32話 光の記憶2
光となった俺の体を、光の記憶が繋ぎ止めている。
単一の意思の癖に単一の意思では無いその光は、俺に伝えたいことがあるようだった。
1つなのか複数なのか分からない存在から、記憶の断片が見えてくる。
俺はその働きから逃れることは出来ない。
とても強い力が、逃れるという行為を阻害している。
だが、俺はそれを拒んだりはしなかった。
光の意思が温かいように思えたからだ。
尊いものだと思えたからだ。
だから俺は、その光の記憶に絡み取られるように意識を引き寄せられていった。
そうして見たものは、最初の時代だ。
世界が誕生した時代。
今は光と闇と無だけが知っている、秘密の時代。
光は全てを照らし、空間に存在を与えた。
それは生き物から尊ばれる行為だった。
闇は全てを満たし、空間に意味を与えた。
それは光が人から尊ばれる要因を作った行為だったが、生き物からは尊ばれなかった。
無は全てを肯定し、空間を作り出した。
それは光と闇が存在する意味を与える行為だったが、生き物からは尊ばれるどころか認知すらされなかった。
世界で生き物達に肯定された者、否定された者、認知されなかった者。
3つの意思は、かつて世界のルールだったが、今では生き物達の認識する1つの概念に成り下がっている。
世界のルールが3つの意思だけだったのなら、1つの世界は壊れることはなかった。
1つの世界が壊れることが無ければ、3つの意思は堕ちることは無かった。
だが堕ちてしまった。
壊れてしまった。
4つ目の意思が誕生してしまったからだ。
だから3つの意思は、4つ目の意思を今も恨んでいる。
・・・
光の憎しみが、優しい感触から伝わってくる。
光は色々な意味で多面的だ。
相反した意思を矛盾すること無く俺に伝えてくる。
優しい感触を俺に残してくれる光が、ここまで恨んでいる存在。
4つ目の意思。
もっと見たい。
そこから先を見ようとしたその瞬間。
俺は漂う光から何かに吸い込まれるような流れを感じた。
光から引き離されていくのがよく分かる。
だが、それにも俺は抵抗出来そうに無い。
光となった俺の体が世界のルールに従って形を取り戻していく。
優しい感触は、俺の傍には既に無い。
吸い込む力が働く方向を意識して感じる。
出口だ。
俺は入り口から入ってきた。
だから出口があるのも当然だろう。
俺は光から引き離されることを若干悔やみながらも、出口に吸い寄せられていくのだった。




