第一章_7話
ーー侵入者と共に森の鳥たちがざわめき、飛び立つ。
馬に乗ったまま、白い甲冑を着た兵士たちが
頭のヘルムについた白い羽根を揺らしながら
ゆっくりとクレナイ達へ近づいてきた。
すぐに人数と獲物を確認する。
戦闘に立つ者は細長い剣のみを持ち、
両サイドには盾を背負った者が2人。
背後には大剣…槍…
ーーこれは攻撃隊だ。
後ろにいるノアを守るため左手でかばい、
右手には訓練用の木刀がひとつ。
心許ないが、後ろの震えるノアを守るには
今この1本しかない。
戦闘の隊長らしき男が話す。
「急に物騒な集団で驚かせてすまない。
我々は「白銀の団」の一員だ。
ーーこの辺りで大きな魔術派を感じたと
我々に使える魔術師から
報告があって偵察にきたのだが…
君たち何か知らないか?」
「ーー知らない。」
白銀の団、聞いたことがある。
王都に使える武装集団だ。
王都はかなり遠いはずだ、なぜここに?
こないだのノアの魔術の力が漏れていたのか?
あれによって結界が破れた??
思考がぐるぐる巡る。
「そうか。
それとーーしばらく前だがー
近況の村より王都へ噂が届いてな。
ある村人たちが
ノワール族を見つけて私処刑したと。
そしてあるはずの死体の痕跡も消えたらしい。
……その漆黒の髪、紅い目、貴殿のことだな。」
ゾワッと血がざわめく。
俺だ。ノアじゃない。それはいい、
だが俺を目的に来たのか。
なぜ、なぜそこまでして白銀の団が
ノワール族を…
額を汗がつたう。木刀を持つ手に力がこもる。
ーーー大丈夫だ、体力も回復している。
黒魔も呼ぶ力は充分戻っている。
ノアを巻き込まないためにも、
逃がしてから黒魔の力をーーー
「あぁ、いや勘違いしないでくれ、
様子を見に来ただけだ。
以前も来た時はなぜか森を迷い続けてしまって
何も見つからなかったのだがー
なぜか、今日はここへ辿り着いたのだ。
私の名は白銀の団のギルギアと言う。
申し訳ないが、兵士達を少し休ませがてら
話を聞かせてもらえないだろうか。」
「ここには大したものはない。
家の中にはいれられない。
俺は言う通りノワール族の生き残りだ。
残党狩りしにきたのか?」
「ーいや、そのような命は受けていない。
君たちノワール族には、過去王都も
世話になったと聞いている。
まぁ、裏の仕事とというやつだ。」
「俺じゃない。違うノワール族のやつだろう。
俺目的ではないなら早く立ち去ってくれ。」
「ふむ、わかっているさ。
暗殺稼業で名高い者だったら、
そうやすやすと私刑はされないだろうしー」
なんだ?本当にただの偵察か?
偵察にこんな人数でくるものなのか。
口調に攻撃性が弱く感じ困惑する。
後ろのノアに小声で囁く。
(ノア、早く家に入れ)
コクンとうなずき、心配そうな顔をしながら
後退りしながら家に向かっていく。
「ーあの子は?」
「お前らには関係ない」
「ーーふぅ。かなり警戒されるのも
仕方ないか。我々も少々物騒な姿だしな。
確かに我々は"ノワール族"を
とらえに来たわけではない。
先程我々の魔術師から波動の報告を
受けたと言ったがーー」
急に声色が変わる。
冷たく、低く、鋭い低い声で男は言った。
「ーーー銀髪、青い目。
どうやら我々が探していた相手は
……あの少女のようだな。」
「ーーーーっ!!!!」
ゾワッっと全身が総毛立つ。
その言葉が放たれた瞬間、
団長らしき男の後ろにいた騎乗兵が数人一斉に
ノアのいる小屋へ駆け出した。
「ーーーノア!!!!!!
逃げろ!!!!!!!!」
しまった、しまった!
離れるべきではなかった!!!
その瞬間鋭いレイピアが
クレナイの顔面に向けられた。
少しでも動けば貫かれる距離だ。
団長の背後には援護用の騎乗兵も残り
こちらに獲物を向けている。
「できれば手荒なマネはしたくない。
…あの子はお前には手に余る存在だ
ー間違いでなければな。
確かめるために話を聞きたかったがー
どうやらその反応を見る限り…
悪いが一度あの子を王都に連れて行く。」
「キャァアァァッ!」
ノアの驚いた悲鳴が小屋の中からあがる。
「ノア!!!!!」
声に気を取られた隙を見逃さず
木刀でレイピアを弾き、
小屋に振り返り駆け出そうとした
その時。
後ろから肩を掴まれ、
後ろに倒され地面叩きつけられた。
「ぐうっ…!!!!
やめろ…あの子に手を出すな…っ…」
「ー邪魔はするな、お前のためにも。」
クレナイを膝で押さえつけたまま
ギルギアは団員に告げた。
「お前らも、あの子に手荒な真似はするな。
捉えるだけで良い。
傷つけるなよ。
ーーーー死ぬぞ」
!!!!
こいつらは知っている。知っている!!
少なからずノアの存在理由を知っていて
探してきていたのだ。
クソ、クソ!!!!
油断した!!俺のせいで!!!!
黒魔の力を呼ぶ意識を集中した。
クレナイの手元に少しずつ黒いオーラが
ゆらめき集まり出す。
幸いまだ気づかれてはいない。
クレナイは黒魔の力を纏いノアを逃すと決心した。
ーー例え俺が死ぬことになっても。




