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異世界召喚勇者ドラフト47位で指名されました  作者: 三村守修司
第八章 ドラゴニア対決編
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105/131

105-決裂

「(手を組もうだと⁈どの面下げて……この野郎!)」


そう思いながら、板と細い棒をひったくり、凄い勢いで文章を書くイチ。


『お前となんか組めるか!バカヤロー!どうせ俺達を笑いに来たんだろ!』


そう書くと「くっくっく」と言う必死で抑えたエリトの笑い声が、


……聞こえなかった。


代わりにため息が聞こえた。

そして板書が続く。


『そうしたいのはやまやまなんだがな、俺も嵌められたんだよ』


『何言ってやがる!お前はワーミ領の領主に出世だろ!リコが汗水たらして育てた大事な領の!』


『そこなんだよ、あんなビンボー領押し付けられても困るんだよ』


『なんだと⁈』


『どうせ、高い税金目標当てられて、そのノルマ達成できなかったら、罰として、俺様は無能と言われて外されるか処刑。領は取り潰しで、領民は竜人の若返りの餌に連れて行かれて終わりだ』


またため息が聞こえた。そしてさらに続けて書くエリト。


『そしてワーミ領は竜人の領になる。最初からそういう腹なんだよザーレは』


「………………………………………………」


無言で考えるイチ。たしかにザーレって竜人にはそう言う一面を感じた。

ちらりと門の方を見る。どうやら見張りの竜人たちには気付かれていない。

そしてさらに続けるエリト。


『そこで提案だ。手を組もうぜイチ。本音は俺だってお前と組むのはごめんだ。だが今のままだとお前の仲間たちがどうなるか想像つくだろう⁈絶対に想像より酷い事になるぜ⁈』


「―――――――――――――!」


確かにそうだ。リコたちはもっとひどい目に遭わされる。だが抵抗すれば今度こそ皆の命はない。だが、自分もリコたちにとってのベストの案があるかというと……一番マシなのがザーレの案で……いや、でも……。


顔をしかめ悩むイチ。

するとその間にエリトが代案を筆記し始めた。


『俺の案はこうだ。イチたちはこのまま逃げて森の民の集落に逃げ込め。あそこに籠れば竜人も簡単には手は出せない。そして社長に頼んで黒虹彩剣のかけらを増やせ。そして増やしたかけらを俺様に渡せ。そうすれば勇者の剣、完全体の黒虹彩剣オブアイリスの復活だ。竜人皇とだって戦えるぜ、どうだ⁈』


「(黒虹彩剣のかけらを増やす件も知っているのか……相当聞かれていたんだな。クソ!)」


思わず顔をしかめるイチ。それを見て、


『合理的に考えろ。他に手があるか?』


念押しするエリト。それを見てまた悩むイチ。


「(たしかに一つの案かもしれない。現状、このまま竜人の思い通りにされるのも嫌だ……だが……エリトの提案だぞ⁈一番信用できない奴だぞ⁈)」


ふと夜空を見上げた。二つの月が雲に隠れている。この暗さなら見張りの竜人には今の自分は見え辛いだろう。

そのまま目を閉じて考える。


「(合理的に考えろ……か)」


今までの事を思い出していた。姉の子が死産して、父が交通事故に、義兄が海で行方不明に、その後召喚されてこの世界に来て、何が何だかわからないまま勇者になっていた。でもリコやフォレスタ、カルラさんにゲス郎……色々な人に出会えて、楽しい事も怖い目にも遭った。ここぞという時には助けもあったけど、最後に自分の命運を分けたのは……。


「(合理的な行動は大事だ。でも今まで助かっていたのはそれだけじゃなかったよな……)」


今までの奇跡的な逆転を思い出すイチ。そして結論に至る。


「(……そうだな、せめて自分の人生の選択と責任は自分の手に取り戻さないとな)」


決意した。イチの表情から迷いが消える。

そして細い棒を手に取ると、力を込めて、しっかりとした字で板書した。


『お前とは組めない。俺は俺で動く』


そう書くと、舌打ちの音が聞こえた。


『そうかい、なら勝手にしろ。本当にバカだわお前』


そう板書した後、消えたまま板を持って去ろうとするエリト。

エリトの気配がスッと遠ざかっていくのを感じる。

交渉は決裂した。








と思ったら、また板が近づいてきた。

そして板書が始まった。








『同郷人として教えてやる。ザーレは約束を守るが、約束していない事に関しては全部裏切ると思って良いぜ』


「(なぜなら俺様がそのタイプだからな……わかるんだわ)」


心の中で呟くエリト。そして続きを書く。


『あとお前は真っ直ぐすぎるのと頭に血が上りすぎだ。ここがチャンス!と思った場面は案外危険と隣り合わせだったりするぜ。周りをよく見ろ。じゃあな』


そう板書して、また消し、今度こそエリトは去って行った。

そして何故か、思った。


「(気のせいだろうか、最後のメッセージには悪意を感じなかった気が……いや、エリトに限ってそんな事はないか)」


軽くかぶりを振るイチ。そして気付いた。少し明るくなっている。

空を見ると二つの月が雲の晴れ間から覗いていた。


「(やってみるか……)」


イチは心の中でそう呟くと、館の中に戻って行った。









魔女カルラの館からだいぶ離れた小屋の影。エリトはここで透明化を解き、何食わぬ顔で赤竜亭に戻ろうとする。するとエリトの右手が地面に落ち、人間体の黒百合になった。


「さっきのは何の真似でありんすか⁈」


「さっきの?ああ、イチへの提案の事か。案ずるな、ああ言えばイチは動くさ。何せバカだからな!」


「最後の忠告もでありんすか⁈」


攻めるような口調の黒百合。


「なんだ……気になるのか⁈」


「……そうでありんす」


黒百合の攻めを聞いて笑うエリト。


「ははは、ただの最後の一押しだ。大丈夫、気にするな」


「なら、良いのでありんすが……」


「明日になればわかるさ、さっさと帰って寝るぞ」


「はい……お前様」


鼻歌交じりに歩くエリトの後ろ姿をじっと見つめる黒百合。

その目は冷たい光を放っていた。

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