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109/132

109-先人の備え。

古戦場跡に着いた。


だだっ広い平地に高い丘があり細いながらも川もある。歩くとボロボロの矢じりやこん棒、錆びた武器、ここで亡くなった人や動物たちの骨の欠片の様な物が落ちているのも見える。丘の上にはボロボロの砦と幾つかの廃屋があるが。土壁は朽ちており屋根は穴だらけ、雨風すらまともに凌げるかどうかと言う感じだった。


「えーと、改めて……ライミ……さん。イチです。」


「あーしの方が遥かに年下ですから!ライミで良いです!」


「じゃあお言葉に甘えて……ライミはここに隠れていたの⁈よく今まで見つからなかったね⁈」


「何度も竜人の兵士さんの見廻りが来ました。その度に上手く逃げ回っていたのですけど、目がギラギラして背が低い、チョビと呼ばれていた兵士さんがしつこく見廻ってきて……本当に怖かったです……」


「あいつか……それは大変だったね」


イチの問いにぽつりぽつりと返すライミ。自分たちも過酷な戦いをしていた自負はあったけど、こんな小さな子が一人でこんな所で逃げ隠れするのはさぞかし怖かったろうなと震える。


ぐー


そんな事を考えていたらお腹が鳴った。ずっと逃げ回っていてカロリーを使い果たしたのと、緊張感が切れたダブルパンチからだろう。逃げきれたのは良かったけど、まずは食べ物を確保しなくては……。


「ごめんなさい、この辺りは捜索したのですけど食べ物はほとんどなくて、こんなものしか……味はイマイチですけど食べないよりマシですから、良かったら食べて下さい」


ライミがおずおずと、木の実を出してきた。木苺に似た実だが、野生の種らしく、実は少なそうだ。一粒食べてみた。かなり酸っぱいがほのかに甘みも感じる。ちょっと甘酸っぱいミニトマトと言った感じか。空きっ腹だからか意外とイケる。


「ありがとうライミ、でも食糧問題は考えなきゃね。戦うためにはまず食べ物と水だし」


「見たところ川はあるんだけどね……生水だから沸騰させないと。あ、でも鍋がいるか。荷物の中に無かったかな⁈」


イチとフォレスタがそう言いながら何か無いかと荷物を物色していた時に、


「あの……『大貨物船』の中の『液体』の船倉に水がありましたよね⁈、たしか『食糧庫』って船倉もありませんでしたっけ⁈」


リコが言ってきた。


「あー!あったあった!探してみる!」


イチはそう言いながら金茶色のチェーンネックレスに魔力を込める。脳内で箱舟に入り、オレンジ色の箱に触る。すると『食糧庫』の船倉が開き、中には大量の保存食があった!


「あったー!ジルコンさん!ありがとう!」


イチはそのまま船倉の扉を開けて、どんどん荷物を出した。


「あら!食糧庫の中に簡易浄水セットもあるじゃない!『液体』の船倉の中にあった水をこれでろ過すれば飲み水が作れるわね」


「イチ様!『固体』の部屋に転がっていた資材の中に鍋がありました!他にも役に立ちそうな物があります。これでご飯が作れます!」


「ボクが作るよ!任せて!カルラさんは火を起こして」


リコ、フォレスタ、カルラさんは食事の準備に入る。ゲス郎は資材の整理でチルルは周辺のパトロール。カルラさんは発火する杖で火を起こしてくれた。鍋に移したスープが煮えて良い匂いがする。これにカセーツさんの魔道具から出した鹿豆や大豆を足して、ちょっと豪華な野戦食になった。


「あーし……温かいご飯なんて久しぶり……」


「おかわりあるからゆっくり食べてね」


「はい……美味しいです……うっ」


イチの言葉に、ライミは目を潤ませながらスープを啜った。それを見てもらい泣きしそうになる一同。


「(シリウスさん達は戦いに備えて本当に色々準備していたんだな……シリウスさん、マムリさん、ジルコンさん、カセーツさん……みんなありがとう。本当に助かりました)」


いつもいつも先人たちに助けられている。自分も助ける側にならないとな、そんな事を考えながらスープを啜った。



食事を終えてやっと落ち着いた。



皆でライミに質問をする。

まずはカルラさんが切り出した


「ライミ、今までの話を聞きたいんだけどその前に確認。シリウスから何か聞いていない⁈戦士タイプの土人形を作ったとかの話⁈」


そうだ、まずはそれを聞きたい。それを聞いたライミは少し目を閉じて考えた後に、


「え~と、あーしは戦士タイプ土人形は作ったって聞いています。『大貨物船』の船倉とかに入っていませんか⁈」


それを聞いてフォレスタと顔を見合わせるイチ。


「イチ……やっぱり……」


「うん……たぶんあの未開放の船倉だ」


『大貨物船』の未開放の船倉のカギ、藍色と紫色の箱。

ジルコンさんは『藍色は合言葉がいる、紫色は開けるな』って言っていたっけ。

でも藍色の箱は合言葉さえあれば開きそうなんだよな。


いや、待てよ⁈


「ライミ、合言葉があれば開きそうな船倉があるんだけど、ジルコンさんから合言葉について何か聞いていない⁈」


「え⁈ジルコンさんから合言葉聞いていないのですか⁈」


「ジルコンさんが最期に残した言葉は『マムリ愛してる』だったからそれだと思っていたんだけど……違うみたいなんだよ」


「うーん⁈『大貨物船』の魔道具貸して貰えますか⁈」


イチは服の首元から金茶色のチェーンネックレスを出して外し、ライミに渡した。

受け取った瞬間、目を剥くライミ。


「うわっ⁈なんて魔力消費量の多い魔道具⁈……ジルコンさんさすがですね。あーしに使えるかな……」


そう言いながらライミは金茶色のチェーンネックレスを身につけると、


「ジルコンさん、お借りします!」


そう言いながら魔道具に魔力を込める。すると淡く発光しだし……『大貨物船』が起動した!











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