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異世界召喚勇者ドラフト47位で指名されました  作者: 三村守修司
第八章 ドラゴニア対決編
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106/131

106-劇場

次の日の朝、ザーレからの伝令が来た。


ザーレが逗留している『宝竜閣』で『魂の蘇生結晶(レイヤール)』引き渡しの儀と、イチを元の世界に送るための手続きを行うから昼過ぎに迎えに来るとの事だった。引き渡しの儀は『宝竜閣』の劇場で華々しくやるらしい。


「わざわざ引き渡しの儀なんてやるの⁈ほい、と渡してくれれば良いのに⁈」


とイチが文句を言ったら、


「ザーレはそういう奴よ。芝居がかっているのよ」


とカルラさんが答えてくれた。


少し早い昼食を摂って待っていたら館の前に豪奢なスーホ車が現れた。カルラさんの館に初めて着いた時ザーレとエリトが乗ってきた奴だ。イチ達4人が乗り込むと護衛の竜人が複数ついた。今さら逃げねえよクソが。


『宝竜閣』に着いた。想像以上に豪華な建物だった。元の世界の高級ホテル並みだと舌を巻いていると、劇場に案内された。


そして劇場内に入って驚いた。


そこには沢山の竜人兵がいた。儀礼らしく皆、帯剣はしているが鎧ではなく軍服の様なものを着ていて背筋がビシッと伸びている。


そしてそのまま舞台の上に案内された。


舞台上だと数百人の竜人兵の敵意に溢れた視線が自分たちに注がれるのがわかる。仕方ない、かなりこいつらの仲間を斬ったからなと、心の中で苦笑いする。




いや、殺意は感じるがそれだけじゃない。

会場全体が明らかに必要以上にピリピリしているぞ⁈




客席を見る。貴賓席にザーレとエリトの姿が見える。ザーレはいつも以上に豪奢な装飾の軍服を着ている。そしてその隣の儀礼服を着た線の細い竜人は司会進行係か。ザーレは竜人たちの中でもトップクラスのお偉いさんだからそのせいで緊張しているのだろうか⁈


いや、それだけじゃない。




「(たぶんこの会場に、物凄くヤバい奴がいる⁈)」




会場のどこかから物凄い圧を感じる。この気配には覚えがある、ジルコンさんの『大貨物船』の中で感じた奴だ。横を見る。リコたちも震えている。緊張からだけじゃない、この会場の中にいる『何か』に怯えているんだ!


そう言えばカルラさんの館を出る前に、伝令役が


『ザーレ様は、我々を苦しめたが素晴らしい利益をもたらす偉大な勇者を、敬意をもって100年ぶりに元の世界に送りたいから豪華絢爛な儀にしたいそうだ』


とも言っていた。本当に趣味が悪い!と思っていたが、


「(この雰囲気はそれだけじゃ説明がつかないぞ。これは……まさか)」


思わず唾をのむ。






「(竜人皇が来ているのか⁈)」






だとしたらこの緊張感も納得がいく。どこにいるのかまではわからないが。


そうしているうちに儀礼は進んだ。ザーレが舞台に上がり、芝居がかった褒め殺しみたいな賛辞のスピーチから始まったかと思うと、リコ、フォレスタ、カルラさんに、わざわざ竜人皇へ永遠の忠誠を誓わせる宣誓を行わせた。そしてその後、3人の真ん中にイチを配置させて『涙の別れ』みたいなクサイシーンを演じさせると、その後にザーレが感動の涙を流しながらイチたちの無駄な戦いを讃えるシーンまであった。


「(趣味悪い!本っ当に芝居がかっているな!)」


怒りを通り越して呆れていると、舞台の端から豪華な荷台が運ばれてきた。荷台の上には小さな紫色の座布団みたいなものが置かれており、その上には小さなミカンのようなものが置かれていた。


「間違いないわ、本物の人工の『魂の蘇生結晶(レイヤール)』よ」


カルラさんが呟いた。まさか本物を持ってくるとは!正直な話、偽物を持ってくると思っていた。どうやらザーレは約束を守るというのは本当らしい。


「さあ、勇者イチくん。『魂の蘇生結晶(レイヤール)』を取りたまえ。それを手にした瞬間、君は元の世界に送られるのだ」


ザーレはそう言うと貴賓席へ戻った。えっ⁈そんな簡単な事で戻れるの⁈思わず呆然としたマヌケ面を晒しそうになったが皆の視線が自分に注がれているのに気づき、驚きを顔に出さないように咳払いする。

そしてザーレにうやうやしく礼をした。


緊張しながら人工の『魂の蘇生結晶(レイヤール)』を見つめるイチ。よく見ると橙色に妖しく光っている。


「(既に昨日見てはいたが、あらためて見ると凄い魔力圧だな……)」


背筋が伸びる、手が震える、そして考えた。


「(ザーレの言う事が本当なら、これを手に取ったら俺はこの世界から去ることになる。人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』の魔力圧も昨日以上に感じる。正直恐い)」


手を震わせながらゆっくりと人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』に手を伸ばす。


その時気づいた。











「(待て⁈昨日、人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』の魔力を『恐い』なんて感じたか⁈)」










リコたちを見る。3人とも切なそうな目をしている。リコなんて今にも泣きそうだ。これでお別れだろうから、そりゃ不安も恐さもあるよな。俺と一緒か、手汗出てるもんな。











「(いや、違う。この恐さはこれからの不安からなんかじゃない)」










「(目の前にある人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』に対する本能的な恐怖からだ!)」









絶対おかしい!そう思った瞬間、昨夜のエリトの言葉が頭に浮かんだ。


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『あとお前は真っ直ぐすぎるのと頭に血が上りすぎだ。ここがチャンス!と思った場面は案外危険と隣り合わせだったりするぜ。周りをよく見ろ。じゃあな』


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「(周りをよく見ろ⁈)」


イチは劇場を見渡した。劇場全体は先ほど同様厳かな空気を纏っているが、何かが違う。

何かを期待しているような空気がある。

竜人兵の中には口角が上がっているのもいる。


何故だ⁈昨日カルラさんは『人工魔道具『魂の蘇生結晶(レイヤール)』は竜人の年間研究予算の3割を使ってやっと一つ作れるかどうか』って言っていたのに⁈そんな貴重品を持って行かれそうになっているのになんでこいつら笑っている⁈






「(人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』を持って行かれるとは露ほども思っていない⁈)」






目の前の人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』からは凄い魔力圧を感じている。

罠か⁈でもザーレは約束を守ると皆が口をそろえて言っていた。ならこれは……。


その時、昨夜のエリトの言葉がまた頭に浮かんだ。


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『同郷人として教えてやる。ザーレは約束を守るが、約束していない事に関しては全部裏切ると思って良いぜ』


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「(―――――――――――――――ええい!自分の感性を信じろ!)」





「これが俺からの返事だあああ!」


そう言いながらイチは翠亀剣を抜くと、人工『魂の蘇生結晶(レイヤール)』に向けてオリオン斬りを繰り出した!


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