い勇者を探そうと思っていたら、シリウスさん達に声をかけられたので、この人たちなら竜人皇を倒してくれると思ってたので」


「あーしの能力のお陰で勇者たちはかなり有利になったらしくて皆にちやほやされました、しかも儲かりました。嬉しかった。儲かるのもですけど、皆に必要とされるのが」


ライミは本当に幸せそうな顔をした。楽しい記憶なんだろう。自分もリコとワーミ領を何とかしようとしていた時期は幸せだったなと思い返すイチ。


「あーしはいつも大忙しで、それに合わせて能力も成長しました。通話だけだったのが、偵察もできるカメラ能力まで手に入れたり。あーしはどんどん必要とされて、それにあわせてだんだん気も大きくなっていました」


あら、イキっちゃったのかな⁈まあその年齢なら仕方ないか。そう思っていたら、


「そんな時、気づいたのです。別の人達同士の通話を中継していたら、全然知らない人たちの会話も聞こえてくることに。そしてすぐに、それは竜人たちの会話だと気づきました」


え⁈竜人たちの会話⁈ちょっと待って⁈


「待って⁈って事は竜人たちも通信できる魔道具とかを持っているって事⁈」


イチが慌てて尋ねるとカルラさんが、


「竜人たちにそんな能力も技術もないわ。ただエリート竜人の一部は貴重な宝玉を消費する事で、ごく短い通信をする事ができるって聞いた事があるわ。ただ、本当に目玉が飛び出すほどのお金がかかるから、重要な要件にしか使えないけど」


カルラさんの解説を聞いて頷くライミ。そして続けた。


「そうなんです。たまに流れて来る竜人たちの通信は重要な事だらけだったので、すぐに皆に知らせました。そのおかげで勇者たちは連戦連勝!竜人の将軍の一人を討ち取るまでになったんです!」


それを聞いてフォレスタが声を上げる。


「竜人の将軍を⁈それは本当にすごいよ!みんな喜んだでしょ⁈」


フォレスタの称賛を聞いて笑顔になるライミ。


「はい、皆大喜びでした!でもシリウスさん達はすぐにあーしを遠くの山小屋に連れていきました。そしてこう言ったんです」





「ライミ、しばらくここに隠れていなさい。決して能力も使ってはダメだ。いいね、約束だよ」





「そう言うとシリウスさん達は山を下りました。あーしだけ山小屋に閉じ込められたんです」


そう言うとライミは暗い顔になった。

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