76話 光の記憶4
人の感情が、もし脳の作用で働いているとしたら、それはとても悲しい。
脳は機械のような物だろうか?
脳が感情を作り出しているとしたら、感情は価値のない物?
人の心は機械が作り出す現象でしかない?
・・・それは悲しくて・・・さびしい。
酷く冷たいことだ。
寒くて寒くて死んでしまいそうな真実。
宇宙の寒さはそれを凌駕する。
想像も出来ない。
光はそんな空間すら自由に旅をするのだ。
きっと、光は神様に違いない。
そう人間達が思っても仕方のないことだった。
感情が脳による作用だと思い始めた頃の人類。
その時代を境に、人間は躍進する。
人間は地球を壊していく。
それは何も環境破壊に限ったことではない。
人間は人間の心を持って、地球の心を破壊していった。
自分で自分の首を絞めていることを自覚しないまま、長い時が過ぎる。
地球と言う世界が望んだように、知恵を増やし生は栄えていく。
それは地球にとって、望みどおりの歴史だった。
だが、地球は傷ついていく。
生が謳歌する度に大地が穢れていく。
木が伐採され、畑が広がり、火が燃える。
命を全うするために、命を刈り取っている。
知恵。
生き残ることを模索し続けることによって得られる、探求の源。
人間が未踏の地を踏むことにより、それは急激に発達して高度に成長した。
成長する度に母たる地球は疲弊する。
慈悲はない。
栄えて満ちる。
それが行われる度に何か1つを失っていく。
等価交換。
それも地球が見つけて欲しいことの1つだった。
人間の意識がやがて知恵の結晶たる科学へ定着し、光を神としてあがめた記憶が、1部の人間達にかぎられてきた時代。
人間達が行ってきたそれらの行為は、地球から光に乗って別の世界へと伝わっていく。
暗く冷たい世界を旅しながら。
遠く遠くの別の世界。
生態系も、法則もまるで違う別世界。
故郷に帰るが如く辿り着いた光は、唯一その意思を伝えられるその世界の住人に情報を共有する。
家族のような関係だからだ。
親が子に話すように、それは伝わっていく。
その世界の象徴は魔法だ。
魔法は世界を行き来する方法をすでに確立していた。
世界との関わりが強い種族が行き着く先は、つながりを求める真似事を始める。
だから魔法は世界に繋がったり、変容させる内容が多かった。
光は冷たい宇宙を旅している。
その冷え切った実体のない体は、世界の住人達にも影響を及ぼす。
きっと、その種族は暖かさが欲しかった。
繋がることで暖かさを欲した。
地球が助けを求めていないにも関わらず、その種族が地球を救おうと考えたのは必然だったのだ。
体に入ってきたその情報は、光のものだ。
魔剣から意思が入り込んでくる感覚によく似ている。
でもきっと、すぐに忘れてしまうだろう。
だって、もう出口だ。
俺はここにはいれない。
・・・いてはいけない。
優しさは厳しさがあって初めて存在する。
俺が光の優しさを感じることが出来るのは、今まで厳しさを感じていたからだ。
それが例え、脳の作用による物だとしても、俺はそれを大切にしたいと思った。




