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生き残るためのセプテット。

体調は万全、とはいいがたいが、一矢報いるぐらいは、

可能かもしれない、と考える魔族。

普段の能天気っぷりはどこへやら、武器も何も持たぬ

カラ手だが、心は錦、自由気ままに、上の存在へ反撃意識を持つ。

そう、反撃である。攻撃ではなく。

腐りかけの匂いは、キルベアとの遭遇を昨日のことのように

思い出すが、突込みを入れてくれるはずの人間が浸食され放題なので、

弱腰魔族の独壇場であった。

いや、今は強腰か。女魔族が微動だにしないのを、いいことに、

調子に乗り放題である。ビビりながら。

――――さて……、

 どう、ヤルか、ってことだが……。

魔族、今までの人生を考えた。

再三述べたとおりだが、魔族という種は、基本的に丈夫である。

しかし、そこからが大変である。なんせ、丈夫が取り柄なものだから、

なかなか、自己鍛錬に目が向かない。強くなろう、という向上心が

皆無な奴らばかりであった。生まれながらにしての強さが、かえって

魔族全体の不利益につながっていた。また、そのことに頭を抱える

為政者がいないから、余計にそのままに推移。今日まで至る。

魔族らの性格も、奔放であることが冗長しただろう。

注意もしない。されない。いや、人間界にとって、それは、歓迎すべきことであろうか。

したがって……、

主人公である魔族も例にもれず、

そう、強くはなかった……。

わざわざ書かなくても、と思われるほどに。

魔族、頭を傾ける。

すると、


「ひっ」


女魔族も傾けた。

そのことに心臓がびくりとするが、彼女の、その豊かな金髪からは、

相も変わらず魔力がわずかに、主人公をへこませるほどには

放出されてはいないが、ボンキュッボンと、出るものは出てるし、

下っ端魔族を直接手を出さぬとも、殺せる手段を持つ上位の存在って、

想像以上に厄介であることを、やっぱりヘタレな魔族、

思い知らされる。たらりとコメカミに、一粒の汗が光る。

――――いやあ、無理だなあ。

これ、この状況!

どう倒せばいいんだよ、いや、無理無理だな、

どう繕ったって、私は殺される、それは間違いない。

そもそも、こいつを倒すには、人間の力が必要だろうな。

……倒せるかどうか、に関しては、目を瞑るが。

ぐるぐると、混乱しながらも、冷静になれとひとしきり頭の片隅で

囁きまくり、どうにか、現状、冥土の森に立っていられる魔族。

ほぼストリップ状態の美女の景色に、ちっとも嬉しくない

感情を持て余しながら、できることを、羅列していく。

そう、ひっひっふー、は、今のところ不要だ。

必要なのは、手段である。

魔力をぶつけるというハチャメチャな奴相手に、どう対処すべきか。

手段としては、いくつかあげられるが、まず、

物理的な攻撃が有効ではないかという推測をたてる。

なんせ、相手は魔族の上位、おそらくだが、魔力の使い勝手を

多様して今日まで生き残ってきたはずだ。

地に足をつける生活は、まあ、さっき歩いてたけども、あんまり

してこなかったろう。上位魔族は、虫けらのように思っているはずの

メイドや執事に傅かれて生きてきたはずである。

それも、生まれながらにして。

……でないと、上位魔族が魔界の首都で大暴れされてしまう。

ある意味、それは、下っ端魔族たちの処世術でもあるが、しかし、

気に入られると魔力を与えられたり、配偶者になっていたりで、

何も悪いことばかりではない。魔力の多すぎる上位たちは、

皆、類稀な美貌の持ち主ばかりであるから、拒絶する魔族は

存在しないといっていい。それ以外のは、まあ、大半は……うん。

真面目に奉公してる以外の奴らは、どうでもいいとして……、

とにかく、物理攻撃が必要であることを認識する。

……物理、か。

このしょぼしょぼ魔族、そういえば軍属であったが、

――――練習なんて、してなかったしなあ。

第一、魔王軍って、ただの集まりであるので……、

給料安いのも、そのためであるが……、

下手すりゃ、剣だって持たないペーペーもいた。

無論、それは、我らが主人公でも同じ。

……本当に主人公なのか、と疑うレベルである。

とはいえ、ほかに手段は持たない。

リーズを抱えるにしても、こんなデカい奴、意識乗っ取られ気味を支えるには、

主人公の腕力では無謀だし、女が近寄ってくる速度から逃れることは

手厳しい。ならばと、その、リーズの足元でぶっきらぼうに

横倒しになっている人間の剣を持って立ち向かう、にしては、

その剣、妙に、魔族を拒絶する聖気を放っていた。

これ、聖剣やん。最悪やん。

などと、主人公、今更ながら己が魔族であることを、ここまで卑下すること、

山のごとしで無かったが、魔族が聖剣を装備できるはずもなく……、

ひのきの棒だって都合良く落下してるはずもなし、

あるのは、どっかの誰かがびっくりして落としていった、袋、

ズタ袋が目に入った。


「あっ」


そう、あれは、同僚Aがおいてったものだ。

そうして、私の腰には、実家から押し付けられたゴミ袋がある。

いや、道具袋か。食べ物の干し肉があと2枚しかないので、

どちらにせよ、この実家からの手土産の道具袋が、

あと少しで自分の棺桶になるのは間違いなかった。

誰が入れてくれる? 自分でか。空しい。

見渡す限りの冥土の森は、キルベアやら、凶悪な魔物ばかり。

ヤラれるのは、時間の問題である。

そのことに、鬱屈とした気持ちでいたはずの魔族、

あのズタ袋に期待を持つことになった。神々しくも思えてきた。

同僚Aの忘れ形見……、いや、死んでないが。

あれを、使う以外、方法はなかった。

――――問題は、そう、

どうやって、アレを取得するか、だ。

己の道具袋を片手に持ち直した魔族、

上位の存在である女魔族とのこう着状態が、いまだに続いている。

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