第一章_7話+ノア
ー師匠のメリアおばあちゃんは、いつも言ってた。
「お前は人とは違う。
でもそれを恨んではいけない。
人と違うものを人は恐れるだけなんだよ。
ーだから、むやみにその力を使ってはいけない。
普通と違うことがわかってしまうからね。
人と関わることは、喜びもあるが苦しみもある。
お前には自由に生きてほしいがーー…
すまないね。アタシの結界の中という
結局牢獄にしてしまっている。
お前に傷ついてほしくないんだ。
可愛い娘の孫だからね。
だがアタシはもう長くないだろう。
どうしても1人で耐えられなく、
関わりたくなったら
自分を隠して、自分を守るんだよ」
その時はよくわからなかった。
ただ、お母さんは私が特殊な産まれだと知って
私が物心つく前に自分を責めて自死したと聞いた。
お父さんはどこにいるかわからない。
きっと私のせいでいなくなったんだと思う。
それは違うとおばあちゃんは言ってくれたけど
私には詳細は教えてくれなかった。
私は産まれた時から「居てはいけない」
存在なんだと知らされてた。
居るだけで、何かがあれば周囲を
「無かったこと」ーーつまり
世界の害とみなし殺して無にするらしいから。
でもおばあちゃんが、一族の中でも
私をすぐに殺したり、隔離することを
大反対して外に連れ出してくれたって聞いてた。
だから、私が覚えているのは
雨の中おばあちゃんが私を抱えて
逃げ出しているどんよりした雨の空。
それしか産まれた土地の記憶はない。
いつだって1人で生きれるように
沢山のことを教えてくれた。
街との交流はおばあちゃんがやってくれてたし
必要なものは自分で作ることも教わった。
ーそれも結界という名の範囲制限があったけれど。
死ぬことも許されない、
ただ穏便に人とかかわらずいる私は
意味がないんだといつからか思っていたけれど
おばあちゃんが居たから大丈夫だった。
黒神ヴェノメール様は、
私の頭にたまに話しかけてくるのよ。
ただくぐもっていてよく聞こえないんだけど。
おばあちゃんにそれをいうと
「それは、恩恵なんだよ。ノア。
人には理解されないだけさ。」
そう言ってくれたから、
そんなに悪いことだとは思ってなかった。
メリアおばあちゃんが居たから。
寂しくなかったんだよ。
ーーでも。おばあちゃんが死ぬ時
「すまないね…お前をひとり
残したくはなかった…」って
ずっと謝ってたけれど、謝らなくて良いのにと
何度も伝えたけれど、
あの悲しそうに、でも慈しむ顔は
私の心にひどく残った。
おばあちゃんは病で死んだ。
もっと街の医者が来れたら、
もっと生きてたかもしれないけど
私のことを考えてたのか、最低限しか
医者にかからなかった。
1人でおばあちゃんに教わった埋葬をした。
燃えるおばあちゃんから離れたくなくて
燃える火をずっと見ていた。
お墓の作り方も知りたくなかったよ。
話す人も誰もいなくなって。
心細くて、悲しくて。
でも、私が居て、もし何かがあれば
接した人たちを無かったことに
されることも耐えられなかったから
我慢してたんだよ。
でも、あの時ーー
ひとり眠っていた夢の中で
ヴェノメール様が現れた。
黒いモヤで姿はよく見えなかったけど
ある方向を指差して。
目が覚めても指さすモヤは
鮮明に覚えていたの。
だから、おばあちゃんには
頼るなと言われていた黒魔の力を借りて
結界を少し抜けた。
内側からなら出られると知っていたから。
少し願って祈ると、黒いオーラと共に
小さな黒魔さん達が私をまとってくれるの。
その方向に向かって歩き続けたら
死にかけてるあなたがいた。
真っ黒な髪に紅い目。
黒神様かと思った。
ヴェノメール様が指差したのは
この人だと思った。
"人と関わるな"と言われ続けていたけれど
目の前のこの人を救わないなんて
できるはずがなかった。
止められなかった。
ー生きて欲しかった。
どんな人かわからないけど、
危ない人かもしれないけど、
でも、もう1人じゃ耐えられなかった。
私は寂しかったの。
磔にされるように生きてはいけない存在なら
私を受け入れてくれるんじゃないかって。
クレナイというその人は、
みるみる回復しても
ぶっきらぼうで無口で、
私にとっては初めての他者だったけどーー
教わっていたノワール族、
黒魔の力でを使う近しい存在だとわかって、
だからヴェノメール様は指差したのかも。
私と近しい存在だからなんて思っていた。
どうなるかわからなかったし、
不安は少なからずあったけれど
時折ふっと笑う顔は優しくて、
男の人はみんなそうなのかな?
大きくて、どんどんがっしりしてって、
頼れる存在だと感じて。
だから私のことを話しても
大丈夫なのかもと思った。
静かに私の話を話を聞いたあと
一緒にいてくれたことにほっとしてたの。
それからも変わらず話してくれることが
楽しかった。
とても、とても。
でも、やっぱりだめだったんだ。
ーー私がそばにいるべきじゃなかった。
小屋の中に入ってきた甲冑姿の
過去に見たことがない
攻撃性を感じる人間たち。
何をされるのかはわからないけれど、
きっと私を殺すのかもしれない。
ーーー私が原因だったんだ。
私を捉えようとしてることに気づいて、
私はクレナイをもっと早く外に
出てもらうべきだったと感じてた。
ごめんね、ごめんね。
ごめんね。ーー寂しかった。
あなたと話すのが楽しくて
どうしても離れたく無かった。




