No.23 二人の心配
今回は、ある人物二人の視点です。
七海が、私の前からいなくなって一ヶ月も経った。
最初は、LiNEの返事がこなくて不思議に思ったけれどきっとそのまま自宅に帰ったか寝てしまったのかのどちらかと思い気にしなかった。
ー…だけど、七海と共通の知り合いから、一週間も会社に無断欠勤をしているのを聞いて、私は違和感を感じた。そして、私のLiNEには七海に送ったままの既読がついた日付をみて、一週間はあの事があって、あの子のことだから多分返信にどう返したらいいのか迷っていると思い込んでいた。私は、七海のスマートフォンに電話をすると……
ー…おかけになった電話は、現在使われておりません…ー
頭が、真っ白になった……。
私は、直ぐに知り合いに七海の電話の事を聞くと知り合いも会社も七海のこの様子に私と同じ事を思ったようだった。
七海は、行方不明になってしまった。もしくは最悪の事態を考えていた……。
会社から七海は今まで無断欠勤をしたことはなく、有給や病欠の時は必ず連絡を入れているため今回のことはとても驚いていた。そして、大家さんからは七海の事を聞いて鍵を開けて貰ったけれど、七海はいなく書き置きもなかった。
知り合いは、私に連絡しようにも会社や七海の事でいっぱいになり、なかなか出来なかった事を謝罪した。私は、その謝罪に何とか返して、知り合いにお礼を言った……。知り合いは、一応七海の実家に連絡したらしい。だけど、
ー…あの人が、七海を気にするはずないのよね…寧ろ…ー
そこまで思って思いっきり顔を歪めた。七海の義母は七海の事を疎ましく思っていたのは知っていたし、私はそんな事情を抱えた七海を連れて、よく家に泊めたり、出掛けたりした。七海は私の家族に遠慮していた。だけど、私の家族は父だけで父は当時私の生活のために夜の仕事をしていたから、七海がいても気にしなかった。私は、いろんな理由をつけて彼女をあの家から私なりにできるだけ離そうとしていた。
私は、スマートフォンから一つの電話が着たことを告げる音を聞いて通話ボタンを押すと、
『美月、久しぶり』
私の恋人からの電話だった。
「うん、久しぶり光太…」
『今度、空いてる?日曜日なんだけどさ…』
「…大丈夫、空いてる…」
高校からの付き合っている光太からの電話に私はなるべく心配を掛けさせないように話した。そして、他愛のない話をした後……
『……美月、七海ちゃんの事だけど…』
「…大丈夫…光太…ありがとう」
…光太も、七海を心配していたことは知っていた。光太にとっても七海は大切な友人だからだ。
『…そっか…俺の方でも、七海ちゃん捜してるから…あんま、気を負いすぎるなよ?そりゃ、美月にとは短いかもしれないけど俺にとっては大切な美月の親友で、大事な友人だからさ…だから、あんまり抱え込まないで、話して欲しいな…』
…光太の言葉に涙が出そうになる。私は、
「…ごめんね…ありがとう…」
そう言うのが精一杯だった。そして、私は彼にお休みと言ってそのまま電話を切った。
私は、何となく空を見上げていた。空は、すっかり黒くなり、小さな星々が散らされていてその中でも小さいはずの、月が淡くて柔らかい光を照らしていた。私は座っていたベッドから降りるとスマートフォンを充電して立ち上がった…
その時、 一件の、私がよく知る、だけど今は会いたくもない奴からの電話に顔をしかめた。そして、その電話を赤いボタンで拒否して、今度はワザとマナーモードにして、その場から立ち去った……
ー…私、あの連絡先に拒否するのを忘れていたみたい…後でやろうかな……私に連絡するなんて、何考えてんだが……ー
私は、ある人物を思い浮かべ苦々しい気持ちのまま、寝室のドアを閉めた。
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自分の最愛の恋人に電話を終えて、俺は歩き出して缶コーヒーを一口飲んだ。あの様子だと、相当参っているようだなと思い、日曜日には美月の話を聞いてあげようと決心する。
ー…だけど、七海ちゃんがいなくなって一ヶ月も経つんだから、心配するのは当たり前だよな……ー
川崎七海ちゃんは、俺の恋人の美月に高校の頃に紹介して貰った子だった。見かけはとても大人しそうな子で実際大人しかったけれど、話してみるととてもいい子で美月が仲良くなるのも納得した。七海ちゃんの事は最初は川崎さんと呼んでいたけれど自然と七海ちゃんと言うようになった。
そして、缶コーヒーを飲んでいると、目の前には俺のよく知る男が歩いていた。そして、そいつも俺に気付いたのか、俺を見ると何とも言えない顔をしていた。俺は、目の前の人物に軽く挨拶をした。
「久しぶりだな……湊…」
「…そうだな…光太……」
湊は、そう言って俺を、見て話し掛けた。その後は近くのファミレスで食事をした。そして、お互い話をせずに出された食事を食べ、コーヒーを飲んだ。その間、何も話し掛けたりはしてこなかった。だけど、暫くして俺はお節介を承知で話し掛けた。
「……なぁ、湊…お前何で七海ちゃんと別れたんだ?」
湊はその言葉に反応をした。それに気が付かないふりをしてさらに続けた。
「…美月から聞いたんだよ…知ってるか?七海ちゃん、今一ヶ月行方不明だってさ……」
「………」
「…七海ちゃんが、今何処にいるのか何をしているのかは分からない…だけど、電話が繋がらなかった……」
「………俺が知っていると思うのか?」
「…いや、知らないと思っている…」
湊が、話に食いついてきた。俺は、それに更に話をした。
「…七海ちゃん、最初は無断欠勤したと思われていたけど直ぐにおかしいと思われたらしい。それで家に入ったらいなかった…最後に見かけたのはコンビニの店員で、その時はどこか浮かない顔をしていたんだとさ……」
湊はコーヒーを飲み干すと、俺に向かって言った。
「…七海には、俺が他に好きな人ができたと言って別れた…それっきりだ…」
その言葉に、俺は呆然とした…湊はそのまま話し続けた…。
「…言った通り、俺には今、そいつと付き合っている…もう、七海とは何にも関係ないし、第一、いなくなったとして俺には何も出来ない…」
そして、湊はそのまま歩こうとした。だけど、俺は、最後に一つ、問い掛けた。
「…なぁ、湊…お前、今付き合っている子と一緒で幸せか?」
俺の言葉に、そのまま後ろを向いた状態の湊は、
「……そうだな…幸せになる、努力はしている…」
そして、自分の分を払ってファミレスを出て行った…。俺も店から出て、すっかり夜になった空を見て、思った。
今の湊の様子は、少なくとも幸せそうではないのは明らかに分かった。そして、これは多分……湊自身の問題だ。
俺は、そう思って家に帰るために、歩き出した……。
ー…七海ちゃん、君がどうか無事であることを…願うよ…ー
そして、俺は暗い道を月に照らされながらその場を後にした……。
お久しぶりです!
と言うわけで、今回は美月視点と光太視点でした。光太視点は難しかったです…(;´Д`)しかし、光太視点では七海の元恋人、湊が出てきましたが…はてさて……
しかし、美月視点は書きやすかった。
それでは!




