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続く、異変。変異。

牛ごっこなのか、それとも、

お馬さんごっこなつもりなのか。

よくわからないピンクの悪魔の掛け声とともに、

カインは、薄暗い冥土の森を彷徨う。

……といっても、本人に悪気はなく、

単に方向感覚がわからんだけで、

多分、こっちだろう、多分。

などという、いい加減な直感にて、

彼らは歩みを進めていた。


「ねぇーねぇー」

「なんだ」

「あのチビっ子、あっちの方向だよー」

「そうか」


などと、たまぁに、ピンク娘に指摘されて、

渋々といった風に、方向転換するぐらいで、

今のところ、正しい道を進んでいるのか分からぬが、

とりあえず、カインの胸の内側にあるところによると、

(死にたくない)

ので、

もし間違った道に進んで、わざわざ殺しにやってきた高位魔族が

いたら、後ろで執拗にカインの上着を伸ばしきっているピンクの悪魔を

差し出してやろうと理由を貫き倒すことを考えていた矢先、

それは、居た。


「あ」

「お」


ピンクの頭頂部が、カインの前に飛び出す。

そこには、


「うおー」

「うわあ」


世紀末が、広がっていた。





まず、天と地が、割れていた。

いや、元々、空と大地があるのは間違いなかったし、

魔界でもそうなので、いつもの風景があるはずなのだが、

崖下に広がっているそれは、焼畑農法か、といわんばかりに、

冥土の森がチリチリと燃え上がって真っ黒な黒ずみになっており、

到底、目も当てられない状況であり、無残としかいいようがないし、

天空は、いつもであれば、紫の薄気味悪い霧が覆いかぶさっていたはず

なのに、今や、どこからともなく複数あらゆる方角から差し込んでくる、

槍のごとき垂直な線が、あるいは斜めに、

聖なる力を発揮して、霧をどっと払い、大地に強烈な光線を差し込んでいた。

そのため、

じゅわじゅわと、嫌な臭いがそこかしこからしてくるし、

独特しい色の紫の沼のごときヘドロが、そこかしこにも露呈しているのを

見るやいなや、ピンクの娘、悪魔が、


「ねぇねぇ、アレってなあに?」


などと尋ねてくるので、


「アレは元はスライムだ」


などと、答えてやる。


「え? スライム?」

「そうだ、形状がいつもより少ないから、

 多分蒸発してるんだろう」


そう、聖なる気配を空から、あの差し込む光から感じるので、

恐らくだが、浴びてしまったのだろう。沼地の端っこあたりが、

にわかに嫌な煙を放っている。

神聖魔法。

とも言うが、

ごくり、と生唾を飲み込む気配を、下方で佇む悪魔から感じるに、

やはり、気づいたか、と幼い外見ながらも、本能でわかるのだろうと、

カインは納得の顔を浮かべた。


「リリ、食べられるかな!」

「腹を下したいなら、食べておけ」





いつまでも崖の上だと、周囲の状況を見渡すだけに留まる。

が、下に降りたところで、どうとでもなるものでもない。

そうして、しばし、二人の魔族と悪魔は、ぼんやりとその場で

待機していた。


「カインー」

「なんだ」

「お腹すいたー」

「そこのスライム食べればいいだろう」

「やだー、美味しくないもん」


そこには、頭のさきっちょをかじられた、

半透明のスライムが、桃色に頬を染めて、ジュルジュルと動いている。


「美味しくない、か……、

 で、どんな味だ」

「味はねー、

 なんというかねー、

 しゅぎょばきゅばきゅーん、って味!」

「ほう……、」


さっぱりわからん。

とりあえず、カイン自身も、腹が減りすぎて、

胃が痛み始めたことを自覚している。

もう少しこの場にいて、何も代わり映えがしないのならば、

別の方向へ進むか。

そう決めた。


カインと悪魔が体育座りをする、その全面の景色は、

地獄のような、灼熱に焼け爛れて真っ黒な大地と、

ところどころエキサイトして燃え尽きてしまったらしい、

スライムの残りカスのヘドロ、

それと、未だに空から差し込み続けて動かぬ、

神聖魔法の三本セットが、ゴゴゴゴ、と大気を揺らし、

焦げ臭いにおいを発しつつ、蠢いていた。


そこでようやく、カインは気づくのだ。

あの、一本の道を。

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