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異世界召喚勇者ドラフト47位で指名されました  作者: 三村守修司
第八章 ドラゴニア対決編
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108/131

108-逃げながら

「ドラフト5位勇者ライミ⁈……君が⁈」


思わず声に出してしまうイチ。それを見て、


「はい!ライミ・イシカワ、日系ブラジル人の12歳です!よろしく!」


はにかみながら笑うライミさん。驚いた、想像以上に若い!


くりくりとした丸っこい目に、少しウェーブのかかった黒髪のショートカットで肌は浅黒い。大き目の灰色のローブを身にまとっているが線は細い。あまり体力はなさそうだが、こんな子がよく一人で異世界で生き残ってこれたな⁈そんな事を考えていたら、


「前方にまた人垣ができているでゲスー!」


ゲス郎の叫び声が響く。見ると大量のドラゴニアの民が武装して壁を作っている!今度は一筋縄ではいかなさそうだ。


「仕方ない、薙ぎ払いで……」


イチがそう言いかけた時、


「私がやります!チルルさん!私の『ワーミ』を!」


リコが叫んだ!それを聞いて、


「これか!ほらよっ!」


チルルが『重力制御』で幌車の奥から先端が少し曲がった細めの薄緑色の筒を出した。


あの武器は!


リコは飛んできた細筒を掴むと御者台に飛び出し、筒の先端の曲がっている所の少し上辺りを握りこんで狙いをつけた!


「ごめんなさい!えーい!」


そのまま親指に魔力を注入する!


カチッカチッカチッ


ドオオオオオオオオン!ドオオオオオオオオン!ドオオオオオオオオン!


細筒の先端から大きな空気の塊が次々と飛び出し、前方の人垣を吹っ飛ばしてゆく!

人垣に穴ができた!


「今でゲス――――――――――――!」


ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ


その隙間に車輪を震わせながら全速力で飛び込むスーホ車!あまりの勢いに人垣が霧散していく!民衆の壁を抜けた!


「よっしゃー!リコえらい!」


歓喜しながらリコに抱き着くフォレスタ。


「ごめんなさい!ごめんなさい!でも死ぬよりマシですから!ケガした人はよく傷口を洗っておいてくださいねごめんなさい!」


必死で頭を下げまくって詫びるリコ、こんな時に!


でもリコらしいな、と思った。


「(自分はもう人殺し上等な気持ちになっていた。でもリコの心はまだ清い人間のままだ)」


この先そんな甘い事は言ってられないだろう、でも……


「(万一竜人皇に勝てたとしても俺はその時にはダメになっているだろう、ひどい死に方もするだろうし地獄へも行くだろう。たぶんフォレスタもカルラさんも覚悟はしていると思う……でも……でも、せめて若いリコだけは人間のままで生きて……)」


心の中で小さく祈るイチ。それを見て、リコがはにかみながら話してくれた。


「イチ様、私、この魔法の武器に『ワーミ』って名付けたんです。私の領の名前。もし領を取り上げられても私の手の中にはワーミ領と民のみんなの心があるって思うために!あ、もちろんワーミ領を取り返すのを諦めてませんよ!どんな手を使ってでも取り返します!えへへ、でもこの名前は変ですか⁈」









ハッとなった。








瞬時に思い出したのはワーミ領で、社長やカセーツさんの見ている前で行った簡易的な叙任式。


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「勇者、北田順一、ワーミ領と、この私のために貴方の忠誠、公正、勇気、武勇、寛容、礼節、慈愛を捧げる事を誓いますか⁈」


「はい、一命を持って」


「では、この剣を授けます。貴方を信じます」


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そうだった。俺はあの時リコの勇者になるって誓ったじゃないか!

リコは全然諦めていない。覚悟も決めている!

何勝手に悲壮な顔して諦めているんだ!


勝つ!この世界を救う!そして生きる!

全部やるんだ!


俺はダメじゃない!

まだやるべき事が残っている!


少しずつ心に小さな火が着き始めた。頭が冷静に回り出す。今やれる事はなんだ⁈

そんな事を考えていたら、


「そのままズカ領の国境の街道へ!」


ライミさんの叫び声が響いた。


「え⁈そっちへ行くの⁈森の民の集落じゃなくて⁈」


エリトの策に乗るみたいで気に食わないが、森の民の集落には小雪の守りがある。しばらく立て籠れるから絶対にそちらに逃げた方が良いはずだ。イチがそう言おうとすると、


「ダメです!森の民の集落への道は、街道も、抜け道も全部封鎖されて待ち伏せされています!行ったら即捕まります!」


容赦なく却下するライミさん。

って、なんだと―――――――――⁈


「エリトの野郎!やっぱり罠じゃないか!」


アイツの言うとおりにしていたら今頃全滅してた!一瞬でも信じた俺がバカだった!

何回騙されるんだ俺は!と、自分の甘さに憤慨していると、


「こちらは……100年前の古戦場跡ね……」


物憂げにカルラさんが呟いた。


「はい……ボロボロでしたけど、古い砦の跡があったのでそこに隠れていました。そこに向かおうかと」


「そっか……また、あそこなのね……わかったわ、そこに向かいましょう」


ライミさんの提案に同意するカルラさん。とても遠い目をしながら。

その時だった、


「おっ!来たぞ来たぞ!おーい!こっちだー!」


そう言いながらチルルがスーホ車を飛び出していった。そして街道左側の丘に向かって飛んで行く。

チルルが飛んで行った方向を見てみると……遠くの方でスーホ車と並走して走っている集団が見える⁈


「なんだありゃ⁈フォレスタ、見えるか⁈俺の目じゃよく見えないんだ」


「ちょっと待って……うーんと……なんかずんぐりした集団が……あ!あれは!」


どたどたどたどたどたどたどたどた


「イチ!あれ、カルラさんの地下にあったモグラ土人形だよ!」


「え⁈竜人たちに押収されたんじゃ⁈」


イチが驚いているとチルルがモグラ土人形を誘導しながら戻ってきた。


「押収される前に俺様が古戦場跡に向かって脱出するよう命じておいた。あの地下の沢山の抜け道、竜人たちもまだ把握していなかったみたいだな、上手く撒いて来てくれたみたいだぜ!」


「オオオオ!ありがたい!でも……」


チルルの発言に湧くイチ。ただ、


どたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどた


ずんぐりむっくりの土人形たちがどたどた走っているのは何というか……どんくさかわいいな!

しかも、意外と足速い!


どたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどたどた


「きゃああああああああ!みんなかわいい!」


リコが嬉しそうに歓声をあげる。その笑顔を見たらなんか気持ちが晴れてきた。


そうだ、まだ負けてない。運が向き始めてる!

俺達は生きてる!生きている限り負けていない!



よーし!やるか!



「このまま砦の跡へ!そこで体制の立て直しだ!」


オオオオオオオオオオオオ!


イチが宣言すると皆、力強く応じた!







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