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謎のふたり。

怪しいふたり組は、ある程度接近し、足を止めた。

どんな奴らが、わざわざ人が野宿してる寝込みを

抑えにきたのかと憤懣やるせなく思いきや、

フルアーマーだった。

全身鎧である。

したがって、どんな顔をして、どんな髪型をしているのかさえも

さっぱり皆目見当もつかないし、

カインからしてみれば、どうすればいいのやら。

生暖かな毛布の中で、戸惑っていると、


「誰だ、貴様」


相手の方から、くぐもった野太い声をかけられる。

(そっちこそ誰だよ……)

カインは、心の中でのみ、返答する。

なんせ、相手は大の大人がふたり組。

こっちは、悪魔とはいえ、チビひとり。

ビビリではあるが、それなりに生き延びてきたカインにとって、

このどうすればいいのか感がたっぷり余韻残る空気、

マゴマゴと、マゴついてしまうのも無理はない。

だが、ピンクの悪魔は違った。


「あんたこそ誰だよー、もう!」

「んなっ」

「リリの眠りを邪魔するなんて!

 ひどーい! 足の小指をタンスにぶつけちゃえ!」


などと、盛大に胸を張って地味に嫌なことを言う。

そういえば、とカインは考える。

この悪魔、悪魔だったのである。

なんせ、あのやたらと威圧感たっぷりの自称王様に啖呵切ったチビである、

子供とはいえ、悪魔の才能、能力とやらで、現状の

打開策を、その素晴らしき能力によって、どうにかこうにか、

してくれるのかもしれない。じゃないと、ここまで正々堂々とできまい。

カイン、そのピンクの頭髪を、しばし、羨む。

そうして、期待たっぷりの目で、悪魔っ娘の後ろ姿を見守る。

えっへん、と彼女はふんぞり返っていた。秘技でもあるのだろう。




などとは、

……簡単にいかぬが世の習い、である。

ピンクの悪魔は、盛大に文句を垂れながら、現在、輸送中である。

といっても、ズタ袋に入れられている。

まるでこれでは人さらい、いや、悪魔さらいにしか見えぬが、

しかし、このリリ、絶対に惹かぬ媚びぬな頑固っぷりな性格を

しているので、啖呵切った状態のまま、こうなってしまった。前方で、バタバタとうるさい。


「なんでこの娘、

 こんなにボロな布を持ってたのか……」

「あ、すみません。

 どうもどうも、この娘の趣味がパッチワークなもので」

「にしては、少々生臭い……」

「生臭いのが好きらしい、フェチだそうで」

「なるほど」


カインは、魔族であるとバレていないのを逆手にとり、

彼らに追従した。

なんでも駐屯地やらに連れて行かれてる最中である。

リリは、先ほどから、袋の中でさえも、

盛大に大暴れしていたが、次第に動きが小幅になっていく。

さすがに、疲れてきたのであろう。

もう喋ることも、動くこともなかった。

静寂そのままである。念のためつついてみたが、生きていたし。


「カイン、何すんのー!」


などと、プリプリ威勢良く怒っていたが、その勢いもすぐにしぼみ、

ついにはイビキをかいて、フルアーマーの肩で揺れている。

リリ袋は野太い声の男によって、面倒くさそうに担がれていた。


「ふふ、ずいぶんと眠っていますね」


ふたり組のもう片方は、丁寧な口調の男だ。

ずっと、カインの話し相手になっている。

もう片方の野太い声が特徴の、おっさん臭い感じがする方が担ぎ手。

真っ直ぐ前しか見ず、カインらは、おっさんから数歩、

離れて後方を歩いている。

一応お知らせすると、二人共野郎である。年齢は、不明。

そもそも、こんな真夜中を歩かされているので、

あんまり口答えをする気力もわかぬカインであったが、

人間らしき彼らとは、敵対している魔族であるのだから、

このまましらばっくれることにした。


「では、カインさんは、

 この地に間違って飛ばされた、と」

「ええ。そうです」

「ここに魔力の気配があった、という報告を受け、

 念のため調べて正解でしたね」


彼らは、この辺りを警ら活動をしていただけだったが、

もう少しいつもより念入りに調べようと、

範囲を広げてみたらしい。余計なことを、と思わぬでもなかったが、

まあ、結果的に人間の住まう街に連行されているけれども、

いずれにせよ、食べ物は欲しかったので、

これ幸いにいい人ぶってついていくことにした。

第一、彼らは人間であるらしいのだから、

カインには勝算があった。

ひとつ、彼らが人間であることだ。

…………それしか、今のところ理由らしいものはないが、

魔族と人間では体の作りが異なる。

したがって、フルアーマーに備え付けの祝福されてるっぽい武器さえ気をつけてさえいれば、

街の中を逃げ回り、食べ物を強奪し、人間界のどこかに潜伏することだって

可能であるのだ。なんせ、彼らはあまりに若い。若すぎる。

祝福、は魔族にとって最悪だが、それを振るう人間そのものさえ気をつければ、

別段恐るる必要もない。当たったら怪我が治らないが。


「カインさん、若いですね」

「いやあ、それほどでも。

 でも、貴方がたのほうが」

「え、まあ、はは。

 新卒の兵ですから」


このことである。

前方では、ピンクの悪魔入りの袋が、

無言のままでのっしのっしと前をゆく兵士の背中で、

右に左に振り子のように揺れていた。

(歴戦の勇者ではない、ただの人間相手ならば)

楽だ。

そう思う、カインであった。

なんせ、今まで出会ってきた化け物みたいなやつらと比べてみれば、

このふたりは明らかに格下である。

どうにかこうにか、生き延びることが、出来そうである。

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