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新たなる光。

「む、アレは……」


じとっ、と見やると、その道は、人が通れるほどの

隙間があった。

対し、頭上は灼熱の地獄の想定をなしている神聖魔法の乱舞。


「行けるかな……」


道筋は、カインたちがいる高台から、

よっこらと降り立つと、岩場があり。

そこの間を通り抜けていけば、穴のようなものがあって。


「カインー、あそこから、

 なんかムカつくチビガキの気配を感じるよー」


などと、不幸な発言が、ピンクの悪魔から取りざたされる。

どうやら、本当にあそこへ進めそうな何かがあるようだ。

とはいえ、頭上は相変わらずの死にそうになるほどの神聖さが

漂っている。魔族の目には毒である。

あまり、直視できるものではなかった。


「さて、どうするか……、

 煮殺されるか、刺殺されるか……」

「ええー、じゃあ、リリは? りりは?」


知らねぇよ、と言いたいところなれど、

このピンクの娘っこ、どうも、自分も何かできるのではないかと

張り切って、その金眼を輝かせているのだから、始末に負えない。


「あのな、俺は殺されたくないの」

「ええー」

「おいおい」


突っ込みも虚しくなるが、しかし、これ以上、ここにいるのは

危険のようだ。なんせ、魔力の気配を、あの穴ぼこから、

カイン、感じ取ったのだ。


「うわ」


強大な魔力であった。

でっかい字が、空中に浮かび上がっている。


「今すぐ来い、でないと、潰す、って……」


ひどい。何もしていないのに。

悪いこと、してない。自分、悪くない。

そんな気持ちで胸いっぱい、腹減ったな下っ端カイン、

渋々自称王様のところに向かうため、その重い腰を上げた。


「ええー、カイン、行くのー?」

「や、だってしゃーないだろ……、

 あのお子様、こっちを認識してるし」


それに、あの人間もどきリーズみたいな運動神経を持つ化け物だ、

高位魔族にとって、自分の言うことを聞かないおもちゃは

捻るに限る。


「さ、いくぞー、

 どっちにしろ、向かう途中で、神聖魔法に当たったら、

 死んじまうし」

「リリは? リリは?」

「お前は顔が半分、飛ぶかもしれない」

「うおー、すげぇー!」


段々と、このチビっ子の扱いに慣れてきたカイン、

悪魔のチビっ子を連れて、いや、連れられて、

さくさくと高台から、あの穴ボコへと歩を進めた。






岩場を過ぎ、穴の回りにたどり着く。

どうやら、ここはトンネルのようだ、

奥から煙のように穴の上辺から糸のように、

カインに向かってくる、一筋の魔力からして、

ずいぶんと深奥にまで、この穴は広がりがあるらしい。


「さあ、行くぞ、悪魔娘」

「おいさー!」


いつものように、リリはカインの上着の端っこを引っ張り、

ずんずん進んでいく。

と、ここで、カイン、悪魔である娘に気遣いをしてみせた。


「おい、娘っこ」

「ん?」

「お前、暗がりは強いのか?」


確か、本によれば、と。

パラパラと、脳内に収められている書物をあさった。


「魔界の住人は、元々暗がりに強いはずだ。

 というか、朝が短いからな……、

 てことはだ。

 確か、そうそう、最初のページに書いてあったな、

 悪魔族の紹介文」


はてなマークを浮かべ、カインのほうをまじまじと

見上げてくるピンクの悪魔。

その瞳孔は、猫のように、縦になって光って見えた。


「そうだ、お前も元は魔界の住人。

 夜に強いはずだ」

「おおー」

「お前のことだが?」


なんだか褒められている気がするが、

馬鹿にされてる気もして、気分を勝手に害したカイン、

そら行くぞ、と言わんばかりに、さくさくと歩き出す。

しばし、そうして、二人の歩む足音だけが、

響く洞穴の中にて、娘が声を上げる。

多分、暇だったから、というのもあるだろう。

カインは、細長いが、しっかりと道案内を勤めている魔力の糸を、

辿るため、頭上を見つめながら、足を動かしている。


「ねぇねぇ、カインってば」

「なんだ」

「リリの名前、聞かないの?」

「……それはギャグで言っているのか?

 リリ、だろ」

「せーいかーい!」

「……」


このピンクの娘、なぜにここまで嬉しげなのか。

よくわからないカインは、何も聞かずにおいた。


「でで、リリって言うから。

 リリって、呼んで」

「……リリ、か」

「おす!」

「……まだ呼んでないが……」


元気いっぱいの悪魔娘。

なぜか、カインの傍らから離れないのだろう。

ふと、飛び出た疑問。

最初からそう聞けばいいのだが、どうしてか、尋ねるのが

億劫だった。それを改めて思い出し、聞くことにした。


「なあ、」

「……」

「おい」

「……」


これは、あれか、

名前を呼んでくれないと、返事をしない、という……、

本ではよく出てくる駆け引きだ。

これが、まさか、現実となると、ここまでイラっとするものだとは、

さしものカインも測りかねたものであった。

この微妙な腹立ち加減。

地味にイラッとするので、聞かずにおいた。

どうせ、ヒヨコだ。

元、ヒヨコ、というべきか。だからか。

ずっと傍にいた小鳥であったから、

別に気にもしなかったのだ。傍にいるということに。

まあ、どうせヒヨコだしな。

そうそう、ヒヨコ。

などと、なぜか勝負をしているでもないのに、

謎の我慢大会を互いにしている合間、

深層へとたどり着いたらしい。

細い糸の先には、明るい光あふれる、穴があった。


「眩しいな……」


カインは、至極当たり前のことを告げたが、

リリは、別のことを思ったらしい。


「懐かしい……」

「は?」


途端、


「お、おい、また、服が、ちょ、」

「行くよー!」

「待て、こら」

「うほーほー」

「おいいい」


服が!

また、びりっ、と破れたカインの上着の裾を、

ピンクの娘は器用に持ち直し、さらに引っ張り倒した。

自然、カインは薄着をさらに薄着にしたくないので、

もつれ足になりつつも、前へ、前へと、

つられて駆け足になり、次第に本気で走リ込む羽目に陥った。

ちなみに、涙目である。

なんで、こんな目に。

言うことを聞かない、ピンクの悪魔に連れられて、三千里。

とまではいかないが、

進む先には、ぱあっ、と輝かんばかりの、魔界ではない世界が、

広がっていた。

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