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龍のせぼね  作者: 飯田橋ネコ
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第二十九話

<京都府警本部3F取調室>


 氏名、大和香住。年齢23。宮城県多賀城市出身。仙台市立仙台工業高等学校土木科より京都大学文学部へ進学。歴史文化学系日本考古学専修を修めたのち、京都大学防災研究所地震予知研究センターに非常勤研究員として入職、現在に至る。前科なし。東日本大震災で母親を亡くし、父親は重度のアルコール依存症の治療のため施設で入院加療中。土木・地質関連の計測機器の研究・製造を主力事業とする実家の町工場の経営は危機的状況なるも、徐々に持ち直しつつある模様……、


「まずこれなんだけど、あなたのもので間違いないのよね」

「……はい」


 生駒山のがけ崩れの現場から回収された衣服、ザック、財布、だったと思われる品々。奈良県警から移送されてきたそれらを鑑定に回したところ、土砂に巻き込まれただけにしては劣化や腐敗が酷く、少なくとも廃棄後数十年は経過しているとのこと。なのになぜかユニクロのタグがついていた。ザックの中にはバッテリーが溶解した型落ちのスマートフォン。財布からはICタグ付きのキャッシュカードにクレジットカード、府内スーパーのポイントカードなどが見つかり、京大の身分証と保険証の元号は令和になっている。これでは全く辻褄が合わない。


 京都府警地域部地域課第一係の巡査は困惑していた。今朝未明、国道308号沿いで重機による「尋常ならざる振動」を発生させ、近隣の住戸数件の壁面にヒビ割れなどの損傷を与えた器物損壊の容疑がかかるこの被疑者には、さら奈良県警・地検による登美建設への家宅捜査に紛れ込み、無許可で資料を運び出した窃盗の疑いや、京都府ならびに奈良県のさまざまな寺社仏閣への建造物侵入の疑いもかけられていた。


「それと、あなたが中京区に賃借している書庫。捜索させてもらったけれど、盗難届の出されている巻物が見つかったわ」


 もっとも、その重要文化財指定の巻物の盗難届も、被疑者が生まれるずっと以前に出された事案なわけだけれど……。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 朝、所長室のソファで寝てたら急に起こされてパトカー乗せられてこのざま。入れ違いに来た東大のヒトたちなんか、血相変えて所長に掴みかかってたけど、まぁ知ったこっちゃないわよね。


 目の前の婦警さん、いろいろと困っちゃってるみたいだけど、実際のところ私自身説明できない部分も多かったりする。昭和の20年代くらいまでならわりと余裕で「落ちれる」し、もっと昔のヒトたちのお話を伺うことだってできるけれど、それが「普通じゃない」ってこともよく分かってる、最近はね。


「……まず、どのお話からすればいいですか?」


 一陣の風が吹き抜ける。え? おかしくない?? ココお社とかじゃないのよ?? って思う間もなく真っ暗。

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